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THIRD 野村不動産HDのCVCファンドが出資 3000万円を新規調達しユーザー満足度の更なる向上へ

2021.08.10 11:56

 不動産管理業界で業務効率化を支援するDXへの取り組みが進んでいる。大手デベロッパーでも有力企業に対しては出資などを通して支援。不動産管理業務のあり方が転機を迎えている。

 THIRD(東京都新宿区)は野村不動産ホールディングス(東京都新宿区)のCVCファンド「NREGイノベーション1号投資事業有限責任組合」を引受先とする新株予約権付社債3000万円を、7月30日に発行した。
 THIRDは20年8月に双日商業開発、東急不動産ホールディングス、森トラスト、東京建物、阪急阪神不動産のCVCファンドより資金調達済であり、今回の調達により累計調達額が4億7000万円となった。
 THIRDは15年の創業以来、建築技術および建築・機械・電気工事のコスト削減に関するコンサルタントとして「Clear Deal,Clear World」のビジョンを具現化してきた。またこれらの業務経験のなかで、従来の不動産管理業界において多重請負構造かつ紙ベースでの業務が常態化していることに起因して非効率な業務フローおよび手作業によるミスが生じていることに着目。これらの課題解決のため、19年に不動産管理業界のDX推進を後押しする不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」をリリースした。
 「管理ロイド」はペーパーレスでの簡単な管理、AIによる画像解析でミスを防止、各種報告書作成の自動化、不具合管理の自動化を提供してきた。このようなサービスが評価され、21年7月末時点で1050社以上が導入。導入した不動産管理会社のなかには最大で66%の業務工数の削減に至ったケースもある。
 前回の資金調達を行ってから、「AIによる自動検針」に限定した契約プランの導入、多言語化(日本語、英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語)、電子押印への対応を実施。また今回の資金調達によって「管理ロイド」導入拡大に資する人材採用などに加え、「管理ロイド」に蓄積されたデータを活用した修繕工事のAI自動見積査定機能の開発等に対して積極的な投資を行って、不動産管理業務の効率化、DXを進めていく。
 THIRD代表取締役社長の井上惇氏は「今回の野村不動産HD様の引受で、6社の大手不動産デベロッパー様が管理ロイドを応援してくださっている図式となりました。管理ロイドが不動産管理業界標準の不動産管理システムとして認知していただけるように、更なるユーザー満足度の向上を目指し開発を加速させます」と語る。野村不動産ホールディングスのDX・イノベーション推進部長の川合通裕氏は今回の出資について「THIRDは、高いAI開発力とコンストラクションマネジメント経験を生かした管理・修繕機能への高度な理解を生かして、現場のニーズをタイムリーにくみ取りながらプロダクト開発を行える稀有な存在であると考え、資本業務提携を行いました」とコメントしている。
 更なる拡大を期待することができそうだ。




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