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「WHEEL kitchen」事業実証実験開始 あらゆるスペースが出店候補地に
2020.11.30 11:14
アフターコロナ・ウィズコロナへエリア活性化の一手に
数年前より都心オフィス街などで展開されているキッチンカー。ここにJAXA発のベンチャー企業が参入する。
データサイエンスで社会課題を解決するDATAFLUCT(東京都千代田区)は新たに移動販売プラットフォーム事業「WHEEL kitchen(ウィール キッチン)」を立ち上げた。これまで同社が展開してきた多数のデータサイエンス事業での知見を生かし、生活者の満足度向上や飲食店の収益向上、そしてエリア全体の活性化などに貢献していく。
同社は2019年に創業。「データを商いに」というビジョンを掲げて、社会と企業の課題を解決するビッグデータ分析サービスを開発する。それらのシステムを開発するにあたって、衛星画像や気象、通信、IoT、POS(販売時点情報管理:商品売り上げ情報を把握し、それに基づいて売上や在庫を管理するためのシステム)、移動データなどを活用している。これまでにリアルタイムの位置情報データを活用した商圏分析・競合分析を可能とする「DATAFLUCT marketing.」や店舗オペレーションを改善しフードロスを削減する店舗支援AI「DATAFLUCT foodloss.」などを開発している。
現在、同社ではスマートシティ事業を強化しており、今回の「WHEEL kitchen」はその一環。事業の最初のプロジェクトとして、分散型商圏ビジネスを作っていくことを目指す。
移動販売のプラットフォームとして特徴的なのは、同社のこれまでの事業での知見やノウハウを生かし、売上最大化AIの「WHEEL AI」を活用していくこと。商圏データはもちろんのこと、世帯年収分析からのメニューの検討や、Webカメラで消費者の行動をモニタリングしたうえでの広告施策や製品ラインアップの改善の実施、気象や売上データを考慮した販売量の予測なども行っていく。食への嗜好や価格帯などをベースに、それらの商品を求める人がいるエリアを探し出して展開するとともに、気象データなどから当日の販売数を精緻に予測する。ニーズを把握し、食品廃棄などのコストは削減することにより、売上の最大化を目指す。
店舗にとっては新しい商圏や新規顧客の開拓につながり、生活者にとっては三密を避けながら非日常的な食の体験が可能となる。エリアの活性化にもつなげていく。またSNSアプリ「LINE」での事前予約も可能にした。事前の発注数がわかるため食品廃棄のさらなる削減につながるとともに、これまでの移動販売では提供が難しかったような手の込んだ食事を楽しむことができる。
代表取締役の久米村隼人氏は「当社ではこれまで様々なデータを活用した商圏分析や需要予測のプロダクトを展開し、実績をつくってきました。そのノウハウを『WHEEL kitchen』に生かしていくことで、ウィズコロナ期の飲食店ビジネスやエリア活性化に貢献したいと考えています。当社のスマートシティ事業の最初のプロジェクトとして、多くの店舗様やスペースを貸すオーナー様、そして実際に購入される生活者様に体験してもらいたいです」と話した。
本格運用は来春を予定しているが、今月20日から12月19日まで、「ワールド北青山ビル」の屋外スペースにて実証実験を行っている。「ビルやマンション、あるいは駐車場の空きスペースなど様々な場所での展開を模索している」(同社)とのことで、本格運用開始時は都内で3~4のスペースで展開していく予定だ。