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2020年不動産市況 中小ビルオーナー・担当者はこう見る

2020.02.10 15:52

コーヨー 東京支店長 中島賢氏
―大規模再開発が続々と竣工を迎えていますが、これらのS・Aクラスのビルはリーシングが好調です。
中島 大規模ビルはテナントからの入居の需要も強く、また売却や証券化など出口にも優れています。当社では売買仲介を行っていますが、外資系や国内の機関投資家もファンドの運用先としてこのような大規模ビルへの注目は強いです。特に地銀などはリーマン・ショック前にリスク債権の運用で不良債権を抱え込んだこともあり、そのような経験からミドルリスク・ミドルリターンの不動産に資金が流入しているようです。
―このような環境下で、中小ビルの市況はどのように見ていますか。
中島 首都圏の範囲で見ると、決して良くないと思います。私が気になるのはテナント入居者となる中小企業の倒産が増加していることです。東京商工リサーチの発表によりますと、負債1000万円未満の倒産がリーマン・ショック直後の2009年、2010年と同等の数字になりました。現在満室のビルでも中小ビルはテナント数が少ないため、1テナントの退去が2桁レベルでの稼働減につながります。負債1000万円未満は小規模なところが多いと思いますが、中小ビルにとって懸念材料になるものです。
―ビルオーナーとしてそのリスクを回避していく策はあるのでしょうか。
中島 テナントの取りこぼしをしないことです。私が注目しているのは外資、ないしは外国の方が代表を務めるテナントです。法務省の「在留外国人統計」によると、「中長期在留者・特別永住者」は年々増加しています。このなかで「経営・管理」や高度専門職に分類される方々の数も増えています。当社のビルでは中小の外資系テナントを中心に入居しています。
―中小の外資系テナントは契約の際のコミュニケーションや、与信の調査が難しいと聞きますが、どうでしょうか。
中島 海外の企業などの場合、契約書や与信管理は難しいところになります。ただ最近ではそのようなケースに対応したサービスを提供している企業も増えていますので、それらを活用することで対応可能だと思います。当社の事例ですと、東京メトロ銀座線「稲荷町」駅から徒歩3分の場所に立地する「上野コアビル」では自主管理を行っていることからテナントとの関係性が構築できています。このようなコミュニケーションはテナント側から直接「賃料支払いを遅らせてほしい」とか「退去を考えている」などのネガティブなことも直接かつ早い段階で言ってもらえるので、オーナーとして善後策も立てやすくなります。
 またポジティブなメリットもあります。たとえば「退去する」となったとき、コネクションを使ってテナント自身から次の入居者を紹介して頂けることが多々あります。リーシングの手間が省けるとともに、空室期間の短縮にもつながっています。加えてこのような退去が拡張移転の場合には当社にお話をいただくことも多いです。当社全体でみるとシナジーが起こせていると考えています。




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