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日鉄興和不動産初のインキュベーションオフィス「SPROUND」品川に開業
2020.10.05 11:31
イノベーションを先導するスタートアップの育成・支援は日本経済成長の要。そこで不動産が果たす役割は大きい。「品川インターシティ」にシリコンバレー発のインキュベーションオフィスは将来のユニコーン企業が育つ場となりそうだ。
シリコンバレーのVCと協同で推進
日鉄興和不動産(東京都港区)は先月28日、米国・シリコンバレーで誕生したベンチャーキャピタル、DNX Venturesと共同で、同社保有の「品川インターシティ」A棟の22階にインキュベーションオフィス「SPROUND(スプラウンド)」を開設。品川エリアの更なる活性化に寄与しつつ、インキュベーションオフィスの運営にも本格的に乗り出した。
日鉄興和不動産の大規模複合ビルブランド・インターシティの先駆けとして1998年に「品川インターシティ」は誕生した。以後、「品川」駅を利用して都内各地への移動や新幹線利用、羽田・成田空港へのアクセス性等も好み、メーカーをはじめ昨今はIT企業も同ビルへ入居する傾向が見られた。高稼働を常に維持してきた同ビルの更なる価値を高め、今後も世界と戦える都市・品川の更なる成長を視野に同社は新たな取り組みとして、インキュベーションオフィスの運営を検討。既に米国・シリコンバレーで実績のあるDNX Venturesと組み、またニューヨークに本社を構えるフレキシブルワークスペース事業者のKnotel.Inc(以下、ノーテル社)と業務提携を行いスタートした。
日鉄興和不動産の今泉泰彦社長は「品川は従来からアクセス性に優れた国内屈指のターミナルシティ及び東京の玄関口として機能し、今後はリニア新幹線の開通も見通した需要も見込まれます。当社はそれら魅力を生かしながら、スタートアップに必要な知が集積・循環する拠点を『品川インターシティ』へ創ることとしました。日本初進出となりましたノーテル社と業務提携を行い、同社監修のもと約400坪のフレキシブルワークスペース(フレキシブルワークオフィス)を設計しました。今後は場所の提供に留まらず、『世界で戦えるスタートアップを品川から』をテーマに展開していきます」と語った。
シードアップを積極的に支援
SPROUNDは、シードスタートアップを対象としたインキュベーションオフィスで、個人利用ではなく、あくまでもBtoBのスタートアップが対象。スタートアップの企業は大まかに4つのステージに分かれており、「シード」の場合事業アイディアはあるが起業前の段階(一部起業後を指すこともある)を指す。この段階では起業家に基本的に資金が無く、一般的なサービスオフィスに入居する費用すら捻出できないケースや施設の規約に縛られて様々なチャレンジができないこともあるとのこと。それらシードスタートアップの支援や投資に実績のあるDNXが柔軟にサポート。同社の日本チームがSPROUND内にオフィスを設け、成長加速を積極的に支援していくことになる。
新型コロナにも対応 多様な働き方をサポート
更にノーテル社が提供する、簡易にレイアウト変更が可能なモジュールパーティション「Geometry」を採用する。レイアウトを柔軟かつ短時間で変化でき、新型コロナウイルスの感染症対策も想定した「密」状態を避ける環境づくりも可能だ。ネット環境の構築やセキュリティの確保、オフィス利用者向けの福利厚生として無人コンビニも設置。利用者の快適と利便性を考えたオフィスづくりを行った。
DNX Ventures代表の倉林陽氏と同施設の運営担当・上野なつみ氏は「BtoBのスタートアップへの投資は既に100社以上となりました。これらの経験で培った経営ノウハウやテクノロジートレンド、組織の課題の解決方法などを『SPROUND』を利用しますスタートアップや投資先に提供してまいります。またノーテル社とも協力して、シードからシリーズAまでの成長過程が難しいこと、高速の人員拡大と増員を見込んだ過剰な契約や一方で移転に伴うペナルティといった従来から抱えております課題を解決してゆき、働き方を用途や時々で変化する、自然発生的なコミュニケーションの発生を促すコワーキングスペースエリアを運営していきます」と語った。
施設は多様なワークスタイルを意識し、入り口正面の受付付近にはコミュニケーションエリアを構築。フリーデスクやバーテイストのカウンターを設け、スタートアップの成長に繋がるコンテンツ配信やイベント会場にも活用できる、正にコミュニケーションの中心地をつくった。そこから奥にはコラボレーションエリアを構築。ミーティングやTV会議等を含め利用できるディスカッションの空間をつくり、その都度自在に什器を変更できる特徴もある。ここまでは交流に適した空間であるが、一方自身の業務に集中できる「フォーカス」ゾーンも形成。集中と交流を1つの施設で使い分けられる機能をつくり、利用者の事業成長に寄与する。
両社は、まずは利用者の満足度向上を高めつつ、目安とする「2年での卒業」を軸に入居企業の成長をサポートする。新たなインキュベーションオフィスの開設は未定だが、今回の取り組みを機に積極的に展開していく姿勢だ。