不動産トピックス

【今週号の最終面記事】循環型社会の実現へ 進化するオフィス事情

2022.11.21 16:37

環境貢献につながる競合物件との差別化 高まるコスト意識にも対応
 国連気候変動会議(COP27)が、今月エジプトで開催された。差し迫った問題となっている地球温暖化に対し、先進国である日本は率先してCO2削減などの温暖化対策に取り組まなければならない。環境への貢献は企業のESGという観点においても重要視されるようになり、オフィスビルではこうした企業側のニーズへの対応が求められている。

リユース家具を活用 三方良しのセットアップオフィス  日鉄興和不動産(東京都港区)は、循環型社会の実現に向け環境に配慮した新しいオフィスづくりの提案として、昨年9月に竣工したオフィスビル「BIZCORE神田須田町」において、「サーキュラーオフィスメソッド」を活用したセットアップオフィスを開設。リーシング活動を積極的に行っている。
 「BIZCORE」は、日鉄興和不動産が展開している中規模ハイグレードオフィスブランドで、これまで都内の主要オフィスエリアで5物件を竣工させ、今月には6物件目として「BIZCORE東神田」の竣工を控えている。あらかじめ内装工事を実施した上でテナントに貸し出すセットアップオフィスを本格的に導入するのは、同社としては「BIZCORE神田須田町」での取り組みが初となる。商品企画に携わった賃貸事業本部の谷口聖氏は次のように話す。
 「当社ではこれまで、オフィス移転をトータルサポートするコンサルティングサービス『オフィスメソッド』を展開してきました。このノウハウをベースに、オフィス什器のリサイクル・リユースを行うオフィスバスターズと協業し、良質なリユース家具を活用したセットアップオフィスの提案を行うのが今回のビジネスモデルです」
 セットアップオフィスは、オフィスを借りるテナント企業にとって移転時の初期費用を抑制できるメリットがある。加えて「サーキュラーオフィスメソッド」では、退去時に不要となった家具類をオフィスバスターズが買い取るため、退去時のコスト削減も期待できる。日鉄興和不動産は新品のオフィス家具を購入するより安価でセットアップオフィスを構築することができ、賃料アップを見込むこともできる。オフィスバスターズは在庫商品の活用が見込めるほか、「サーキュラーオフィスメソッド」を同社のショールーム代わりに利用することが可能である。循環型社会に貢献すると同時に、関係する三者にとってもメリットの多い「三方良し」のビジネスモデルであるといえるだろう。前出の谷口氏は「従来の賃料水準に比べ坪あたり2000円アップできれば、およそ3年で投資回収が可能なビジネスモデル」ですと述べる。
 中規模ハイグレードオフィスビルは需要の高まりに比例し、都心のオフィスエリアでその数を増やしている。一方で競合物件の増加に伴って物件間の競争も激化している。特に「BIZCORE神田須田町」が立地する神田・秋葉原エリアは多くの中規模ハイグレードオフィスビルが立地するいわば「激戦区」。今回の「サーキュラーオフィスメソッド」には、そうした激戦区で勝ち抜く物件の競争力向上も背景にある。
 「『BIZCORE神田須田町』の10階約50坪のフロアに、執務スペースと2タイプのミーティングスペースを中心としたセットアップを行いました。あえて汎用性の高いレイアウトや内装デザインを採用することで、より多くの企業のニーズに対応できる空間を目指しました」(谷口氏)
 同社では神田須田町のほか、今月竣工の「BIZCORE東神田」でも「サーキュラーオフィスメソッド」を活用したセットアップオフィスの導入を検討しているとのこと。今後も利用企業の反応を見ながら他の「BIZCORE」シリーズ物件でも積極的に導入を進めていく考えだという。

企画・設計からリサイクルまで 限りある資源生かした商品展開
 オフィス家具メーカー大手のオカムラ(横浜市西区)では、「サーキュラーデザイン」思考による製品開発を展開。「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の考えに基づき、製品の企画・設計から調達・製造・販売・メンテナンス・再利用・リサイクルに至るまでの製品ライフサイクルの中で、限りある資源をより長く有効に使用し、廃棄物の発生を最小化するものづくりを目指している。その実現に向け、同社は独自のリサイクルインフラを確立し、使用済みの同社製品を回収・分別して新たな製品の材料の一部として使用する「循環型の製品」の開発に取り組む「Re:birth(リバース)」プロジェクトを開始した。このプロジェクトに基づき、オフィスチェアとして使用済みの樹脂脚を回収し、分別・粉砕を経て、再び新たな樹脂脚として利用するリサイクル脚を開発。タスクシーティング「Potam(ポータム)」での活用などでの展開を進めている。
 同製品は、環境面にも機能面にも配慮したオフィスチェア。今回、「リバース」プロジェクトで開発したリサイクル脚を使用したサーキュラーモデルをラインアップしている。張材には廃棄生地をリサイクルした再生材使用率100%の「Twill(ツイル)」が加わり、リサイクル素材から生まれた樹脂脚や張材を採用することで循環型経済を実現し、環境負荷低減に貢献するとしている。
 また、商品は配送時に製品を分割した状態で梱包・出荷することで、運搬における配送効率や燃費が向上し、CO2の排出を抑制。従来の完成品を梱包し、出荷していた時に比べトラックへの積載効率を50%向上させることができるという。
 オカムラでは、看板商品の1つであるタスクシーティング「Contessa(コンテッサ)2.」においても、サステナブルな素材を用いたサーキュラーモデルを新たに追加、販売を行っている。このサーキュラーモデルは日本の使用済み漁網をリサイクルした再生ナイロンを、製品の背と座の樹脂部分に使用。張材には、この再生ナイロンの糸と再生PET糸を編み込み同社が独自開発したニット素材「Re:net(リネット)」が使用されている。また、使用済みのペットボトルからできたリサイクル繊維を原料とし、同社独自のメッシュ素材を新たに開発、背面に使用している。同社の最新製品を紹介するイベントに出席した代表取締役 社長執行役員の中村雅行氏は「サーキュラーデザイン思考による商品展開という新たな試みを通じて、社会全体で目指すより良い循環づくりに貢献していきたい」と述べている。




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