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三和鋼業 建物開口部を密閉する津波防御扉が実用段階に

2013.06.10 14:57

 地震国といわれる日本だが、先日発表された南海トラフ地震の被害想定にあらためて身を引き締めたビルオーナーも多いのではないだろうか。最悪の被害想定では死者32万人、被害総額は220兆円といわれており、これが現実のものとなればまさに空前の被害だ。一方ビルに目を転じれば、地震の揺れに対する対策はすすんでいるものの津波への対応はまだ途上といっていい。前述の被害想定もその大部分が津波によるものとされているが、適切な対応をとることで犠牲者数は5分の1以下に減らすことができるとされている。三和鋼業(兵庫県尼崎市)で開発がすすむ「津波防御扉」は、まさにその対応策になり得る設備だ。
 ビルが津波に襲われた際、躯体が持ちこたえても開口部から流入する海水が被害を増大させる場合が多い。室内に海水が流入すれば、あらゆる資産はもちろん人命も危険にさらされる。「津波防御扉」はエントランスや窓などビルの開口部を塞ぎ、水の侵入による被害を最小限に抑える。扉は引き戸式で、鋼製の扉をスライドさせて開口部を覆った後、開口部に押し付けて密着させる仕組み。水の侵入はおおむね防ぐことができ、完全防水は保証できないが、濁流が流れ込まないだけでもビルの安全性は充分高まるといっていい。開閉は基本的に手動だが電動化も可能で、ビルを管理する人員の安全性にも配慮されている。これまでに防災センターへの設置事例もあり、今後一般のビルへの導入もすすめていくという。もちろん津波だけでなく、台風などによる高潮や洪水にも有効だ。これまで着目されていなかった「ビルの耐水化」を実現しつつある設備といっていいだろう。




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