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ツクルバ これからのオフィスの役割とは アフターコロナはコミュニケーションの場に
2020.06.30 12:49
テレワークを大きく進めたコロナ禍。それと並行して働き方、オフィスの最適化の機運が高まっている。その動きはITやベンチャー・スタートアップに限らない。大手企業もオフィスのあり方を模索する。ウィズコロナ・アフターコロナのオフィスはどういう場になるか。「co―ba」や「HEYSHA」などを展開するツクルバ(東京都目黒区)は5月25日から展開する「オフィス縮小サポートサービス」を通してこれからの新しいオフィスのあり方を提案するとともに、自治体が協力してビルオーナーや不動産仲介会社が参加する形でのオフィス探しのプラットフォーム「オフィスマッチングプラットフォーム」の設立に向けて動いている。
ツクルバが展開する「co―ba」や「HEYSHA」は主にベンチャーやスタートアップのニーズを満たしてきた。「co―ba」はこれまでに全国22カ所で展開するシェアードワークプレイス。ツクルバが運営する都内直営店の他は、各地のビルオーナーや事業者といった、パートナーと組んで展開してきた。「HEYSHA」は内装や造作が施されているセットアップオフィスとして貸し出し。退去時も原状回復を必要としない。テナントにとって入退去のコストが抑えられるオフィスとして人気を博す。
経営企画室長の山田悠太郎氏はこれまでのツクルバ展開オフィスサービスへの需要について「スタートアップやベンチャー、ITエンジニアが多かった」と話す。このようなIT系はリモートワークをしやすい職種のひとつ。
今回のコロナ禍はどのように映ったか。アセットディベロップメント部の小野ちれか氏は「スタートアップ・ベンチャーを含めて、オフィスに対するニーズが一変した」と指摘する。
スタートアップ・ベンチャーの傾向として、短期間での増床移転を繰り返してきたことが挙げられる。特に成長過程にある企業は、将来の人員増加を見越して現状の社員数よりも少し広めのオフィスを借りることが多かった。これがコロナを境に、一転して増床計画の中止、あるいは縮小移転に向けて急速に逆回転しているようだ。「日本経済、世界経済を不透明感がおおったことで手元の資金を確保しようとする動きが強くなっています」。
そのなかで同社は「オフィス縮小サポートサービス」をスタート。このサービスは既存の4つの同社事業からなり、比較的規模の大きい面積を使用する企業向けの「オフィス縮小コンサル」や「オフィス移転仲介」、またベンチャーやスタートアップ向けの「HEYSHA」やコワーキングスペースの「co―ba」からなっている。
ターゲットとなる企業規模を広げた形となる今回のサービス。コロナ禍に直面して、同社が引き合いを受けるクライアントの規模も広がってきているようだ。「直近で引き合いをいただいておりますお客様では、1000坪以上のオフィスを借りられている企業様で縮小を検討されている方から20~30坪ほどのオフィスを借りられている中堅企業まで幅広です」と小野氏。同社は不動産仲介の機能を有するとともに社内にファシリティデザインを行える部署もあることから、大手企業には縮小移転先のオフィスの紹介から設計まで一気通貫で行える。中堅・中小企業向けには「co―ba」や「HEYSHA」の案内を行うなど、柔軟な運用を行っている。
「大手企業やベンチャー・スタートアップもキャッシュアウトを抑える動きのなかで、縮小やよりフレキシブルなオフィスを選ばれる傾向が強まっていると感じています。たとえば『HEYSHA』では入居時の造作費用と退去時の原状回復費用は不要です。ベンチャー・スタートアップにとって、2~3年後も現状と同じ規模で事業を継続しているというケースは少数です。そのころには新しいオフィスに移転することがほとんどです。そうすると比較的短期間での退去が見えているのに、造作や原状回復費用などを負担しなければならないのは大きなコストだと考えられます。コロナ前からこのような声はよくお聞きしていましたが、最近はそのような声がより多くなっていると実感しています」(小野氏)
変化するオフィスマーケット。アフターコロナはその変化が定着した、不動産業界にとっての「ニュー・ノーマル」になることが予想される。そのなかでツクルバは不動産業界の変化も促そうとしている。それが仲介業者間のプラットフォーム構想だ。
山田氏はこの構想の背景について「現在の不動産仲介業界では、各仲介会社には情報を囲い込むインセンティブがありますし、オーナーも分散した形で存在するため、オフィスを探すテナント側にとって非効率な状況となっています」と指摘する。そこでこのプラットフォームではオフィスの移転や退去の情報などを一元化していく。需給を「見える化」することによって、居抜きオフィスなどの流通もよりしやすい環境を整えていく。「当社単体ではできない。まずは自治体に協力を仰いで立ち上げを推進していきたい。より情報の風通しが良い環境を整えていくことで流通を増やしていきたい」と意欲を見せる。
同社はアフターコロナでもオフィスは「必要不可欠」とみている。ただ、その役割は単純に「仕事をする場所」ではなくなりそうだ。
「それぞれの企業・ワーカーが働き方の『最適解』を見つけていくことになるのではないでしょうか。例えば単純作業はオフィス以外でもできます。しかし偶発的な交流や多様な専門性の掛け算でイノベーションを起こすような活動は自宅ではできません。オフィスのような場で様々な人とコミュニケーションをとることによって初めて生まれてくるでしょう。オンラインとオフラインをその時々で柔軟に選択していくワークスタイルが定着していき、そのニーズを満たせるオフィスが選ばれていくのではないでしょうか」(山田氏)
働き方が柔軟になれば、ビルの貸し方にも柔軟さが求められそうだ。