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クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド アジア太平洋地域オフィス市場アウトルックを発表
2023.01.02 14:53
グローバル不動産総合サービス会社のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(イリノイ州シカゴ、日本本社 東京都千代田区、以下C&W)は、アジア太平洋地域オフィス市場アウトルックを発表。新規供給の増加、むらのある需要、ハイブリッド・ワークモデルに係る経営判断の遅れなどが懸念されながらも、引き続き底堅いパフォーマンスと予想する。
同社が発表したサマリーによると、アジア太平洋地域における2022年通年のオフィス需要は前年比小幅増、65msf(百万スクエアフィート)に達すると予測。また2023年にはさらに9%の床需要増、それも新規供給増によって相殺され、空室率は上昇する見込み。
需要の面では2022年通年で65msfに達し、2021年に記録した63msfをわずかに上回ってコロナ禍の最低値(約36msf)を大きく上回ると予想。2023年は前年比9%増(71msf)と緩やかな改善が見込まれ、その後2026年までは年率5%程度で安定的に成長するのではないかという。
新規供給の面ではコロナ禍により延期されたプロジェクトが稼働し始めて供給が増加、ネット需要もいくらか相殺されると展望。「2023年アジア太平洋地域(APAC)、オフィス市場アウトルック」において地域内の合計11市場、25の主要都市を追跡調査、2022年の新規供給は112msfで来年には130msfの供給増が見込まれる。なお2024年以降の供給は年間平均100msf未満に減速すると分析している。
空室率は同地域の大半(68%)の市場での空室率は来年には弱含み、半数以上(56%)は2026年には現在より空室率は上昇すると展望。一方でホーチミン市やインド、中国本土の一部の主要都市など供給が活発な市場では空室率が4%ポイント以上上昇し、オーストラリア地方都市の市場の空室率は緩やかに低下との予測を立てている。賃料は東京市場は-年率3・6%と減額の一方、メルボルンは同5%の増額の見通しだ。地域全体としては2024年以降、景気回復と新規供給の鈍化に伴い、賃料の伸びも勢いを増すのではないかと言及している。
同社の分析責任者は、インドとフィリピンの両国が軸となって、IT―BPO/BPM分野からの新規参入業者が今後の床需要を部分的に牽引していくと分析。一方で、賃料増加率が物価上昇率を上回り実質珍重の上昇につながることはないだろうかと懸念する。
「この地域の多くのオフィス市場で、少なくとも短期的には賃料の伸びは比較的限定的で、現在の高いインフレ率に匹敵するような高い賃料成長は望めないでしょう。2024年以降は、新規供給が減速し、景気回復に伴って床需要が改善するため、多くの市場で賃料の回復が予想されます。特に新興市場では、若い労働力の人口動態やサービス産業発展への注目が高まっており、オフィススペースに対する需要が構造的に高まっています。これらの要因は、市場やサブマーケットによって異なるものの、地域全体としては引き続き良い方向に向かうと考えてよいでしょう」