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「福岡ガーデンシティ」に敷金フリー区画 1室5000万円の敷金を無料に
2024.02.05 11:04
敷金減額サービスを提供する日商保(東京都港区)。昨年春に竣工した「福岡大名ガーデンシティ」で、「敷金フリー区画」の募集を開始した。
日商保は「敷金半額くん」などのサービスを通し、スタートアップや若い企業の支援を続けてきた。敷金の減額を行うことで、ビルの付加価値向上や成長力のある企業の入居などの狙いがある。
導入に至った「福岡大名ガーデンシティ」は、積水ハウス(大阪市北区)等による大規模再開発により誕生。延床面積約9万400㎡、地上25階地下1階建てと、福岡エリア最大級のオフィスビルとなる。今回、対象となる区画は7階フロアの3区画。それぞれ386・57~525・32㎡、1室あたり約5000万円分の敷金を払わずに入居できる。
福岡の市街地では、「天神ビッグバン」、「博多コネクティッド」といった建物の建替えが進められている。「福岡大名ガーデンシティ」以外にも、数年で多くのオフィスビルが完成。今後も大規模クラスの供給が予定されている。供給量が増えるとともに、周りのビルとの差別化、空室リスク対策は急務となってくる。
経営企画部の権藤豪氏は「新築のハイグレードビルはとりわけ賃料が高く、借りたくても借りられない事業者は多い。『福岡大名ガーデンシティ』では、初期費用が通常の半額まで下がるという試算のもと、実験的に敷金無料を3区画のみ適用しました。福岡県外からの拠点拡大ニーズや、外資系企業、IT系などの上場を目指す若手起業家らなどの引き合いを想定しています」と話す。
日商保では入居時のみならず、入居期間中の審査も実施することで、オーナーの安心感につなげている。大規模ビルの供給が続く中、リーシング戦略として長期のフリーレントを設定する例も少なくない。「福岡大名ガーデンシティ」では、オーナー側の企業成長を支援する意向から保証料をオーナー負担としている。土台のしっかりした審査ノウハウを考えると、フリーレントよりも効率的と考えられる。
昨年11月には、敷金サービスを導入するオーナーと入居企業をつなぐマッチングサイト「Growth Office」の提供を開始している。敷金フリー/半額オフィス物件を中心に、居抜きやセットアップ物件など、約750件のオフィスを掲載。同サイトでは、適正賃料のシミュレーションも可能にした。オーナー、テナント双方に寄り添ったサービスの展開は、さらに拡充していく構えだ。
権藤氏は「福岡を皮切りに、今後は各地方都市でも展開を広げていきたい。セットアップオフィスなどのハイグレードなオフィスとの親和性も高いので、時流に合わせた提案を引き続き行っていく方針です」とした。