不動産トピックス
【今週号の最終面特集】オーナー必見 最新のビルトレンド
2024.04.22 11:07
「住宅のようなオフィス」が人気 一般的なオフィスとは異なるデザイン・バルコニー採用が増加
昨年・今年と新築の中小ビルは多いが、デザイナーズビルやオフィスらしくない
カジュアルな執務空間・外観のビルが増えてきた。コンセプトやリーシング戦略もしっかりと練った上で、他社との差別化や立地環境も生かして開発に繋げた最新の事例を紹介する。
4月9日竣工のコレタス吉祥寺Ⅱ
トラスト・ファイブ(東京都千代田区)が展開するスモールサイズのデザイナーズビル「コレタス」。4月9日には吉祥寺で2棟目となる「コレタス吉祥寺Ⅱ」が竣工した。
コレタスは都内の城南・城西エリアをターゲットに展開しているデザイナーズビルのシリーズ。特徴的な外観と小規模では希少な高いビルスペック、一点モノのビルに仕上げるブランディングなど、独自の視点で展開してきた。基準階面積は30坪前後を想定しており、小規模企業、デザイナー等のクリエイター系、美容クリニック、ベンチャー・スタートアップに人気が高い。
今回竣工した「コレタス吉祥寺Ⅱ」は、JR「吉祥寺」駅及び京王井の頭線「吉祥寺」駅から徒歩4分の吉祥寺通り(公園通り)沿いに立地。視認性の良さに加えて、周辺には東急百貨店などの大型商業施設が集積。人通りの多い場所に位置する。目を引く外観の新築ビルが建ったことで反響は大きく、シリーズ1棟目「コレタス吉祥寺」のノウハウや知識も生かして開発した。規模は地上10階建て。延床面積は700・89㎡(約212・01坪)。1~4階までが店舗仕様で、専有面積は57・05~70・45㎡。また5~10階はオフィス仕様。専有面積は54・23~70・45㎡となる。
特徴は一見ランダムに配置されたバルコニーと、異なる面積の貸室。専用部内にバルコニーを設け、入居者はリフレッシュも兼ねたスペースとして活用できる。フロアによって貸室やバルコニーの広さ・形状が異なり、テナントのニーズに応じて選択可能。路面店横の階段は、2階店舗フロアへ「人を誘うデザイン」として設計。入居店舗の集客にも繋がる工夫となっている。あらゆる入居者にとって使い勝手の良いビルになるよう、物件開発の設計チームに複数の女性が参加。魅力的なデザインと、洗練された執務空間や共用部を有している。
ビル開発事業部 企画開発課の柏木俊祐氏は「入居企業は地元・吉祥寺で新築オフィスを探していた企業や新築のスモールオフィスを求めて他エリアから移転されるニーズも見られます。都心と多摩エリアの中間に位置する立地環境も選定理由にあるでしょう。店舗の場合、大通り沿いに位置することでの視認性やビル前の歩行者の多さなども入居理由にあります。場所の認知度や説明のしやすさなども背景にあり、反響は多いです」と語った。
現在同社は目白と阿佐ヶ谷で開発計画を進めている。他社とは違った目線で開発用地を探しており、同事業部の南薗龍司氏は「駅前商店街や商業エリアの狭小地の開発に適しています。立地環境を加味して意匠性やオフィス空間も設えるのが得意なため、今後もビジネスと商業の双方に適した土地で、利便性・集客性・防災対応力に優れた物件を建設していきます」と語った。
昨年6月に竣工THE EDGE目黒
ラ・アトレ(東京都港区)は、収益不動産開発事業を展開している。オフィスビルではブランド「THE EDGE(ジ・エッジ)」を展開。昨年6月末に「THE EDGE目黒」が竣工した。
同社は2016年頃から本格的に収益不動産開発事業を開始。開発アセットの約半分は店舗系の「A*G」で、着実に実績を伸ばしてきた。これら実績や知見を生かして、オフィスブランドのTHE EDGEも開始。1棟目は「THE EDGE恵比寿西」で、事務所区画は坪単価4万円前後でテナント誘致。現在は売却済み。開発第2事業部 次長の西村光平氏は「収益不動産においてNOI(賃料から管理費用や固定資産税などの諸経費を控除した純収益)の最大化は重要項目。そのために相場賃料を壊すアイディアが必要となります。当社では他にはない・比較されない『魅力』や『独自性』を追求して開発します。立地・築年数・スペック・賃料といった、賃貸オフィスの相場に左右されない空間的特徴を持ったビルブランドが『THE EDGE』です」と語った。
昨年1月には「THE EDGE恵比寿西」が竣工。地上9階建て。敷地面積約137㎡(約41坪)に建つコンパクトビル。貸室面積は67・13~85・56㎡の正方形。フロアによって大きさとレイアウトに、バリエーションを持たせた。どの部屋もバルコニーを用意し、寛ぎながら業務を行うことができる。
「THE EDGE目黒」は、JR山手線など複数路線が使用できる「目黒」駅から徒歩6分に建つオフィスビル。規模は地上5階建て。延床面積は約800㎡。建物正面から奥に向かって細長い長方形の敷地に建ち、「ウナギの寝床」のようなオフィス。一方で奥行きが感じられ、貸室全体に広い印象を持つことも特徴。この敷地と他物件の差別化も見据えてコンセプトを「京都の町屋」とした。京町家は、通り庭に沿って店の間・台所・奥の間を一列に並べた空間に坪庭を設える。京町家をモチーフに、ビルのコア機能や部屋のレイアウトも構築。就業者が室内手前から奥へ自然に移動する様な設えにしたことで、コミュニケーションも自然と生まれる空間となった。
貸室は全9室で、57・72~82・27㎡。1~4階はフロアを半分に分け、2区画を隔てる形でトイレや会議室などを配置。全区画に造作を行っており、デスクやベンチ、棚などを設置。入居企業は移転早々に業務を開始でき、什器や会議室、退去時の原状回復工事が必要のない区画も用意した(特別消耗を除く)。全部屋にバルコニーも採用。5階のみ1フロア106・67㎡(32・26坪)で提供。ルーフバルコニーや大きめのキッチンも配備し、社員同士の交流の場に生かすこともできる。屋上にはテナント共用のテラスを造り、休憩・リフレッシュやランチタイムなどに利用できる。
西村氏は「オフィスの手前と奥で、緩やかに空間を使い分けられるメリットがあります。オフィス入り口でクライアントや訪問者を迎え入れ、奥は自社社員のデスクスペースといった使い分けが可能です。目黒を好む小規模企業の新拠点、スタートアップのステップアップに繋がるオフィス等に好ましいと思います」と語った。
<物件概要>
コレタス吉祥寺Ⅱ
竣工年:2024年4月9日
延床面積:700.89㎡
敷地面積:110.79㎡
規模:地上10階
用途:商業(店舗、オフィス)
所在地:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-4-18
<物件概要>THE EDGE目黒
竣工年:2023年6月末
延床面積:796.1㎡
敷地面積:277.52㎡
規模:地上5階
用途:オフィス
所在地:東京都目黒区下目黒2-2-10