不動産トピックス
第20回不動産ソリューションフェア人気セミナー紙上再現
2018.11.12 15:25
「ビル賃貸借における保証問題」~プラス民法改正の場合はどうなるか~
民法の改正は2020年の4月1日から施行され、「保証」が大きく変わります。今までのように気楽に保証人になってもらうわけにはいかなくなった点を、皆さんに注意喚起申し上げたい。
今は賃料保証会社が非常に増えています。どの賃料保証会社を活用するかにおいても、非常に気をつけなければなりません。ビルのオーナーの皆様やオーナーに助言をする管理会社の方々もしっかり押さえてアドバイスができると、厳しいビル管理会社間の競争でも違いが出てくるのかと思います。
民法が改正された後でも変わらない点と、改正によって大きく違うものがあります。ビルを賃貸事業する場合、安定して賃料を取らなければなりませんが、不幸にしてテナントさんの業績が悪くなったりしたときに、連帯保証が非常に大きくなってきます。どのように賃貸保証をとるかということが今後大きくなってきます。いったん取った保証は安全なのかという問題もあります。
「改正民法のもとで個人保証をとる場合の主な規制」についてですが、個人を連帯保証人として取った場合、契約書には、連帯保証の条項として、「連帯保証人は、賃借人の賃料債務、損害賠償債務、原状回復債務その他本契約から生じる一切の債務を賃借人と連帯して保証する」との定めがあるとします。テナントに債務が生じたとき、連帯保証人に請求できますか。テナントが賃料不払いを起こしたり、賃借フロアを故意、過失で痛めた場合、連帯保証人に請求できますかという問題です。
現行法では何の問題もありません。テナントが契約に基づいて負担した債務は当然負わなければいけません。 ところが改正民法ではどうなるかというと、個人保証をとる場合の主な規制で無視できないのはまず極度額を定めることです。極度額とは限度額です。いくらまで保証しますってことを書いておかないと保証契約そのものが無効になってしまい、保証人に対して請求しても法律上効力がありません。
個人が保証人となる場合、「元利金のみならず約定された違約金や損害賠償債務の全額について極度額を定めること」とされ、違反すると保証契約が無効になります。この根保証というのは金を借りる場合だけとは限りません。継続的な売買契約、1つの会社からも継続的にものを買ってどんどん買掛金がたまる場合などです。
今までなら連帯保証した場合は青空天井で全部払わなくてはなりませんでした。それでは連帯保証人にとって酷です。特に個人にとって気軽な気持ちで保証人になったのに限度なく負わされてしまうという例が非常に多い。親切な気持ちで保証したために一生を棒に振るのは酷でしょうという気運が非常に強くなってきました。個人の保証人を保護するという考え方です。
ですから賃貸借契約の特約として限度額を定めませんと特約をつけても駄目です。保証人保護のため強硬規定ゆえに、そういう特約は無効。限度額を定めてください。限度額の定めには規制がありません。個人保証を取る場合、そういう点ではやりにくくなります。
それからもう一つの問題があります。
テナントが死亡し、その相続人が賃貸借を承継しました。しかし、その相続人は、相続後しばらくしてから、賃料の不払いを起こしています。連帯保証人に、その不払い分を請求できるかという問題です。
つまり、テナントの相続人による賃料不払い分を連帯保証人は持たないといけないのかという問題です。現行法では何の問題もなく連帯保証人に対して請求できます。
ところが、改正法では、元本の確定となります。テナントまたは保証人が死亡したら元本を確定するのです。テナントが死亡した場合、以後にテナントの相続人が負担することになった債務、テナントの相続人による賃貸料の不払いやテナントの相続人の使用により発生した損害賠償債務は保証しないということになります。これは現行法とは決定的な違いです。
今後はプロの家賃保証会社にお願いするのが一番いいということになるでしょう。家賃保証会社は最近2、300社あるという話を聞きました。なぜそんなに家賃保証会社が増えたかと言うと、世の中の流れ民法改正を睨んでという理由と、なんといっても家賃保証会社は規制がないので増えているのです。
国交省は登録制度を設けています。登録していると安心ですね。ただし、家賃保証契約の中身についてはチェックされません。賃料保証会社との約定は会社によってバラバラです。一番気を付けなければならないのは、期間はどのくらい保証してくれるか、どれだけの項目を保証してくれるのかに関心をもたれるでしょうが、支払い停止条項というものがあります。つまり一定の場合には保証履行しませんという条項です。支払い停止条項は普通にあると思ってください。そういう条項が約款に小さな字でさりげなく書いてあるんです。これはある意味プロとかにお願いしてチェックしてもらう必要があります。支払い停止条項については、特約条項でありますが、交渉してこれは除いてくれと、特約を結ぶという方法もあると思います。
大家さん、あるいは管理会社の皆さんはそのような事態に対してそれなりの戦いをしなければいけないということです。