不動産トピックス
今週の一冊
2012.03.26 16:13
阪神・淡路大震災惨状を目の当たりにして一念発起
震度7へ挑む 耐震粘着マットの開発・プロセブンの挑戦!
著者:山田 一夫
出版:日刊工業新聞社
発行:平成19年
価格:1200円(税別)
震災を踏まえて新たな災害対応機器が生まれ、技術の導入・見直しが進み、被災地の復興・復旧作業に生かされることはもちろん、今後の危機管理体制が強化されていく契機となる場合がある。
今から約20年前に発生し、死者約6500人、住宅の全半壊が約50万世帯におよび、甚大な被害に見舞われた阪神・淡路大震災。その震災を糧に、現在では広く普及し、室内のBCP対策として有効なアイテムのゲル素材の家具転倒防止材が開発された。本書では開発の経緯から普及に向けた取り組みなど、開発者であるプロセブン社長の小玉誠三氏の軌跡を描かれた内容となっている。
なお、小玉氏は、阪神・淡路大震災の前までは、京都で家業の呉服業を営んでいたため、耐震素材の研究というのは、全く異業種の分野だったという。それでも一念発起したのは震災の惨状を目の当たりにするとともに、家具の転倒による圧死で友人を亡くしたという無念さや悔しさが新素材開発へと突き動かした要因なようである。ただ、阪神・淡路大震災クラスの震度7に耐えうる強力な素材の開発は、私財を投げ売って研究を行ったこともあり、開発まで丸5年も要したという。
小玉氏は震災を経験し、「本当に人生観が変わりました」と語っている。震災から立ち上がる勇気や困難に向かってチャレンジすることの大切さを教えられる内容となっている。ぜひとも一読をお勧めしたい作品である。