週刊ビル経営・今週の注目記事
毎週月曜日更新
鹿島建設/鹿島建物総合管理 IoT+AI分析駆使した新たな建物管理サービス
2019.12.09 14:39
鹿島建設(東京都港区)と鹿島建物総合管理(東京都新宿区)は、日本マイクロソフト(東京都港区)と連携し、建物管理プラットフォーム「鹿島スマートBM(Kajima Smart Building Management)」を開発、サービスの提供を開始した。空調や照明などの稼働状況、温度や照度などの室内環境、並びにエネルギー消費量など、建物に関する様々なデータを、IoTを活用してマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」に蓄積。同プラットフォーム上でAIを用いて分析することで、設備の最適調整や省エネルギーによるランニングコストの削減、機器の異常や故障の早期把握などを実現する。
現在、利用されている建物の大半は、AIやIoTなどの先端技術が登場する前のものだ。こうした建物に最新のICTを適用し、利用者や居住者の満足度を維持・向上しながら、建物管理の最適化や維持管理コストの削減を図ることは、ビルオーナーにとって大きな課題となっている。通常、建物の運用データは、監視装置の容量に限りがあることから、一定期間しか保存ができない。また、建物は規模や使用方法が異なるため最適な設備運用も異なり、設備機器の異常把握などを含め、運用管理の多くをベテラン管理者の経験に頼っているのが現実だ。確かにIoT技術の発展により、機器の運転状態などを把握するセンサーを後付けすることでデータの取得はできるようになったが、取得したデータを蓄積、活用する基盤は十分に整っていない。
こうした現状を踏まえ、鹿島は2016年に複数の建物の中央監視装置(BAS)、ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)、並びにIoTセンサーで取得したデータを自動的にクラウドへ収集・蓄積してAIに学習させ、エネルギーの消費予測や設備機器の異常を検知するシステム「鹿島スマートBM」の開発に着手した。
AIを活用した各種アプリケーションについては、エネルギーの無駄を検知するシステム「EF DetectorR」など、鹿島と鹿島建物が保有する知見・技術をAzure上に実装。Azure上のデータ基盤構築やAIエンジンの実装に当たっては、日本マイクロソフトが有するデジタル技術や豊富な実績・知見を生かしつつ開発を進めてきた。これに加え、建物管理業務に関するコスト低減や品質向上の要求に応えるべく、システム開発と並行してオペレーションの標準化や遠隔管理・群管理の導入などを遂行。業務の進め方や仕組みを見直し、新たな建物管理サービスの在り方を検討した。
その後、情報を一元表示するダッシュボードの構築やアプリケーションの運用・改良を進め、2017年に鹿島が保有する建物、2018年に鹿島建物が管理する建物に「鹿島スマートBM」を適用。その結果、機器の異常や故障の早期把握、過去情報に基づく作業や行動支援による管理の省人化・高度化、並びに省エネルギー支援によるランニングコスト削減などの付加価値を提供することが可能となった。
「鹿島スマートBM」は、現在、約60件の国内のビルで運用されているが、今年度中に100件の本格適用を目標として展開を進めていく。さらに鹿島は、2018年に策定した「鹿島スマート生産ビジョン」の主対象である建物の施工段階と運用段階のデータ連携を図るため、鹿島建物および日本マイクロソフトと引き続き連携し、同プラットフォームのさらなる進化と活用を目指す。併せて、建物の使用方法や利用者の行動などに関するより多くのデータを取得し、建物利用者の利便性や快適性の向上につながるサービスを新たに開発することで、スマートビルやスマートシティにおける基盤サービスとしても拡張していく考えだ。