不動産トピックス
今週の一冊
2021.07.05 11:31
コロナ収束後どうなる 広範囲で分析
不動産業界大研究
著者:伊藤 歩
発行日:2021年2月25日
発行所:産学社
価格:1700円(税別)
コロナ禍に執筆された本書。「大手デベロッパー各社のトップも、言葉こそ慎重に選んではいますが、好立地のオフィス需要には全体的な自信を持っているようです」(はじめに)だそうだが、さて昨今の不動産業界は一生の就職先として魅力的だろうか。一昔前よりは高収入狙いの層が減りり透明性も少々改善、「アヤシい業界」印象は若干は薄れたろうか。
本書は就活生向けの業界分析解説本だが、就活生以外も読み応えのある一冊。著者は金融ジャーナリスト。ノンバンクや外資系銀行の経験を生かした各種記事は鋭さと分かりやすさのバランスが見事。数少ない本物のジャーナリストの一人だ。「ビジネス環境が一変した今こそ、その企業の価値が分かるタイミング」というが、コロナ禍のおそらく後半戦の今、あらゆる業界が正念場だ。
日本橋や虎ノ門ヒルズ、大阪、名古屋の大規模開発の背景から業界最新情報、不動産ビジネスの仕組みなど総論を丁寧にまとめている。今どきの「追い出さない」開発、業界のプレイヤー、「摂った摂られたのオフィスビル管理」など、読みやすく嫌味のない解説や分析は好感が持てる。「レインズを解放すれば仲介業者は不要か。AI云々の議論と似ているかも」分析はなかなか面白い。ご一読を。