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ダイヤモンドメディア 不動産データ連動サービス「Synca」登場 不動産テックの効率化に期待
2019.11.25 11:23
申込データ連動を実現 物件確認の手間を省略
ダイヤモンドメディア(東京都港区)は、不動産業界向けのITシステム開発などを行う。同社は不動産テック特化型iPaaSサービス「Synca(シンカ)」の提供を先月28日より開始。「Synca」とは、不動産テックサービスのクラウドデータ間、あるいはそれらのデータと自社開発のデータを連動し、導入企業の業務効率化を促進するサービスのこと。SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス、クラウドで提供されるソフトウェア)に対し、iPaaS(インテグレーション・プラットフォーム・アズ・ア・サービス、サービスとしての統合プラットフォーム)と呼ばれるクラウドサービスの一つに位置づけられる。
「Synca」はWEB入居申込サービス経由の申込データを社内賃貸管理や保証会社のシステムにリアルタイムに連動することで、「申込済」や「審査中」といった最新の状況も連動されるようになる。さらに、最新の状況がリアルタイムに表示されるため仲介会社の物件の確認の手間が省略されるほか、エンドユーザーに対する「おとり物件」表示の抑制につなげられるなどのメリットが期待できる。
不動産テック業界の新たな道を切り開く「Synca」。同社が「Synca」を開発したきっかけとは何か。今年の8月22日に不動産テック協会が発表した「不動産テックカオスマップ」によると、現在約300種類以上の不動産テックサービスが存在し複数のサービスを導入する企業も増えている。これにより発生したのが、「複数サービス間のデータ連動のニーズの高まり」。複数のサービスでデータを連動させる場合、数百万円・数千万円単位の開発コストや相当の開発期間が必要となり、複数のサービスを利用することで管理しなければならない管理画面の数が増えた。その結果、かえって業務が煩雑になってしまったりする等、導入企業側の負担が増える状況が発生していた。
このような状況を鑑み、同社が開発したのが「Synca」。今後、データ連動・連携可能なサービスを増やしていくが、第一フェーズとして不動産業界で注目されている「WEB入居申込サービス」との連動を開始。付帯する家賃保証会社とも連携を図る予定だ。
業務効率化に特化 iPaaSの普及目指す
代表取締役CEOの岡村雅信氏は同サービスの展望について語る。「サービス導入のメリットとして次の3つが考えられます。『新規不動産テックサービス導入に伴う開発コストの削減』、『新規不動産テックサービス導入までの開発期間を短期間化』、『操作性の簡略化による業務効率の改善』。特に『業務効率の改善』面について、運用は賃貸管理システムの管理画面に一元化することで業務効率を大幅に改善することにつながります。物件管理に必要なデータが一つの管理画面で見ることが可能になるため、いくつもの管理画面を開いて業務をしたり複数のシステムの情報を毎回手で入力し直すといった非効率な作業が必要なくなるのです」。
今後iPaaSが日本の企業にどのように参入していくのか。「iPaaSとよく比較されるのはRPAです。RPAとiPaaSは自動化を目的としている面では同じです。しかし、日本におけるIPaaSの運用コストは海外の出資の5%しかないのに対し、RPAは10%を超えています。RPAはそれぞれに合った方法でカスタマイズできるため、比較的受け入れやすいのではないかと感じています。しかし、iPaaSに関してはまだあまり知られていないというのが根底にあるのではないかとも思います。iPaaSの良さは、導入から運用までワンストップで行えるところ。今後は、『RPAをやっている会社がiPaaSにも参入する』といったように、統合的に普及していくのではないでしょうか」(岡村氏)。
今後の事業展開に各方面からの期待が寄せられるiPaaS。そのような中、同社が目指す展望は何か。岡村氏は「現在、iPaaSに参入している企業は国内外問わず増えてきています。しかし、物流に対応することが難しいのが現状で不動産に特化したものは今のところ出ていません。そのため当社は不動産業界におけるIPaaSの先駆けとなります。つまり、当社の事業が成功することで他の企業も導入しやすくなる。そのような期待も込め、初期費用は30万円~、月額費用は3万円~と不動産テックの導入にしてはリーズナブルな価格を設定しています」。
不動産業界における画期的な効率化を目指すサービス「Synca」。現在はグッドルーム(東京都渋谷区)の「Conomy」と連動可能となっており、今後はイタンジ(東京都港区)の「申込受付くん」、M&M(福岡市早良区)の「GOWEB」等と連動を予定している。提供開始時において、複数社のWEB入居申し込みサービスや賃貸管理システムのデータ連携への対応が決定している。「今後3年で300社の導入を目指す」というビジョンを掲げ、不動産テックの新時代を創っていく。