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JLL 丹青モールマネジメントの発行済み株式840株を取得

2015.02.23 12:58

アジア太平洋地域でのリテール部門の強化に努める
 総合不動産サービス大手のジョーンズ ラング ラサール(以下、JLL:東京都千代田区)は1月30日、丹青社(東京都台東区)と株式譲渡契約を締結し、JLLが丹青モールマネジメント(東京都台東区)の発行済み株式840株を取得することで合意した。今回の丹青モールマネジメントの株式取得について、JLLの河西利信社長に話を伺った。

○JLLでは以前から丹青社及び丹青モールマネジメントとのビジネス上の付き合いはあったのですか。
河西 商業施設に対するPM(プロパティマネジメント)サービスを提供するという点においては、当社と丹青モールマネジメントは互いに競合する関係にあります。しかしながら、当社がPM業務を請け負っている商業施設でリニューアルが発生した際には丹青社に工事のプロデュースをお願いするなど、かねてよりJLLは丹青社とのビジネス上での良好な関係を構築しており、今回の丹青モールマネジメントの株式取得は1年程前から双方で協議を進めてきました。
○同じビジネス領域で活躍する丹青モールマネジメントの株式を取得し、グループの一員とした狙いは何でしょうか。
河西 戦略的には大きく2つの要素があります。まず1つは当社のPM業務を更に拡大したいという至ってシンプルなものです。当社と丹青モールマネジメントは互いに競合関係にありながらも、当社は都市型から地方の郊外型商業施設まで幅広く受託しているのに対し、丹青モールマネジメントは郊外のモール型商業施設に数多くのPM受託実績があり、それぞれ独自のノウハウを蓄積してきました。昨今、日本の商業施設には国内のみならず海外投資家からの注目をも集めており、両社のノウハウを融合させることでバリエーションが広がっている商業施設を全方位的にカバーしつつ、当社のグローバルネットワークを活用し海外投資家からのニーズにもお応えできるものと考えています。もう1つは、当社グループが推進するリテール部門の強化が背景にあります。東南アジア諸国における平均所得の上昇に伴って、日本への旅行者数は年々増加しています。当社グループは世界の中でもアジア太平洋地域において今後更なる需要増を期待しており、今回の株式取得は広がりを見せる商業施設へのニーズに対応するものでもあります。
○株式の取得によって、今後丹青モールマネジメントの社内体制や事業戦略等に変化はあるのでしょうか。
河西 丹青モールマネジメントは丹青社の100%子会社としてこれまで多くの商業PMを手掛けてきました。今回当社が取得した株式は全体の70%であり、これにより丹青モールマネジメントは当社の関連会社という立ち位置になります。この度、私が代表取締役会長に就任することとなりましたが、株主が変わったことで社内の体制が大きく変わるようなことはありません。また、「丹青モールマネジメント」という社名も、関係者の皆様にとって馴染み深い名称であるだけに、改称することは現在のところ考えておりません。これからは両社の商業PMに関するノウハウを共存させながら、新たな価値を提供していくための方向性を探っていくことが目下の使命であると考えています。
○今後は商業PMというビジネス領域において、どのように存在感を出していこうと考えていますか。
河西 PM業界は、大手不動産会社のグループ企業がPMサービスを提供するというケースが多く、特に商業PMはオフィスPMに比べ売上規模で突出した企業は見当たらないのが現状です。中には保有する商業施設の管理を自社で行っているケースもありますが、全くの第三者としてPMサービスを提供するのは丹青モールマネジメントとJLLが業界内では大きなシェアを占めています。その両社が資本関係を結んだことで、商業PMのマーケットでより大きなプレゼンスを得たと感じています。先程も述べたように、JLLと丹青モールマネジメントはそれぞれに得意とする分野があり、クライアント層もJLLはリートや海外投資家が多く、国内企業からのPM受託が多い丹青モールマネジメントとの住み分けがなされており、両社の親和性は高いと見ています。日本国内では海外旅行者数の増加もあり、消費の拡大が今度も進むものと考えています。国際的に見てアジア、とりわけリテールに対する大きな需要を取り込むべく、今回の株式取得を機により質の高いサービスを提供していきたいと思います。




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