週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

<不動産業界・話題の人物>丸紅アセットマネジメント 私募リート参入の狙い

2014.10.27 14:05

 総合商社・丸紅の100%子会社である丸紅アセットマネジメント(東京都千代田区)は9月30日、非上場オープンエンド型不動産投資法人(以下、私募リート)「丸紅プライベートリート投資法人」の運用を開始した。
 今年6月の私募リート参入を発表した当初予定では資産規模約250億円だったが、予想を上回る投資家の需要があり、組成時の資産規模約340億円からのスタートとなった。同投資法人の投資対象はオフィスビル、商業施設、住居、ホテルなど多岐にわたる「総合型」であり、今後5年間で資産規模2000億円までの拡大を目指す。
 丸紅アセットマネジメントは、親会社である丸紅が開発した収益不動産を運用資産とする私募ファンドの組成・運用を目的に平成19年11月に設立。今年3月末時点で約920億円の預かり資産を運用している。今回新規事業となる私募リート参入にあたっては、丸紅がスポンサーとなる上場リートのユナイテッド・アーバン投資法人の立ち上げから8年にわたりCIO(最高投資責任者)を務めていた宰田哲男氏が昨年11月に同社代表取締役に就任。資産規模5000億円という国内最大級の総合型リートに成長させたノウハウを生かしていく。
―私募リートに参入したきっかけ
 丸紅グループでは、平成15年12月に上場リートであるユナイテッド・アーバン投資法人を設立し、10年以上運用してきたが、一部の機関投資家のニーズにそぐわない部分があった。上場商品であるためグローバル投資家が売買取引の主役となり、投資口価格の値動きが激しく、元本の変動リスクが組成当初の予想よりも大きくなってしまった。そのため、評価損を計上しなければならなかったり、ロスカットルールによって売却損を顕在化させなければならないリスクを懸念して、上場リートには投資しづらい機関投資家が存在していた。丸紅グループとしては上場リートではない新たな投資商品を取り扱う必要があると感じ、昨年11月に私が丸紅アセットマネジメントの社長に就任し、私募リート組成の陣頭指揮にあたった。
―丸紅アセットマネジメントにおける私募リートの位置づけ
 平成19年に当社が設立されたのは同年施行された金融商品取引法がきっかけ。丸紅本社が行っていた不動産ファンドビジネスが一部移管されたが、翌年にリーマン・ショックが起きたことで私募ファンドは新規組成が難しくなった。今年3月の時点で約920億円の預かり資産を運用しており、ブリッジファンド事業なども手掛けてきたが、今後は私募リートを当社の中核事業としていくつもりだ。
―投資方針は
 資産規模は約340億円からスタートし、当初の想定を上回った(6月発表時は250億円規模)。通常トラックレコードのあるファンドにしか投資しない年金基金からも投資をしていただけた。アセットの種類として、当社の考え方は総合型の投資方針を志向する。重要なのは、不動産の「本源的価値」を見極めることだ。ユナイテッド・アーバン投資法人で用いていた言葉であり、目先のキャッシュフローばかりに囚われないことを意味する。不動産ファンドでの物件投資においては、投資家への配当を確保することに固執し、現時点でのテナントクレジットや契約形態を偏重しがちであるが、不動産で長期にわたってリターンを稼ぐには「本源的価値」を見極めるべきだと考えている。約5000億円のポートフォリオを構築したユナイテッド・アーバン投資法人の事例で言えば、当初602億円からスタートしたポートフォリオの60%を構成する中核資産2物件のテナントクレジットは必ずしもポジティブな見方ばかりではなく、疑問視する投資家も存在した。しかし不動産の価値、立地と規模の面で希少性が高く、その時点のテナントが退去しても他のオペレーターを見つけることもでき、マルチテナント方式で当社が運用することもできる。バリューアップも可能であることを考えると、優良な投資物件であったと考えている。
 本投資法人はユナイテッドアーバン投資法人と同様、総合型の投資方針を踏襲する。しいて違いをあげるとすると、私募リートである本投資法人は、投資家からの資本払戻要求に応じるため、一定割合で換金性の高い小額の物件も組み込んでいく。ただし、これらの小額の物件についても、他の物件と同様に長期保有に適う物件選別を行うという目線で投資判断を行う。他の私募リートにおいても、払戻への対応のため、小額の住居を組み込むために「総合型」を掲げているところが多いが、当投資法人ではオフィス、商業施設、ホテル、住宅など、本当の意味で総合型を目指す。
―総合型の利点とは
 分散投資によるリスクの低減化もさることながら、多くの投資対象資産のなかから、目線にあった本源的価値のある不動産をピックアップすることができることが大きな利点と考えている。上場でも私募でも、リートにおいて規模の拡大は、重要な要素である。現在のマーケットは全体的にアグレッシブだが、濃淡はあるため、よりよい投資資産を取得し、外部成長を進めていきたいと考えている。




週刊不動産経営編集部  YouTube