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フェイスネットワーク 「グランストーリー」シリーズ展開 入居者を含めた三方良しの投資物件開発を目指す

2018.06.04 17:58

 世田谷・目黒・渋谷区の城南地区をエリアに、ユニークな不動産事業を行っている企業がある。フェイスネットワーク(東京都渋谷区)だ。ビル1棟を買い、賃貸管理も行う。今年3月には東証マザーズに上場している。
 同社は昨年から、「グランストーリー」シリーズを展開。物件によってプロデュースのコラボレーションを変えているのが特長だ。6月1日は、シリーズの5棟目となる「代々木上原」をオープンした。デザインは、ファッションディレクターの三浦大知氏。ビルのリノベーションを手掛けるのは、今回が初めてだ。
 家賃60~80万円の価格帯。しかし完成前に、借り手が次々と決まっている。他のグランストーリーシリーズも空きがない状態だ。
 ビルの入居者およびテナントは、20~40代の女性が6~7割。あえて城南地区を選ぶのは、情報発信力に長けた人が多いからだという。家賃にコストをかけても惜しまない。そういう人たちに、物件を提供している。20~40代の女性に愛される内装や居室をつくれば、おのずと男性が入居してくるという。そのため20~40代の女性をターゲットに、製品開発をしている。
 「内装については、デザイン性が高いだけではダメです。デザイン性が高く機能性が優れており、それを融合させている物件でなければなりません。キッチン台も既製であれば120cm。当社は物件によってオーダーで手掛けることもあります。あくまでも、利用勝手の良い物件を提供しているのです」(代表取締役 蜂谷二郎氏)
 つくり続けているのは「コンセプトマンション」。手がけるのは新築ビル1棟がほとんどだが、最近は中古ビル物件も買い取っている。
 不動産業界はこれまで既存のものを右から左へ売買し、手数料収入を得ることが多かった。同社は新築も含め、新しいコンセプトを持っているかを考えている。たとえリノベーションであってもそこからコミュニケーションが生まれ、新しい事業体をつくりだせることが必須のようだ。
 しかも同社は「ビジネスはあくまでも、消費者参加型であること」に軸を置いている。そして、これからのアーティストを生み出すことをテーマにしているという。
 例えば自由が丘の物件は、新しい音楽家をつくるため。もともと信託銀行の寮だった物件を購入。1~2階は18部屋の居室に、地下室5部屋を音楽スタジオにした。こうして、24時間音楽活動ができる住居が完成。オーナーが音楽家で、防音設備・スタジオをつくるための人脈があったことが幸いした。オーナー自身で地下の設備を整え、同社が2~3階の住居のリノベーションと内装デザインなどを含めた監修を行った。
 美容師の夢の実現にも、積極的だ。美容師は下積みを経ても、満足ができる働き方ができる人が多くはない。同社は扱うビルの中で、フロアの時間貸しや面貸しを行う。
 「そこで得た収入でマイサロンを持つまでのサポートを、金融機関と行っています。我々は自宅付きのサロンを経営する夢を描いている方々に、アプローチしたい。決して30代でビルを経営するのは、難しくないのだと」(同氏)。
 業績は順調に推移しているが、同社はこれからも城南地区中心でビジネスを展開していくという。エリアを広げないわけは何か。蜂谷氏は笑顔でこう語った。
 「企業の規模を大きくするために1都3県および近県、ならびに全国展開をしている方が多い。我々はそれを一切考えず、城南エリアを求める客を全国から集めていく。2月に竣工したマンションは福岡、5月竣工のマンションを購入したのは岐阜の人です。上場企業の地方役員が、『東京に物件が欲しい』ということで購入したようです。多くの企業は事業を大きくするためにエリア展開を広げようとしますが、我々はそれを求めていないのです」
 最後に蜂谷氏に、今後どのように事業展開を行っていくかをたずねてみた。
 「我々のビジネスは、win―win―winでなくてはならない。最後のwinはオーナーのクライアント、つまりマンションの住み手やテナントです。その方々から喜ばれ、選ばれなくてはなりません。それを叶えることが、我々の使命だと考えています」




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