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うるる 空き家のデータベース化でビジネスチャンス到来か
2016.03.07 12:54
27万人の足で情報を掴む「空き家活用ポータル」
「活用できる空き家は活用していくべきです」とは多くの空き家に係る事業者が言うこと。「空き家問題」がクローズアップされてから1年超、これまで使える空き家を再び市場に戻すことや、様々な形での活用を検討・推進する団体も数多く出てきた。増え続ける空き家をどのようにして有効に活用していくか、これは官民双方が取り組むべき課題といえるが、一方で事業者側の悩みとして「どこが空き家なのかを把握することは足で稼ぐしかなく、包括的に行っていくには非常に難しい」との声も多い。
その中で主婦向けクラウドソーシングサービス「シュフティ」を運営し、全国27万人の登録者を有するうるる(東京都中央区)は空き家情報データベースサイト「空き家活用ポータル」を1月18日にスタートした。空き家物件を活用したい事業者への情報提供はもちろんのこと、所有者に対して空き家の活用方法を提案し、最適な業者とのマッチングをしていくことも今後考えている。
同サイトの提供するサービスは空き家がどこにあるのか、その空き家の状態、おおよその築年数や敷地面積などだ。オプションサービスとして、登記情報などの取得も行っている。
今回のサービスを担当している第1事業本部CGS開発部新規事業プランナー・星野有俊氏は開始の目的について「空き家問題の解決のため」と強調する。その思いを強めたのはリリース前に行ったある調査だった。
「空き家物件を約120件サンプルとして抽出し、そのなかで賃貸物件情報サイトやレインズに掲載されている物件がどれくらいあるのかを調べてみました。その結果は、わずか3件、3%にも至らないのです。全国に800万の空き家等があると言われておりますが、この調査から推測するとほとんどが市場にすら出回っていないと推測されます」(星野氏)
今回のリリースは空き家業界の悩みを解決するものとして、そして空き家所有者が活用方法で悩んだときの最初の入り口として機能していくものとして注目されているが、なぜ他社ではできずに同社ではできたのか。
「『空き家活用ポータル』において提供する情報も基本的には足で稼ぐことに変わりはありません。しかし、当社には『シュフティ』に全国27万人の主婦の方の登録があり、このマンパワーを活用できることが今回のリリースを実現させました。登録されている主婦の方が日常のショッピングやちょっとしたお出かけの際に、当社で用意する専用のアプリを用いて、写真を撮り、物件の情報を打ち込んでいきます。このようにして集められた情報を当社で1件ずつチェックしていきながら、空き家であることを確認した情報を『空き家活用ポータル』に登録、公開しております。現在は東京都内23区を中心に約1500件の登録となっていますが、今後1年で8万件の登録にしていきたいと考えております」
同社は運営を進めていく過程で、大都市圏を中心に範囲を広めていくとともに、所有者側に向けた空き家活用の選択肢も広めていきたいと考えている。現在は事業者としては売買仲介やリノベーション・リフォーム業者、また相続などで空き家を引き継ぐことも多いことから税理士や弁護士などとなっているが、星野氏は「民泊なども今後、活用の選択肢のなかに加わってくるのではないでしょうか」と話す。
同社は空き家が「問題」としてだけではなく、明るみに出すことで「新しいビジネス市場」になりうるものだと訴えている。今回のサービスはそのための情報をデータベース化し、所有者・事業者双方のニーズに応えるものとなっている。