不動産トピックス

クローズアップ 消防設備編

2011.12.05 12:26

 建物の安心・安全を守るために欠かせない消防設備。消防法の規定によって、オフィスビルや複合ビルなど、各建物の用途に合った消防設備の設置が必要となる。しかし、消防設備として認定されている設備器具の中には、意外に使用しにくいものや非効率なものがあるのが現状だ。そこで、今回は、従来型の消防設備の弱点を解消し、より高いレベルの安全性を確保できる設備を紹介する。

ナカ工業 安全性と操作性を両立した一動作型避難はしご
 平成13年に起こった新宿歌舞伎町ビル火災により、消防法が改正され、小規模複合用途ビル等が該当する「特定一階段等防火対象物」に設置する避難器具の設置基準が強化された。それに伴い、避難ハッチ等の製品を多数開発してきたナカ工業(東京都台東区)では、改正消防法に適合する一動作型の緊急避難はしご「レスキューラインFX」を展開している。
 従来、ビルの避難設備では、縄ばしごや緩降機が利用されていたが、不安定かつ使いにくさが弱点だった。しかし、同製品は各フロアにある作動レバーを下におろすだけで、四方を囲うようにはしごと保護バーが展張し、固定フックではしごの安定度を向上させるシステムを採用。前向き状態ではしごに乗り移れ、危険度も少ない。また、緩降装置によって、はしごの展張速度が制御されるので、周囲に人がいても安全だ。
 「下階収納方式を採用し、収納作業も簡単です。収納時もコンパクトかつスマートに納まり、意匠性を損ないません」(営業企画部 志村氏)
 最近では、既存の小規模複合ビルだけでなく、新築ビルや大規模改修時に採用されるケースが増えているという。
 「既存ビルの場合、各フロアで脱出用の窓が直行してないと設置が難しいなど、建築構造によっては設置できない場合もあります。ただ、現在のビルは、2経路の避難通路を確保する必要があり、非常階段を設置するよりも、大幅なコスト削減を見込める当製品を採用されるケースが増えています」(同氏)

モリタ防災テック スプリンクラーと同等以上の消化安全性を実現
 「大量の水を放出して火災を抑制するのがスプリンクラーの役目。巨大な消火用貯水槽の他、消火ポンプユニット、自家発電設備などを揃える必要があり、広大な設置スペースを確保しなくてはなりません」と話すのは、大手消火器メーカー、モリタ防災テック(東京都港区)の事業統括部技術課長の鈴木健介氏。そうした背景から、同社は、スプリンクラー設備と同等以上の防火安全性能を実現しつつ、大幅なコンパクト化をした高性能消火ユニット「スプリネックス」を展開している。
 「例えば、延床1000m2以上の老人ホームにはスプリンクラーの導入が義務付けられていますが、水量12・8トンもの消火用貯水槽が必要です。しかし、当製品は、わずか216リットルという少量かつ人体に無害な消火薬剤を使用し、配管径も34mmと非常にスリムなため、建物の構造に左右されない省スペースを実現できます」(鈴木氏)
 使用する薬剤は水の4倍の消火性能を誇る。さらにスプリンクラーと比較した際、感知スピードの速さ、誤放射の発生率の低さ、メンテナンスの簡便性など、様々な面でスプリンクラーよりも高い機能性を備えている。
 「スプリンクラーは配管が壊れる等のアクシデントでシステム全体が停止する可能性があります。当製品は地震に強いだけでなく、万が一1台が破損しても残りの設備は機能します。また、消火薬剤が一度散布された場所は再燃しないため、延焼を防ぎ、被害を最小限に食い止めることができます」(同氏)

LIXILニッタン 自動試験機能で点検作業を簡略化
 LIXILグループの一員である総合防災メーカーのLIXILニッタン(東京都渋谷区)は、自動試験機能付きの自動火災報知設備P型1級受信機「1PSO」を今年12月1日から全国展開する。
 自動火災報知設備とは、火災時に発生する煙や熱、炎を自動的に素早く感知し、受信機と地区音響装置(地区ベル)を鳴らし、建物内に火災を知らせることにより、避難と初期消火活動を促す設備のこと。受信機は防災センターや管理室等に設置され、感知器や発信機からの火災信号を受信し、地区表示によって、火災の発生場所を管理者に知らせる。
 同製品は、壁掛けタイプの受信機で、今回新たに「自動試験機能」を搭載。これにより、感知機の加煙試験や加熱試験を免除できるようになるため、点検作業時間の大幅な削減と、効率的に安全に維持管理ができることができる。また、自動試験機能は60回線まで対応するため、現場でも簡単に感知器の増設が可能になった。そのほか、感知器の脱落監視、部屋番号表示、プリンタ内蔵機能といった多大な機能を有している。
 視認性を高めるため、大きめのスイッチを設けており、分かりやすさを追求した同製品は使い勝手のよさも魅力といえる。




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