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<開発新潮流> 三井不動産 事業主の意思を主張する建築仮囲い急増 景観・環境事業の透明性などに配慮 仮囲いはコミュニケーションボードに

2006.08.28 17:25

 白いパネルが当たり前だった建築現場の仮囲いに変化が生じている。街に溶け込むデザインや環境配慮、事業の透明化など、各社の取り組みを紹介する。
 三井不動産(東京都中央区)は、中央通り沿いで解体を始めた三井第三別館の建築仮囲いに、街からのメッセージを書き込んだ腰板塗り壁風の外装を施した。日本橋をイメージする和のデザインを取り入れて、盛り上り始めた「日本橋再生」の機運を後押しする。解体工事は約半年間続くため、同プロジェクトに携わる日本橋街づくり推進部部長の中川俊広氏は、「周囲の街並みにできるだけ悪影響を与えないように配慮すると共に、街の変化を予感させるメッセージ性を意識して建築仮囲いを設置しました」と語る。なお、同社では昨年竣工した日本橋三井タワーの工事でも、江戸時代からの日本橋の変遷をプリントしたパネルを設置している。
 建築仮囲いをアート化する動きも盛んだ。銀座や表参道などに出店するブランドショップの新築工事では、ブランドをイメージしたグラフィックや装飾が施されるケースが増えている。近隣の学生達にキャンパスとして開放するなどの取り組みも盛んだ。建築仮囲いをグラフィックシートでデザインするドットコミュニケーション(東京都練馬区)によると、公共に配慮したデザインの製作や広告媒体として利用を検討する事業主が増えているという。
 一方、三菱地所(東京都千代田区)が進める丸の内エリアの再開発プロジェクトでは、「新丸の内ビル」や「(仮称)三菱商事ビル・古河ビル・丸の内八重洲ビル建替計画」の建築仮囲いに壁面緑化を取り入れている。数mおきに、通常の白い仮囲いと緑化パネルが交互に配された壁面は、殺風景になりがちな工事現場に潤いを与えている。緑化パネルを提供する杉孝(川崎市川崎区)によると、仮囲いを緑化するタイプの商品は既に20現場程度に採用されており、環境意識の高まりとともに、引き合いが増加しているのだという。施工に要する費用は、販売する場合で9万円/㎡、レンタルの場合は1日当たり、80円/㎡。管理などのアフターケアにも対応する。
 大阪府守口市で三洋ホームズ、東急不動産、大和システムが計画を進めている「サンマークスだいにち」(465戸)では、「見られて困るものはない」という考えのもと、透明なポリカーボネート製仮囲いを採用した。同時にネットワークカメラを設置し、インターネットで工事現場をいつでも見られるように情報公開している。構造計算偽造問題の影響で高まった、建築に対する消費者の不安を払拭することが狙いだ。全ての壁面というわけではないが、通りに面した大部分に透明パネルを設置した。
 街と建築現場を隔てる壁は、事業主の意思を反映したコミュニケーションボードとして進化している。また、「景観」「環境」「事業の透明性」などを映し出す「鏡」のような役割を果たす。各社が智恵を絞った仮囲いを眺めて歩くのも、街散策の楽しみになりそうだ。




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