不動産トピックス
クローズアップ エネルギー見える化編
2013.02.25 15:05
空調・照明・エレベーターなど、建物では多くの電力が消費される。節電ニーズが既に定着した今、建物の所有者側には設備機器の効率的な運用を実現するために、エネルギーの使用状況を正確に把握するための体制づくりが求められている。省エネ・電気料金削減に貢献する見える化システムを紹介する。
オムロン 施設全体で省エネ・環境に関する意識向上に努める
オムロン(京都市下京区)では、京都府綾部市の同社綾部工場における「『環境あんどん』による工場の診える化と最適化ECO活動」が評価され、省エネルギーセンターが主催する「平成24年度省エネ大賞」の省エネ事例部門において、最高賞の経済産業大臣賞を受賞した。
「環境あんどん」とは、省エネの担当者や専門家のための一般的な電力量の見える化システムではなく、現場で生産に携わるすべての人が省エネや環境についてコミュニケーションできるよう、同工場が独自に開発したシステムである。工場内には「環境あんどん」を生産現場に複数台設置し、センサーで収集した電力、温湿度、エアー流量、ほこりの数など生産に関連する様々な情報を生産実績と合わせて常時監視し、各情報と過去の実績データを一元監視することで、生産プロセスを対象に省エネ改善活動を進めてきた。その結果、電力使用の多いクリーンルームで電力を50%削減するだけでなく、浮遊するほこりの量を3分の1に減少させるなど、生産性や品質を維持向上しながら使用電力を削減する省エネ環境改善事例を現在までに34件創出している。
エコプロ 設備機器の運用改善をハード・ソフト両面でコンサルティング
エコプロ(相模原市緑区)では、電力の見える化システム「エコプロ21」と運用改善コンサルティング「エコワーク」を組み合わせた、様々な建物用途に対応する総合的な電気料金削減に向けたサポート業務を展開している。
「エコプロ21」は、建物の使用電力をいつ、どこにいてもリアルタイムに監視することのできるシステムである。電力の基本料金を削減するためには、一年を通して最も多く電気を使用した30分(デマンド)をコントロールすることが重要となるが、同システムでは電力のピークがあらかじめ設定した目標値を超えそうになると警報を発報。一時的に電力の使用を業務に影響のない範囲で制限することにより、ピークカットを実現する。また、電力の使用状況を日毎に折れ線グラフで表示し、時間帯別の電力使用のムダを抽出。効率的な電力使用により電気料金の削減をサポートする。同システムは分電盤で系統別の電気使用量を計測し、インターネット回線を利用して外部にデータ転送を行う装置「EP―01」を使用。同製品は電気だけでなくガスや水道などの計測にも対応し、自社のエネルギー見える化システムに取り込むことも可能である。
「エコワーク」は、独自のカリキュラムを通じて環境・エネルギーマネジメント・コスト管理に関する意識を高め、効果的な運用改善をコンサルティングするサービス。2カ月のカリキュラム期間中はセミナーや現地調査を実施し、クライアント自身が省エネに関するテクニックを学ぶことができる。同社環境ソリューション部の池上文悟氏は、「当社が提供するサービスは、設備機器の運用計測によるハード面でのエネルギー見える化とともに、運用サイドの省エネ意識を高めるソフト面でのコンサルティングに強みを発揮します」と話す。
クレアビジョン 既存システムを生かし導入可能な見える化システム
ソフトウェア及びコンピュータシステムの受託開発、設計、保守管理などを手掛けるクレアビジョン(東京都板橋区)の「エバーグリーンビジョン」は、オフィスビルや工場などで使用されるエネルギー(電流、電力、電力量、水、ガスなど)を計測し、設備を制御して省エネを実現するシステムである。同システムはエレベーターや自動ドア、工場等の自動機械などの制御で使用されるプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を使用しシステムを構築。電力測定器、アナログ・接点データ、設備器機のアラーム情報などをPLCに取り込む。仮にサーバーがダウンした場合でも、PLCに各設備機器の計測値を保存しておくことができ、サーバーは復旧後にPLCから保存されている計測値を取り込むことができる。データの閲覧は、クライアントのパソコンから同システムのサーバーに保存されたデータを閲覧することが可能である。
同社の苅宿氏によれば、「エバーグリーンビジョン」は既存の中央監視システムをそのまま活用しデータの連携も可能で、既存の計測機器の更新に際しての大幅なコスト削減に寄与するとのこと。
また、同氏は「社会動向や市場にニーズによって変化するクライアントの運用に対応し、分析や情報収集などクライアントの要望に合わせてシステムをカスタマイズすることもできます」と述べている。