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新日本管財 建物診断でビル経営のリスクを把握 耐震診断やアスベスト調査、デューデリにも対応

2006.09.25 17:22

 耐震強度、アスベストなど建物に関するユーザー意識の高まりによって、建物診断の需要が拡大している。現状の危険箇所や建物の維持保全に必要な費用を把握することができる建物診断は、ビルを長期保有するビルオーナーに向いているサービスだ。しかし、様々な企業がサービス提供を始めているため、実際にどのような診断業務を行うのか分かりにくい部分もある。ここでは多数の実績がある新日本管財(東京都中央区)の事例を紹介していく。

 総合ビル・マンション管理を手掛ける新日本管財は、建物診断業務を平成13年から開始し、200件弱の実績を有する企業だ。最近ではデューデリジェンスレポートの作成や耐震診断、構造設計評価、土壌汚染・アスベスト調査などにも対応している。
 建物診断業務は、赤外線カメラや超音波測定器、内視鏡など様々な専用機器を用いて、建物の構造躯体から仕上げ面、給排水・電気・防災設備などを診断するものだ。外壁タイルの赤外線カメラによる診断などは数十万円から依頼することができるが、本格的な総合診断業務には百万円から数百万円の費用が掛かる。
 同社の具体的な事例を見ていくと、昭和48年竣工の高円寺のマンション(84戸+店舗)では、外壁にクラックなどが生じていたことから建物診断業務を依頼され、調査の結果、コンクリートの爆裂がひどく外壁改修工事を実施することになった。
 「特にコンクリート製バルコニーの手摺部分のコンクリート爆裂がひどかったため、既存のバルコニー手摺部分を撤去し、アルミ製の手摺に交換しました。これによってバルコニーの重量を約700kgから70~80kgまで軽減し、耐震性向上に寄与させています」(建物診断部 部長 加藤久雄氏)
 通常建物診断では、各調査箇所があとどの程度維持できて、何時までに改善しなければならないのかが指摘される。同社の場合、改修工事もグループ会社で行うことが可能で、オーナーの希望により、外部の工事会社の選定業務も行う。
 ちなみに、高円寺のケースでは、入札および工事監理を行っており、施工業者の選定に関しては7~8社から入札方式で選定している。
 また、千葉県市川市の540戸のマンションのケースでは、建物診断業務により排水管の劣化が判明した。内視鏡で調査したところサビなどが蓄積して配管が詰まる寸前だったという。このマンションは維持保全がしっかりしており、10年周期で外壁改修などを行ってきたため建物外観に問題は無かったが、設備配管内部の状態までは把握できていなかった。
 「建物診断は建物の維持・保全にどの程度の費用が必要なのかを判断するために有効な取り組みです。市川のケースなどは放置しておけば排水管が破裂する可能性も否定できなかったと思われます。その場合は配管を交換することになっていたでしょう。今回はトラブルが発生する前に建物診断により問題が発見されたため、配管内の清掃とライニング工事で済みました」(加藤氏)
 最近では耐震診断やアスベスト調査結果などテナント企業が情報開示を要求するケースもある。
自社のビルにどの程度のリスクがあり、どのような対応を行うのか、また行ったのかということがテナント誘致や満足度にも影響してくるだろう。早めの対応が望ましいのではないだろうか。ここにこそ建物診断の出番があると言えよう。




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