不動産トピックス
【今週号の最終面記事】今年・来年竣工予定 注目の新築ビル
2022.08.08 10:27
来年竣工予定の大型ビルは多い。他のビルに埋もれないためには、差別化や独自性が必須。「田町タワー」は新しいオフィス空間の提供として、ウォーターガーデンを設置。一般執務空間と緩く区切り、新しい空間提供を行う。一方「Kタワー横浜」は、音楽アリーナやインターナショナルホテルと同じ敷地内に立地。天井高の特別フロアを設けることでショールームやラボ等のニーズに応える。
3社合同での建替え事業 来年6月竣工予定 大型複合ビル「田町タワー」
直接外気を取り入れウォーターガーデン
JR「田町」駅から徒歩2分に立地していた「第一田町ビル」と「徳栄ビル」。共同での建替えプロジェクトで、来年6月末に「田町タワー」が誕生する。
建替えを行う双方のビルは築50年を経過。ビル自体の物理的劣化に加え、設備の老朽化による競争力の低下や設備更新費用の増大に懸念を持ち、田町ビル(東京都港区)と徳栄商事(東京都港区)は個々に建替えを検討。一方隣接することから合同建替え等も視野に入れた合同勉強会を継続していた。近年都では国際戦略総合特別区域の設定等で、同地区の開発を誘導する動きもあった。田町ビルの親会社である三菱重工業(東京都千代田区)も、グループ会社を含めた保有資産の価値及び収益性の向上を目指していた。規模拡張での共同建替え案に徳栄商事が同意。3社による建替え事業が開始された。既存ビルの解体は2019年6月から。21年2月から新築工事に着工し、来年には延床面積約11万2500㎡の大型ビルが竣工する。
「田町タワー」は、高層ビルでは希少な直接外気の取り入れが可能で、新しいオフィス空間となる「ウィンターガーデン」を設置。一般執務空間と緩く区切られており、新しいオフィス空間として提供する。基準階専有面積は約2612㎡(約790坪)。複数フロア専有テナントは内部階段の増設が可能な構造となっている。また4階にはオフィス入居者向けの緑豊かな共用ラウンジを設置。フリースペースの他個人ブースや打ち合わせ等で使用できる会議室も設置する。外構部にもサンクンガーデンやベンチなど、フリーに座って過ごせる空間を確保する。機能性に加えて、アクセス性も強み。JR「田町」駅(山手線・京浜東北線)は、ペデストリアンデッキを使用すれば2分で到着。地下鉄「三田」駅(都営浅草線・都営三田線)も直結しており、合計4路線が利用可能。羽田・成田空港や新幹線へのアクセスも容易だ。
BCP対策に注力 9日間の非常用電源
田町タワープロジェクト室 室長の長谷川豊氏は「BCP対策も注力しました。免震+制振のハイブリット構造(心棒型制震システム)を採用し、最低9日間の非常用電源供給が可能です。当構造で制振ダンパー等の数量を減らし、より広いオフィス空間を確保。かつ、それぞれの長所を生かした新しい構造で、長周期/長時間地震動にも従来同等の冗長性を確保しています。電源供給方式は、スポットネットワーク3回線受電方式により電力会社からの給電1回線が遮断されても他の回線から受電が可能。更に電力会社からの給電停止(停電)時の対応で、ガス・油どちらでも運転可能なデュアルフェール発電機を備えています。大型のオイルタンクと合わせて、最低9日間の非常用電源供給が当ビルの強みです。テナント様が独自の発電機を設置できるスペースも確保しています」と語った。
昨今はBCPに加え、SDGsへの取り組みも重要視されている。同プロジェクトでも指定木材の利用で、「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」を表彰。更に太陽光発電や高反射ブラインドによる熱負荷低減。雨水再利用。再生可能エネルギー由来電力の導入などを行っている。企業は同ビルに入居することで、SDGsにも貢献することとなる。
音楽文化の発信拠点Music Terrace
ケン・コーポレーション(東京都港区)はJR線「横浜」駅から徒歩9分(現在計画中の歩行者デッキ完成した場合)、みなとみらい21地区にて音楽文化の発信拠点「Music Terrace(街区名称)」を開発している。
街区は2万人を収容可能な世界最大規模の音楽アリーナ「Kアリーナ横浜」、国内外のゲストを招き入れるインターナショナルホテル「ヒルトン横浜」、隣接して建つ予定の中規模クラスのハイグレードオフィスビル「Kタワー横浜」、憩いや多彩なエンターテインメントにも活用できる広場などを整備する。街区全体で3万㎡強あり、完成は2023年7月末予定。ミュージックシティ構想(音楽を発信する街)をコンセプトに開発を進めており、従前に開業した「ぴあアリーナMM」や「KT Zepp Yokohama」等の施設と一緒にみなとみらいのブランド形成や底上げにも繋げる予定だ。
「Kタワー横浜」は、オフィス、店舗、駐車場等で構成された地上21階の複合ビル。延床面積は約3万㎡で、貸床面積は半分の約1・5万㎡。「ヒルトン横浜」に隣接していることもあり、エントランスホールや共用部等はラグジュアリーなデザインを採用。天井高5・8mのエントランスホールでは立体感あるモールディング装飾を施す。エレベーターホールにも煌びやかな装飾を取り入れるなど、随所に遊び心と華やかな雰囲気を演出する。
オフィスは整形735㎡ 3階は天高・特別フロア
オフィスは整形の735㎡(222坪)。コア機能を片側にまとめることで、窓からはベイエリアの眺望が堪能できる。16階以上は、タワーパーキングと低層EVの上部スペースも利用できる。+201㎡となり、計936㎡を使用することが可能だ。更に3階のみ天井高4・5mの特別フロアを用意。天井高が必要なショールームやラボ等の特殊なニーズに応える。みなとみらいは従前からラボニーズの高い地域であり、ラボ兼オフィスで使用する企業が集積する。同オフィスに移転した企業の研究開発等を後押しする姿勢だ。
災害対策やBCP対策も注力する。特別高圧受電によるループ受電(常時2回線受電)方式を採用。万一の停電時でもバックアップ回線で安定的に電気を受電する。非常用発電設備も装備し、停電時でも共用部の照明やトイレ、エレベーターへ電力供給も可能だ。エリア全体でも災害に備えている。同地区では地盤改良・液状化防止対策を実施。一定間隔で「砂の杭」を地中につくるサンドドレーン工法を採用し地盤沈下に備える。また大型地下給水タンクが4基設置され、50万人×3日分の飲料水を確保する。
横浜支店・支店長の黒岩弘幸氏は「みなとみらいは1プレート300坪以上のオフィスが多く、300坪以下の中規模クラスは限定されます。在宅勤務やリモートワークを採用したことでの、既存オフィスの見直しでの移転に好ましいでしょう。自社のオフィス環境を見直しつつ、外への宣伝効果やライブオフィス等も意識した拠点に選択しては如何でしょうか」と述べた。