不動産トピックス

【今週の最終面特集】企業の魅力を高める不動産テックの底力

2023.05.29 10:15

働き方の変化に対応する可変性高い新オフィス ワークスペース管理ツールを自社で開発
社員同士のエンゲージメントを強固に 3つの要素をもとにオフィスを構築
 従業員が働きやすい環境を整備することは、企業の成長にも大きく作用する。とりわけ昨今は、仕事をする場所を自由に選べる働き方として「ABW」の考え方が浸透してきた。また福利厚生といったサービス面においても従業員の満足度を高める方法がある。いずれの手法も、キーポイントは不動産テックである。

ホテル事業のノウハウ生かし居心地の良い空間を整備
 森トラスト(東京都港区)は今月10日、本社事務所を「虎ノ門2丁目タワー」から「東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー」へ移転した。「東京ワールドゲート」はオフィス、ホテル・サービスアパートメント、レジデンス、レストラン、ショップなどの機能を集約した複合施設で、中核となる「神谷町トラストタワー」は2020年3月に竣工。地上38階建て、延床面積約6万坪の大規模ビルである。
 同社は2021年に、オフィスづくりの自由度を高め理想とするオフィスの実現を目指す新オフィスビジョン「DESTINATION OFFICE(デスティネーションオフィス)」を始動させた。今般のコロナ禍を通じて、働く場所のバリエーションが大きく広がった。一方、働く場所が分散したことで社員間のコミュニケーション不足やエンゲージメント(結束)の希薄化といった新たな課題も、多くの企業で浮き彫りとなった。そうした中、同社は今後のオフィスについて「ワーカーを惹きつけ、ワーカーが自然と集まる目的地」となることが求められると分析し、「DESTINATION OFFICE」によるオフィスづくりの支援を開始。今回の新オフィスでも、このオフィスビジョンの考え方に基づいたデザインやレイアウトが採用されている。
 「DESTINATION OFFICE」では、ワーカーを惹きつけるオフィスの要素として、「ENERGY」(互いの熱量を高め、伝播し、増幅させることで組織を進化させる場所)、「SYNERGY」(コミュニケーションや文化の発信を通して、共感や一体感を育み、共創を推進する場所)、「COZY」(居心地の良さと適度な刺激によって、心身ともに満たされ、自分らしくいられる場所)の3つをカテゴライズ。新オフィス内の各ポイントで、この3つの要素が散りばめられている。例えば、来訪者を迎えるロビースペースは、森トラストの事業の柱であるホテル事業を象徴するような、ホテルライクな空間を目指し設計が行われた。同社広報担当者によれば「このスペースは社員が気分を変えて仕事をする際にも利用することが可能」とのことで、来訪者・社員の双方にとって「COZY」な空間を実現することになる。また、執務スペース内に設けられた社内ラウンジは、交流を促すスペースとして機能する(SYNERGY)だけでなく、間仕切りを取り払うことで全社イベントにも対応。社員の一体感を醸成し社員同士の熱量をぶつけ合う場所(ENERGY)にもなる。執務スペースはフリーアドレスを採用しており、他部署との横断的なコミュニケーションを促す。一方で各部署の拠点となる専用席を配置したシマ「BASE」があり、部署・チームの連携にも配慮した。座席のフリーアドレス化に代表されるように、新オフィスは時代や働き方の変化に対応するため、森トラストでは固定化される要素は最小限にするアジャイル(俊敏)なオフィスづくりに注力している。今回の新オフィスにおいても、働き方の変更や部署・社員の増減によってレイアウト変更などを実施し、可変性の高い空間は全体の約80%にのぼる。
 このアジャイルなオフィスづくりを可能としているのが、同社が昨年開発したワークスペース管理ツール「WORK AGILE(ワークアジャイル)」である。同社初のSaaS事業で開発されたこの「WORK AGILE」は、オフィス内の座席の予約機能や社員の居場所の把握をリアルタイムで共有できる管理ツールで、座席の利用状況などのオフィス空間に関するデータの収集・分析機能を備えていることから、働き方や勤務制度、オフィスレイアウトの変化にも迅速に対応。システムは登録後すぐに利用可能な点も大きな特徴で、オフィス内の無駄なスペースをなくし、社員が集まりやすい空間づくりにも貢献するとのことだ。

企業の生産性を支援するビジネスオートーメション
日本はほかの先進国に比べ導入が遅れる結果に
 業務の自動化を支援するDX企業・UiPath(日本法人・東京都千代田区)は、日本を含む8カ国の労働者を対象に実施した調査「ビジネスオートメーションの活用状況と今後の展開についての調査 2023年版」の結果を26日に発表した。
 ビジネスオートメーションは、事務や経理といったデスクワークにおいて人の手によって行われてきた業務を、先端技術を用いて自動化するというもの。今回の調査では、既に職場でビジネスオートメーションを利用しているとの回答が日本では15%と、調査対象国の中で最も低いことが分かった。総務省統計局が発表した「労働力調査(基本集計) 2022年(令和4年)平均結果」によると、労働力人口は前年比5万人減少となっており、日本で人材不足が深刻化していることが判明している。今回の調査では、日本の回答者の52%は効率的に業務遂行するのに必要なリソースや支援がないと回答している。このような状況を改善するリソースや支援として、技術的なツール・ソフトウェア、技術的サポートに期待が集まる回答となった。
 また、「業務のどのような点を変えたいか」という質問に対しては、日本で最も多かった答えが「職場環境のさらなる柔軟性の向上」である一方、次点が「手作業の時間短縮」、3番目に「日常業務の管理にかかる時間の短縮」が挙がっている。「重要な業務に集中する時間を増やす」という回答も多く、業務効率の改善に期待する声が高まっている様子もうかがえる。




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