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三井不動産がロジスティクス事業の新戦略 累計投資額は1兆2000億円に

2024.07.15 11:52

 三井不動産(東京都中央区)は、ロジスティクス事業における新事業戦略を策定し、7月11日に記者説明会を開催した。
 同社は2012年に物流施設事業部を発足させ、ロジスティクス事業に参入した。以来事業を拡大させ、現在は開発施設75物件、延床面積約600万㎡、累計総投資額約1兆2000億円に達する。
 新戦略は4月に公表した新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」に基づくもので、「ロジスティクス事業のさらなる成長」、「事業領域の拡大」、「ESGへの取り組み強化」の三本柱からなっている。
 「さらなる成長」を担うのは、まちづくり型物流施設の開発促進と物流ソリューションの提供だ。まちづくり型施設としては、9月にその集大成ともいえる大型物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」が竣工する。広場やドローン実験場、一時避難所など様々な機能を備え、地域と一体となった物流施設で、今後も同様の開発を進めていく。また、2023年4月には荷主向けの物流コンサルティングを開始。今年4月にスタートしたEC事業者向けの物流センターシェアリングなどと合わせて物流効率化をサポート。さらに、インターネットの仕組みを物流に応用して効率化する「フィジカルインターネット」構想にも参画しており、多方面でのソリューションを提供する。
 「事業領域の拡大」では、冷凍・冷蔵倉庫の開発に乗り出す。現在2物件を開発中で、今後も開発を推進。食品配送のニーズを取り込む。また、データセンター(DC)事業も強化する。既存の3施設に加えて新たに2施設の開発を決定。都心型DCや、複数の企業が共同で使用するコロケーション型DCにも事業領域を拡大する。さらに、工場などのインフラストラクチャー事業にも参入。商品製造工場から保管、配送まで、一気通貫した独自のサプライチェーンを構築する構えだ。
 「ESGへの取り組み」では、太陽光発電設備の設置を推進。保有する全施設の共用部供給電力の100%グリーン化達成や環境認証の取得などを進めてきた。2024年度中着工予定の「MFIP海老名」に、三井不動産グループが北海道に保有する約5000haの森林の木材を使用するなど、持続可能な森林経営による「終わらない森」づくりにも貢献するとしている。
 説明会に登壇した同社執行役員・ロジスティクス本部長の篠塚寛之氏は新戦略について「不動産デベロッパーの枠を超えた『産業デベロッパー』として、社会の付加価値創出に貢献するもの」と説明した。
 物流業界では、トラックドライバーの時間外労働に上限が課せられる「2024年問題」や労働者不足などにより、荷物が届かなくなる可能性が指摘されている。企業間の連携が必要とされるなか、三井不動産はそのハブとなり、物流改革を支援する構えだ。

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