不動産トピックス

クローズアップ 緑化応用編

2023.06.19 10:25

 ビルの緑化というと、建物内外に観賞用の植栽を配した光景をイメージするかもしれない。外構部に憩いの場を整備したり、共用部に潤いを提供したりする役割のほか、昨今では空室活用や省エネなどに有効な「緑化」も出現している。

GJ-JAPAN 空きテナントで野菜を栽培できるキット
DIYで施工可能
 LED照明の販売を手掛けるGT-JAPAN(神戸市北区)は、室内の空きスペースで野菜栽培ができるユニークな商材「ネオテラス」を取り扱っている。 昨年から販売を行い、これまで居酒屋やバーといった飲食店や大学などに導入している。
 同製品は特許を取得した水耕栽培装置。LED照明の光を用いて野菜を育てるもので、肥料と空気を対流させる仕組みによって活性化させ、栽培できるというもの。育つ野菜の大半はレタス。付属の肥料には窒素やリン酸などさまざまな微量要素を適量に含んでいるため、甘味のあるレタスが育つという。
 製品の特長は4つ。1つ目は、DIYで施工できることだ。組み立てが必要な5段の棚型キャスター付きのキットになっており、1台あたり、1~2時間程度で組み立てられる。部材の接着やLEDの接続工事も必要ない。
 2つ目は、容易に定植ができること。パネルに株穴が設置されており、ネットカップに培地をセットするだけでできる。緻密な設計により、苗が穴に落ち込むことはない。
 3つ目は、栽培槽とパネルに凹凸がないため、藻や汚れが付きにくく、スポンジで拭くだけで汚れが取れる。同社の検証によると、掃除に要する時間が他製品と比べて7分の1だという。伊﨑臣俊社長は「従来の製品では必要だったカップの掃除や、収穫後に根がからんだカップの取り外しの手間が掛からない」と話す。
 4つ目は消費電力が少なく栽培できることだ。植物育成に効率的な電力量のバランスを集約することで低コストで質の良い野菜を生産できる。
導入のハードル下げ需要獲得目指す
 これまで水耕栽培はコンビニや大型スーパーなどが工場で大量生産する大型装置しか市場になく費用が膨大にかかるため、企業においてもトライアル導入するハードルが高かった。伊﨑社長は手軽に試行できる商品を知ってもらおうと同製品の取り扱いに着目。「効率が悪くデータが取りにくい土耕栽培と比べて、水耕栽培は天候に左右されにくい上、データも取れる。しかし、中小企業が新事業で取り組んだり、空きスペースを活用したりする製品が存在しなかった。そこで、簡単に実験や実証して知ってもらおうと開発した」(伊﨑社長)。
 1台あたりの金額は59万8000円(税別)。栽培株数は最大200株。電圧および消費電力はAC100V。LEDは360W。ポンプは50Hzでは32・0w、50Hzでは38・5w。72㎡の広さの場合、掛かる費用は約990万円(15台設置で算出。LED込み、初回の肥料を含む)。通販サイトから購入可能。伊﨑社長は「まずは商品の周知をしていき、ビルの空きテナントや、商業施設の空きスペースなどさまざまな場所で導入してもらいたい。入居者サービスや福利厚生、販売など多様な活用ができると自負している」と述べた。

駐輪場の屋上を緑化、屋根材の長寿命化も
 ダイケン(大阪市淀川区)は、「駐輪場屋根上 緑化仕様」を販売している。駐輪場屋根上を緑化し、CO2削減やヒートアイランドの緩和に貢献する。
 緑化に使用する「常緑キリンソウ」は乾燥や暑さに対する抵抗力が強く、耐多湿性や耐寒性にも優れる。苗を専用の袋に入れる袋方式で、土壌の流出・飛散も防ぐ。保水性能が高く、雨水で生育可能。袋は防草シート製で雑草が侵入しにくいため剪定の必要もなく、手入れはほぼ不要。
 植物があることで駐輪場の屋根の日射量が軽減。植物面・土壌面からの水分蒸発などにより温度上昇も抑えられ、屋根材の劣化を防止し長寿命化が期待できる。降雨時には雨粒が植物に当たるため、雨音を軽減させる効果もある。
 施工は屋根の上に防草シートを敷き、袋に入ったキリンソウを載せるだけだが、ダイケン製CY-HFK型「奥行柱ピッチ1800mmタイプ」を設置することが条件。

「室外機芋緑化」で空調効率アップ 収穫したサツマイモでビル内の交流促進も
 東急不動産(東京都渋谷区)は、ビル屋上での菜園活動「Vegetable Smiles(ベジスマ)」に、空調設備の省エネが見込める「室外機芋緑化システム」を取り入れた。
 同活動は、同社が保有するオフィスビルの屋上やテラスで、約10年にわたって実施している菜園活動。これまでにトウモロコシやブドウなど50種類以上の野菜や果物を栽培して収穫し、加工品づくり等のイベントによるテナント同士のコミュニケーション醸成や、ビル内の飲食店舗のオリジナルメニュー作成などに繋げている。
 「室外機芋緑化システム」は、空調設備のエネルギー削減を目的とした取り組み。空調室外機の周りをサツマイモで緑化することで、日陰効果や蒸散作用により周囲温度を低下させ、機器の負荷を軽減させて消費電力を削減する。サツマイモは成長が早く、2カ月程度で完全繁茂となる。害虫にも強く対候性もあり、自動給水の潅水装置による管理が可能で人の手がほとんどかからないなど、オフィスビルにおける緑化と相性がよい植物。
 副産物としてサツマイモを収穫することができる。2022年度は渋谷肥料(東京都渋谷区)と協業して、「ウノサワ東急ビル」など3施設で、テナントや近隣の小学生を招いた収穫イベントを開催した。収穫された約300kgのサツマイモは、イベント参加者への配布や、焼きいも、クッキーなどに使用した。
 今年は、6月上旬に植え付けを実施し、10月頃に収穫を予定。従前より行っていた「ベジスマ」と合わせてイベントを展開することで、テナント同士のコミュニケーションの促進と省エネを両立するねらい。




週刊不動産経営編集部  YouTube