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「阿佐ヶ谷アニメストリート」に見る高架下開発の今
2014.07.21 10:04
JR「阿佐ヶ谷」駅から徒歩4分。「高円寺」駅へと続く高架下に今年3月オープンした「阿佐ヶ谷アニメストリート」は高架下の新たな活用策として、またアニメを導入した地域活性化策としても注目されている施設だ。オープンから約4カ月が過ぎた同施設の今を覗いてみた。
高架下はもともと駐車場などとして使用されていたもので、現在は約2000㎡に15店舗が営業する。約120mの通り沿いにはコスプレ衣装のオーダーができる店舗やカフェ、イベントスペースなどが並び、休日には多くのアニメファンで賑わう。そのひとつ、「あにめ座バロックカフェ」は大型スクリーンとプロジェクターを有し、スピーカーを組み込んだアニメ視聴用「サウンドチェア」で映像を楽しむことができる。同カフェを運営するアヌビス・エンタテインメント(東京都港区)の森山豊代表は「少しずつですが認知度も上がってきました。スペース内でイベントなども行い、ストリート全体をさらに盛り上げていきたい」と話す。
「阿佐ヶ谷アニメストリート」が立地する杉並区は都内有数のアニメ製作会社集積地として知られ、調査によれば約78社(平成22年時点)が活動しているという。杉並区では以前よりアニメを採り入れた街の活性化に取り組んでおり、「杉並アニメーションミュージアム」の開設や「上井草」駅前にアニメ「機動戦士ガンダム」のモニュメントの設置などを行ってきたが、「阿佐ヶ谷アニメストリート」もこうした動きを受けて設置されたものだ。
開発・運営を行うジェイアール都市開発(東京都渋谷区)では「作る人と観る人、作る人同士、観る人同士との繋がりの場を提供することにより、ファンの拡大・深化を図ると共に新しい作品・新人クリエーターの創出に繋げる場所」を目指すとしており、高架下活用はもとよりアニメカルチャー振興への寄与も目的に挙げている。
とはいえ課題も少なくない。同ストリートで科学とアニメをテーマにした体験型施設「マイクロミュージアムカフェ」を運営する近清武氏は「何より店舗数が少ないのが問題」と指摘する。「『アニメの街』として定着させるのであれば3倍の店舗数は必要なのではないか。またアニメストリートだけでなく、人の流れを街中へ誘導させる施策も必要」と話す。
施設全体のプロデュースを担当した作戦本部(東京都杉並区)の代表取締役・鴨志田由貴氏は、秋葉原など既存エリアとの差別化の必要性を説く。「阿佐ヶ谷アニメストリートは秋葉原のような『買い回り』をするには規模が小さく、必然的にソフト面を重視せざるを得ません。イベントを継続して行い魅力的なコンテンツを発信する。そのためには地元との連携も強化しなければなりせん」。
平日の人通りも多いとはいえず、「厳しい見方かもしれないが、現状で維持できるとは考えていない。1年で何店舗残るか」との厳しい声も内部から挙がる。確かに15店舗ほどでは滞在時間は数十分が限度だろう。来客数を増やすとともに滞在時間を延ばすには、現状ではコンテンツに頼るしかない。取材時は人気推理アニメのイベントが行われており集客も上々とのことだったが、言い方を変えればコンテンツの人気を借りているに過ぎない。新たな魅力の発信には、クリアしなければならないハードルがまだいくつかあるようだ。
JRグループではここ数年来、高架下の開発を積極的にすすめている。嚆矢となったのは平成22年、「御徒町」~「秋葉原」駅間にオープンした「2k540 AKI―OKA ARTISAN」だ。同施設は「ものづくり」をテーマにクリエーターを誘致し、工房とショップが融合した約45のテナントで構成されており、昨今では外国人客も訪れる観光スポットとしても認識されつつある。
阿佐ヶ谷アニメストリートもその一環として開設された施設だが、アニメカルチャーの導入で地域活性化に結び付けようというコンセプトはともかく規模や内容を見ると「実験的」という感が強い。規模の拡大や地域との連携なども含めて今後の行く末が気になるが、JRがすすめる高架下開発の方向性とともに注目していきたい。