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不動産業界の2020年1-3月のM&A 件数は9件で過去4番目も取引金額は低調

2020.05.11 16:45

 M&Aを手掛けるストライク(東京都千代田区)は2020年1―3月の不動産業界のM&A件数・金額を取りまとめた。データは東証適時開示情報を参照。グループ内再編は除いている。
 件数は9件で、1―3月としては2008年以降の13年間で2008年(12件)、2009年(11件)、2010年(同)に次ぐ4番目の水準。一方、取引金額は約8億円で同じく2015年(約1000万円)、2011年(約4億円)に次ぐ下から3番目(上から11番目)の低水準。金額が未確定または公表しなかった案件が7件、無償譲渡が1件と大半を占めたことが要因。「今後、新型コロナウイルスの問題がM&A市場に影響する可能性もある」という。
 2020年1―3月のM&Aで取引金額が最も大きかったのは、1月7日に発表したマッチングサイト運営のシェアリングテクノロジーが、不動産売買・仲介子会社の名泗コンサルタント(三重県四日市市)を8億円(シェアリングテクノロジーへの特別配当を含む)で同社社長の牧野昌良氏に譲渡したMBO(経営陣買収)案件。シェアテクノロジーは2018年に名泗コンサルタントを子会社化していた。
 このほか2月25日に発表した三菱地所が昭和40年代に開発・分譲した伊豆熱川地域での別荘地事業をリゾート不動産業のひまわり(新潟県湯沢町)へ8月1日に無償譲渡する案件や、3月24日に発表したヤマダ電機がレンタル事業を中心に宅配水、住宅、建築コンサルティング、美容・健康事業などを手がけるナックから注文住宅建築のレオハウス(東京都新宿区)の全株式を5月中旬に取得して完全子会社化する金額未確定の案件などがあった。
 その他6件の案件は、いずれも金額を公表していない。
人員拡大で体制強化 札幌オフィス拡張移転へ
 また同社は、25日、札幌市のオフィスを移転する。オフィスの広さを2倍に拡張し、北海道エリアでの営業力の強化に向けた人員増強に対応する。道内企業の経営者は全国同様に高齢化が進んでいる。同社は事業承継目的のM&Aが増えると判断。体制をさらに強化し、成約組数を伸ばす考えだ。
 新しいオフィスは「大同生命札幌ビル」で、面積は約181㎡。現在のオフィス(97㎡)を大幅に上回る。2019年8月期末に3人だった札幌オフィスの営業担当者をすでに5人に増員しており、今後も増やす方針。後継者不在に悩む経営者の来社による相談も増えており、来客スペースの確保も課題だった。
 帝国データバンクが1月に公表した調査では、全国平均に比べて1歳近く年齢が高い。ストライクは北海道での体制を強化し、中堅・中小企業の事業承継や企業の「選択と集中」などを背景としたM&A(合併・買収)需要の拡大に対応する。




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