不動産トピックス

クローズアップ 民泊編

2018.05.21 16:52

 住宅宿泊事業法の施行が迫るなかで、業界内では変化の兆しが現れている。そのなかで合法民泊展開に向けたソリューションが一大商機を迎えている。

民泊・簡易宿所向けシステムへの需要急伸 4カ月160件導入、1年で1000件目指す
エイジィ 代表取締役 高田圭氏
 6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行を前にして需要急伸の製品がある。エイジィ(東京都新宿区)が展開するセルフチェックインシステム「民泊イン」だ。
 「民泊イン」は民泊や簡易宿所などの宿泊施設において、IoT技術を利用したタブレット端末を使用することで、遠隔通話による本人確認や、宿泊者名簿の作成およびクラウドでの管理、宿泊約款などの提示と署名、パスポートの撮影・保存が可能となっている。同社では2016年8月より展開。まだ新法の内容が固まる前だったため、業界内でも先駆け的存在だった。
 ただ、これまでの契約数の伸びは遅い足取りだった。高田圭社長は「現在の民泊施設でも8割以上は違法状態。当時この割合はさらに高く、さらに大手事業者がコンプライアンス上、参入以前だったため、契約数が急激には伸びる状況ではなかった」と分析する。
 しかし今年に入って風向きが変わった。同社によると1月~4月末までの間に60戸に導入。今後導入が決まっている100戸を合わせると、短期間で計160戸に導入することになる。さらに問い合わせ件数も50件以上に上るなど、急激な成長を見せた。
 転機となったのは新法成立、そして施行間近となったことだ。高田氏は「上場企業をはじめとした大手企業の参入に道筋がついた。コンプライアンス順守のソリューションに寄与する『民泊イン』は、業界内でも先駆けて展開してきたことが優位に働き、引き合いは強い」と指摘する。新法では罰則規定も設けられているため、新規参入事業者だけでなく既存の民泊代行事業者からの問い合わせや導入も多いという。
 未だ動きが遅いのは個人事業主。「法律施行前のため『様子見』の姿勢も多い。施行後の運用を見て、今後の対策を練るのでは」(高田氏)。それでも「ゆくゆくは広がりを見せていくだろう」と見る。
 同種の製品ではホテル・旅館向けのものもあるなど、競合も多い。だが、市場では「民泊イン」が優位に立っているようだ。
 「ホテル・旅館向けは導入費用で、500万円以上の製品が大半で、民泊や簡易宿所ではとても割に合わない。『民泊イン』は一棟プランで初期費用10万円、区分ならば5万円から導入できる。民泊事業の収益に見合ったコストを提示できていることも大きいのではないか」(高田氏)
 同社では今後1年で1000件の導入を目指す。製品リリースから約2年。雌伏の期間を過ごした「民泊イン」に、ようやく時代が追い付いてきたようだ。

宅都ホールディングス 堺筋本町に簡易宿所型民泊施設開業
 不動産事業を展開する宅都ホールディングス(大阪市中央区)は6月15日に施行される「住宅宿泊事業法」(民泊新法)の解禁に伴い、不動産事業の更なる拡大を図るため民泊事業に本格参入することを発表。5月17日に簡易宿所型民泊施設「TAKUTOSTAY堺筋本町」を大阪府大阪市中央区にオープンした。
 同施設は地上9階、全13室の新築の民泊型宿泊施設で、建築当初は賃貸物件として運用想定していたものを簡易宿所として申請。キッチンや浴室、洗面所などは一般的な住居と同じ仕様のまま、民泊施設として生まれ変わった。訪日外国人観光客向けのインバウンドニーズをターゲットにしたフロアプランを構築していて、ダブルベッドが2つの間取りやシングルベッドが4つの間取りなど、家族や団体利用を見込んだ44~55㎡、最大5名まで収容できる数タイプの部屋を用意している。また最上階はメゾネットタイプとなっていて、最大で7名まで収容可能。
 今後は無人チェックイン運用を実現するため、鍵の受け渡しはスマートキー、チェックインはタブレットなどのオンラインチェックなどのツール導入を検討している。
 また緊急時の初動対応のため、警備会社とも契約を結んだという。

民泊セミナー来月5日開催
 日本橋くるみ行政書士事務所(東京都中央区)は代表行政書士・石井くるみ氏が執筆した『民泊のすべて―旅館業・特区民泊・住宅宿泊事業の制度と合法化実務』の刊行を記念し、解説セミナーを開催する。
 同書は近年、急激に変化し複雑化する民泊に係る法規制を図表、フローチャートを用いて解説した法律書。6月15日に施行される「新旅館業法」、「民泊新法」に対応し、宿泊業に関する最新の法律知識を学ぶことができる。
 セミナーは6月5日(火曜日)、15時から16時30分までの予定。場所は「銀座ブロッサム・中央会館」。参加費は無料だが、同事務所の公式ホームページより予約が必要。




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