週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

鹿島 ビル内や地下でも自然を感じるウェルネス空間「そと部屋

2019.10.28 13:59

 鹿島(東京都港区)は、植物などの自然の要素を室内空間に取り込むバイオフィリックデザイン(自然とのつながりを意図したデザイン)に、光や音などの能動的な環境を制御する技術を融合させたウェルネス空間、「そと部屋」を開発した。室内の安定性と屋外の心地よさを両立し、地下や高層ビルなど屋外にアクセスしにくい建物内でも高い開放感を実現する。同社の技術研究所研究棟(東京都調布市)で実証実験を行い、健康性および知的生産性の向上効果を確認したという。
 開発の背景には、経済産業省から「健康経営オフィス」が推奨されていること、アメリカで健康に配慮した建物を評価する「WELL認証」が広がっていることがあった。さらに、SDGsやESGの観点からも、オフィスワーカーの健康性や知的生産性に配慮した「ウェルネス空間」が求められていることは周知の事実である。
 同社はこうしたニーズに応えるため、ウェルネス空間を実現する能動的な環境制御技術にも取り組み、空からの光を室内に模擬する天井装置「スカイアピアー」と、屋外のリアルタイムな音風景を快適に内部に取り込む音場制御装置「サウンドエアコン」を開発した。
 模擬天空天井「スカイアピアー」は、空の見え方の特徴である「開口色」を出現させる天井装置。天井を天空と錯覚させる奥行きのある光で包み、開放感を高める。また、音場制御装置「サウンドエアコン」は、エアコンが空気の温湿度を快適に制御するように、屋外の音風景を快適に制御し、リアルタイムに室内へ取り込む。「そと部屋」では、自然の要素をバランスよく配したバイオフィリックデザインとこれらの新技術を融合。窓などの開口がない部屋でも屋外との一体感を演出し、開放感とリラックス効果を高めている。大規模工事を必要とせず、リニューアル対応やオーダーメイドが可能という点も特徴と言えるだろう。
 同社技術研究所研究棟では、既存のコミュニケーションスペース(約100㎡)を「そと部屋」に改修。異分野の研究員が行き交うコミュニケーションスペースとして活用している。実証実験(第一期2018年7月~2018年10月、慶應義塾大学伊香賀俊治教授および産業医科大学柳原延章名誉教授と共同実施)も行い、生理面(疲労・自律神経活動の測定)、心理面(リラックス・ストレス等に関するアンケート)、知的生産性(単純作業・創造的作業のパフォーマンス)を定量的に評価し、ウェルネスに及ぼす影響を把握した。その結果「そと部屋」での休憩は、自席での休憩と比べて、生理面においてリラックス効果を表す副交感神経活動が大きく、同研究棟に設置されている「屋上庭園」での休憩(10月)と同様の効果があり、心理面のアンケートにおいてもストレスが減少していることが確認できたという。休憩後に行った創造的作業では、知的生産性の向上効果が大きいことも確認した。
 同社は現在、「スカイアピアー」に加え「サウンドエアコン」を設置した「そと部屋」で第二期の実証実験を実施中。健康性および知的生産性の定量的な評価を行うことで、設計提案内容に関するエビデンスを蓄積していく。併せて、IoTセンサによる環境・行動・生体情報の見える化となど、スマートビルディングへの取り組みを積極的に推進。今後、オフィスなどの健康への配慮が求められる建物の新築やリニューアル、運用管理などに幅広く展開し、健康で快適な空間の創造に向けた様々なニーズに対応していきたいとしている。




週刊不動産経営編集部  YouTube