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投資物件購入で仮想通貨対応 「億り人」の需要開拓、将来の試金石にも

2018.07.23 12:20

 2017年、ビットコインの急騰で「億り人」が誕生していこう、仮想通貨が投資商品として台頭している。ただ2018年に入ってから市場は低調。仮想通貨の価格も昨年末をピークに不調だ。そのなかで不動産業界ではよりボラティリティーの低い不動産投資へのチェンジを勧める動きが出ている。

 投資商品として急浮上した仮想通貨。特にビットコインの2017年の急激な値上がりは記憶に新しい。「億り人」という造語も生みだしている。
 不動産業界でも物件購入に仮想通貨で対応する動きが広がりつつある。アートスペース(東京都豊島区)もその1社だ。
 同社は創業以来、投資家向けに投資物件の販売を展開。グループ各社のノウハウで、物件購入から客付け、管理、そして出口の売却までを一貫して展開している。顧客は年収500~1500万円の層がボリュームゾーン。今年6月に仮想通貨対応の売買サービスとして「RCEP」を立ち上げた。仮想通貨投資家層の集客を狙う。
 代表取締役の渡成正忠氏は「2017年にビットコインが急騰し投資商品として台頭した。歴史の浅さもあってボラティリティーが非常に大きく魅力的」と指摘する。事実、ビットコインの価格は大きく変動している。2017年末には1ビットコインが200万円超まで高騰していたが年明け後からは一転下落、直近2018年7月は1ビットコイン70万円台で取引されている。約半年で最高値から6割以上値を下げたことになる。「億り人」にとって次のステップは築いた資産を、どのようにして安定運用に移行していくかにかかっている。
 そこで浮上しているのが不動産での運用だ。
 「仮想通貨投資家が築いた資産を別の投資で運用していくことは十分にありうる。不動産は仮想通貨、株式などと比較してもボラティリティーは小さい。投資のなかでもリスクは低く、『億り人』の運用手法としては適している」(渡成氏)
 実際、この分野への参入は徐々にだが増えている。直近ではスター・マイカ(東京都港区)も導入をアナウンスしている。ただ政府の動向や税金などでのハードルもあり「様子見」の企業も多い。
 渡成氏は「いち早く参入することで仮想通貨投資家層を引き入れたい」と話す。仮想通貨から生まれた「億り人」は不動産との接点を見いだせていないのが事実。この点を「課題」と認める。同社では仮想通貨投資家向けのセミナーなども開催していく予定だ。
 より長期のニーズも視野にいれている。渡成氏は「政府・日銀も日本円と連動したデジタル通貨の研究に力を入れている。遅かれ早かれ、このような通貨が様々な場面で使用されていくことになるのでは」と見立てを明かす。
 導入されれば普及の可能性はある。その前例となっているのが交通系ICカードの存在だろう。高額決済には不向きなものの、少額決済での利用は広まりを見せている。「仮想通貨の信用性や信頼性の高いデジタル通貨が発行されれば、急速に普及することが予想される。現時点から仮想通貨での対応を開始しておくことは、その時に向けた試金石となる」と渡成氏は長期・短期両様の戦略を練る。
 雨後の竹の子のように現れた「億り人」。仮想通貨投資家からの需要を開拓したい不動産事業者は数多い。その上でアートスペースの真骨頂は「デジタル通貨時代」に向けた試金石としても考えているところだろう。
 渡成氏の指した駒は、今は「歩」。しかし成れば「と金」以上の大化けを果たしそうだ。




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