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サラトガ・エージェンシー 「Z不動産サービス」展開 オフィス入居初期費用ほぼ0円に
2021.01.12 11:57
敷金を24カ月に等分して賃料に上乗せ ビルオーナーの機会損失「0」実現へ
サラトガ・エージェンシー(東京都品川区)ではオフィス入居初期費用ほぼ0円の物件を提供する「Z不動産サービス」を運営している。同社は2018年に創業し、オフィス・商業のリーシングやビルメンテナンス事業を展開している。全国の商業施設でのテナント入居をはじめとして、実績を積み増している。
同社が「Z不動産サービス」を開始したのは、ベンチャーやスタートアップにとってオフィスを借りる際の初期費用が大きなハードルとなっているからだ。代表取締役の大坪勝氏は「成長過程にあるベンチャー企業や起業したばかりのスタートアップにとって、最初に資本を投下したいのは人材育成や研究開発だが、オフィスを借りる際の初期費用は事業成長の妨げになっていることがあります」と指摘する。
これはビルオーナーにとっても機会損失だ。昨今のコロナ禍によって、オフィスの分散が始まっている。これまで都心一極集中だったオフィス需要は周辺都市に拡大してきている。賃料単価が比較的安い中小ビルなどにとって新しい需要ともなる。
このような需要を拾っているのが、現状ではレンタルオフィスやシェアオフィスといったような施設だ。ただ、それは企業にとって必ずしも「ベストな選択」ではない。大坪氏は「やむを得ずという面も多く、『自分の城』を構えたい、という企業オーナーは多い」と明かす。
「Z不動産サービス」はビル経営における収益向上にも寄与する。このサービスを利用するためには敷金や保証金・保証料を最大限抑える必要があるが、それらの費用をたとえば24カ月などで等分して賃料に上乗せすることができる。「敷金等は預かり金になりますが、それらが賃料に上乗せされればビル経営における収益となります。テナントにとっても賃料の場合、経費として計上できるので、Win―Winの形が作れます」(大坪氏)。
「Z不動産サービス」の対象となる物件はワンフロア100坪以下。現在は首都圏ならびに関西圏だが、ゆくゆくは全国主要都市での展開を計画する。またサービスについても拡充を目指していて、「オフィス移転費用や内装の造作費用もゼロにできるよう、パートナー企業との交渉をしていきたい」と意欲を示す。
コロナ禍でダメージを負った企業ではオフィスのコスト削減に動いている。ベンチャーやスタートアップだけでなく、中堅・中小の企業にも利用は広がる可能性がある。