週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

NTTグループが保有する築47年のビルをコンバージョン 複合施設「BOIL」7月3日オープン

2021.06.29 12:20

 NTTアーバンソリューションズ(東京都千代田区)、NTT都市開発(東京都千代田区)、東日本電信電話(横浜市中区)およびリノべる(東京都港区)は、川崎市高津区でNTT東日本が所有する築47年の「NTT溝ノ口ビル」の事務棟のコンバージョンを実施した。運営を行うNENGO(川崎市高津区)とともに、地域に開いた複合施設「BOIL(ボイル)」として7月3日にオープンさせる。今回の事業は、NTT都市開発とリノベるが協業するNTTグループ保有不動産の1棟コンバージョンの第一号案件となる。
 「NTT溝ノ口ビル」は、1974年の竣工時から通信拠点として地域の発展を支えてきた。近年は業務効率化などにより事務棟内に余白が生まれており、これを生かして地域を支え続けたいという想いからコンバージョンを行い、これまでの「通信」発信基地局の機能に、地域参加型の「文化」発信基地局という機能を付加。バリューアップを行った。
 溝の口という地域とともにコミュニティも建物も成長し、ここに集う全ての人たちの想いが熱く沸騰する場になって欲しい、という思いから建物の愛称を「BOIL」と名付けた。キーとしたのは、ブレイクダンスを存分に楽しめるダンスタジオ。防音・防振の観点から閉鎖的なボックスになることを逆手に取り、他の各機能も「スタジオ」としてボックス状の設えを多用することで、さまざまなスタジオが集合するような雰囲気を創り出した。
 インフラ施設としてつくられたため構造躯体が堅牢で、9×24mという大空間の生成や、可変性が高いコンバージョンを実現できた。天井はスケルトンとし、高さを活かした開放的な空間を実現。またタイル貼りの重厚感のある外観に合わせ、無垢材を中心とした素材を選定している。既存の内装の名残を感じてもらうため、既存の天井高に合わせて壁を立ち上げるなど、建物の状態を活かして歴史を尊重すると同時に、新しいものを取り入れ、街に開くデザインとした。さらにアクセントカラーとして、解体工事の際に窓枠に現れたさび止め塗装の鮮やかなオレンジ色を採用。これをエントランスの庇や家具の塗色に取り入れた。
 立地する溝の口エリアは「ブレイクダンスの聖地」とも言われている。同施設ではスタジオを用意し、2024年パリ五輪の追加種目として注目を集めるブレイクダンスの発展を後押しする。また新しいカルチャー創出のひとつとして、エリア初のブルワリー(ビール醸造所)も今秋にオープンする予定。
 コンセプトである「gro-cul」は、成長を意味する「grow」と文化「culture」を組み合わせた造語。これからの時代に、地域住民とともにカルチャーを育み、成長し続け影響力を生み出せる街づくりをめざす。




週刊不動産経営編集部  YouTube