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森ビル DX化で豊かな都市生活を実現へ 都市OS「ヒルズネットワーク」の活用をさらに加速
2021.06.07 11:25
大手デベロッパーによる「都市のDX化」が徐々に現実味を帯びてきた。今回は六本木・虎ノ門界隈で「街(ヒルズ)」の形成とタウンマネジメントを展開している森ビルの取り組みについて。開始した同取り組みを今後誕生予定の「虎ノ門・麻布台P」にも生かす計画だ。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が浸透するようになってから都市のDX化も進み、実現可能なところまで迫っている。「六本木ヒルズ」を始めとする「街(ヒルズ)」を舞台に都市のDX化を進めてきた森ビル(東京都港区)は、都市のデジタルプラットフォーム「都市OS」となる「ヒルズネットワーク」を開発。4月5日にインターフェースとなる「ヒルズアプリ」を公開しヒルズを利用する居住者やワーカー、来街者等を対象に順次サービスを開始した。
森ビルは1986年に開業した「アークヒルズ」以降、多様な都市機能が高度に集積したコンパクトシティの創出を通じて、シームレスで豊かな都市生活・ヒルズライフを提案してきた。2003年に誕生した「六本木ヒルズ」以降はタウンマネジメントの手法により、街に住み、働き、訪れる人々と街を繋げ、街のコミュニティの育成や育みに注力してきた。今回スタートした「ヒルズネットワーク」は、デジタルプラットフォームでそれらのヒルズを繋ぎ、森ビルが長年にわたって取り組んできた、より便利で、より豊かな都市生活・顧客体験の提供を加速させるものである。
具体的にどの様な取り組みなのか。まず居住者・ワーカー・来街者等のヒルズの利用者に対して、「ヒルズ ID」と「ヒルズアプリ」を提供。提供するID及びアプリにより、「六本木ヒルズ」や「表参道ヒルズ」、「アークヒルズ」等の管理・運営する複数のヒルズにおける様々なサービスをアプリ上で完結することが可能となった。また利用者の属性、街・施設の利用履歴、位置情報等のデータに基づいて、利用者一人ひとりに最適化された街(ヒルズ)の情報を発信し、利用者は自身に適した情報を受け取ることも実現。各利用者が必要としているサービスや機能をワンストップで利用でき、街をより複合的に、シームレスで堪能できることが最大のメリットである。
タウンマネジメント事業部の山本純也氏は活用事例について、「4月下旬からは森美術館や展望台東京シティビューのチケット購入や、オンラインチケットを表示させて直接会場に入場することもできるようになりました。更に夏以降には、イベントの申し込みや決済・入場も可能になる予定です。それぞれの利用者にとって興味・関心事に違いがあると思われますので、好みに適したセール情報やイベント情報、特典サービス等が届く仕組みです」と語る。
更に2023年完成予定の「虎ノ門・麻布台プロジェクト」や「虎ノ門ヒルズ」では、ヒルズネットワークによって統合された施設・サービスと利用者のデータ基盤をベースとしつつ、様々な最先端技術を実装することで街全体がワークプレイスやリビングスペースとなる、従来以上にシームレスな都市生活・ヒルズライフの実現を目指す。既に始まっているサービスにより、サービスのパーソナライズ化や情報のマッチング・カスタマイズ等は更に加速するだろう。収集データを基にしたアップデートも進めば、ワーカーとして通勤しつつ自身の生活や趣味に該当する情報等も「ヒルズアプリ」から受け取ることができることになろう。従前のワーカーは、どうしても通勤するオフィスが単なるワークプレイスと思いがちだが、今後はより自身に合った情報の収集と生活に合致した環境が堪能できることになる。