不動産トピックス

【今週号の最終面特集】街に活気と賑わいをもたらす不動産活用

2024.04.08 10:30

既存建物の良さを生かしたリニューアル 多世代を受け入れる施設づくり
地元企業が取り組む地域貢献 利用者同士の交流促す新拠点
 不動産は外部に貸し出すことで賃料を生み出す収益装置。だが収益装置としての役割だけに終始するのはもったいない。その建物で商売をする人や訪れる人、建物に関わるあらゆる人をつなぎ、交流やまちづくりの拠点として活用することで、街の魅力をさらに引き出してくれる。

自社オフィス活用しコワーキングスペースに
 自動車部品の製造販売などを行う三桜工業(東京都渋谷区)は、茨城県古河市に所有する自社使用のオフィスビルをリニューアルし、大型複合コワーキングスペース「COKOGA OFFICE(ココガオフィス)」として5月にオープンする。
 三桜工業は1939年に創業。自動車に用いられる各種部品の製造を手掛け、現在は日本を中心に19カ国82カ所の製造拠点を構えるグローバル企業である。茨城県の西端に位置する古河市内では創業間もない1942年に事業所を建設。戦後になると、事業所周辺がサツマイモの生産地であることを利用して焼酎やポートワインの醸造を行っていたという。本社所在地が古河市であった時期もあることから、同社と古河市の関わりは深い。
 昨年6月には、地方創生に向けた包括連携に関する協定を市と締結。両者はそれぞれの資源を有効活用し、働きやすく、住みやすい、魅力あるまちづくりを目指した施策を検討・実施することで一致した。「COKOGA OFFICE」は、この協定に基づいた取り組みの一環であり、施設名称は「共に」を意味するCooperationの「CO」と、市名の「KOGA」を組み合わせたもの。市やさまざまな利用者とともに成長し、地域に根差した施設となることを目指す思いが込められている。
 建物は従前まで三桜工業が自社オフィスとして使用していた地上5階建てで、全館リニューアルし、フロアごとに異なる仕様となっている。最上階の5階はコワーキングスペースのフロア。さまざまなタイプのテーブルや椅子、ソファが配置され、窓に面したカウンター席からはJR「古河」駅周辺の街の様子を見下ろすことができる。また、集中して作業したい利用者向けの個室ブースも完備している。
 4階はシェアオフィスフロアとなっており、9部屋を用意したほかフロアの中央部にはミーティングルーム2部屋を配置した。シェアオフィスの各部屋には、雪の結晶の研究を行い「雪の殿様」と親しまれた下総古河藩主・土井利位にちなみ、「雪華」や「粉雪」といった、雪にちなんだ名前が付されている。3階はフロアを2分割した大人数用のスペースで、現在入居企業の募集活動を行っているとのこと。成約までの間はイベントスペースや大人数の会議室需要に応えるスペースとして運用するという。
 2階は多目的ルーム2室のほか、働きながら子育てをする女性向けのワーキングスペースを設けている。こちらは女性のみ利用可能なスペースとなっており、小さな子ども向けの遊具を設けたキッズスペースやファミリートイレ、授乳室を併設。子どもが遊ぶ様子を見ながら、安心して仕事ができる環境を提供する。
 1階はコワーキングスペースの利用者のみならず、市民に広く開放するフロアとして運用する。エントランス横の展示スペースでは、1日1500円からの展示費用で自分の作品を展示・販売・PRすることができる。現在、この展示スペースでは古河市に工場を構える耐熱ガラスメーカー・HARIOの商品が展示されている。その奥にはカフェスペースと図書スペースを配置しており、「ここがとしょ」と名付けられた図書スペースでは、市内では初となる「一箱本棚オーナー制度」を採用。自分だけの本棚を持つことが可能である。
 今月3日に行われたオープニングセレモニーでは三桜工業の竹田玄哉社長、古河市の針谷力市長、近藤かおる副市長をはじめ、関係者が出席。その中で竹田氏は「当社にとって古河市は創業の地の1つであり、かねてより地域への貢献について模索して参りました。昨年の包括連携協定の締結に続き、『COKOGA OFFICE』が地域の人と人とをつなぎ、魅力あるまちづくりの一助になればと思います」と述べている。

築古ビルを環境配慮型に 複合ビル「アンブル」7月開業
 リアルゲイト(東京都渋谷区)は、環境配慮型の複合ビル「AMBRE(アンブル)」を2024年夏にオープンさせる。
 同ビルは、昨年3月に取得した1棟約400坪のオフィスビルを改修した物件。既存建物を活用したリノベーションを行いながら、空調や照明器具などの設備を更新することで、環境負荷を低減させる。
 物件概要は延床面積1333・74㎡、鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根8階建て。
 6~8階のオフィス区画は、各面積約139・63㎡、基本天井高約3・3mで自然採光のとれる環境にバルコニー付き。区画内は主に廃材をアップサイクルした内装材を採用。8階には、デッキ仕様で緑化管理された約40㎡の専用ルーフトップが付帯する。
 3~5階のSHOWROOM/STUDIO/SERVICE SHOP区画は、3~4階面積各147・20㎡(5階面積139・63㎡)、基本天井高約3・3m、水平ラインの連窓。同区画では、入居テナントが水回りも含めたレイアウトや内装をカスタマイズ出来るオーダーメイドプランを採用する予定だ。
 屋上にはミニビオトープを設置。また1階で、屋上で生育した苗を入居者が自由に持ち帰りできるサービスも展開する。
 1階の共用スペース「cycle garage」には、電源を必要としない浄水機能付きウォーターサーバーや、読み終わった本をシェアできるスペースを設置する。
 施設内の使用電力は全区画で100%再生可能エネルギーを使用し、建材も環境配慮建材を採用。外壁の仕上げ材には、環境を守りながら生産されているサステナブルな素材「炭化コルク」を使用、オフィス区画の内装にはコーヒー豆のかすを再生したリサイクルボードを採用する。




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