週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

住宅金融支援機構 マンションリフォーム融資制度改正で融資限度額拡大 耐震改修工事ニーズの顕在化にらむ

2013.12.02 15:54

 戦後の高度経済成長に伴って、マンションは昭和40年代後半から大都市圏を中心に急速に数を増やし、マンションのストック戸数は平成24年末時点で589万7000戸と右肩上がりを続けている。また、旧耐震基準で設計された昭和56年以前のマンションストックは100万戸を超えており、特にこの旧耐震基準マンションへの対応が喫緊の課題といえる。住宅金融支援機構(東京都文京区)ではマンションの維持及び再生に関して、将来の大規模修繕に備え修繕積立金の積み立てを支援する「マンション すまい・る債」、大規模修繕や建物耐震化のための工事費に対し融資を行う「マンション共用部分リフォーム融資」、建替え時の初動期資金や建設資金等の融資を行う「まちづくり融資」の3つの融資制度を設けている。このうち、「マンション共用部分リフォーム融資」について、融資金額はこれまで「工事費×80%」または「住宅戸数×150万円」のいずれか低い金額としてきたが、11月より耐震改修工事を伴う工事について「住宅戸数×500万円」までの融資が可能となった。
 同機構まちづくり推進部長の戸村洋氏によれば、「マンション共用部分リフォーム融資」の制度改正について、先述のように全国に旧耐震基準建築のマンションが100万戸程度存在することや、11月25日に施行された改正耐震改修促進に伴って耐震改修工事に係る議決要件が、これまでの4分の3から2分の1に緩和されたことを受け、旧耐震基準建築のマンションにおける耐震改修工事が今後ますます顕在化すると予測してのことだという。耐震改修工事は外壁塗装や屋上防水などの計画修繕工事と比べて多額になることが多く、制度改正前の一戸あたり150万円の融資限度額では耐震改修工事の資金需要に対応しきれない恐れがあった。同氏によれば、11月の制度改正以降、既に30件以上の問い合わせが寄せられており、マンション住民や管理組合の建物の耐震性に対しての関心が非常に高いと推測できる。
 旧耐震基準建築のマンションで住宅50戸、耐震改修工事費用が1億5000万円のモデルケースでは、改正前の融資限度額は「1億5000万円×80%」の1億2000万円、「50戸×150万円」の7500万円のうち、低い金額である後者が融資限度額となっていた。改正後は「1億5000万円×80%」の1億2000万円、「50戸×500万円」の2億5000万円となり、前者の1億2000万円が融資限度額となる。
 「これまでの事例の中には、都心部に立地する狭隘な敷地での免震構法による建物の耐震化も行われています。建物の立地条件などに応じて最適な耐震工法を選択することになりますが、今回改正された融資制度を活用することによって、工法の選択の幅が広がるものと認識しています」(戸村氏)




週刊不動産経営編集部  YouTube