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複数企業入居の大型オフィスビルとしては国内初 「三井本館」ビルが重要文化財指定へ

1998.11.01 16:32

三井財閥のシンボル的存在 古典アメリカ式のデザイン
 三井不動産(東京都中央区・岩沙弘道社長)が所有する「三井本館」(中央区日本橋室町)が重要文化財の指定を受けることが決まった。複数の会社が入居する大規模ビルの文化財指定は初めて。
 同ビルは大正12年の関東大震災により旧三井本館が罹災したことで建替えられたもの。設計にあたっては当時の三井合名会社理事長である團琢磨氏が壮麗、品位、簡素の3つの理念を掲げ、それをもとに米国有名建築事務所であるトローブリッジ・アンド・リヴィングストン事務所が設計を行い、同じく米国のジェームズ・スチュアート社が施工を請け負った。
 竣工は昭和4年3月、地上7階地下2階建てで延床面積は約9580坪。一坪あたりの工費は当時の一般的なビルの約10倍の2200円。っ外観は各部を花崗岩で仕上げており、コリント式の丸柱の列が大きな特徴で、アメリカ型の古典主義を彷彿させるデザインとなっている。
 同ビルには三井合名会社の他、三井物産、三井鉱山、三井銀行(現さくら銀行)、三井信託(現三井信託銀行)など三井財閥系各社が入居、三井のシンボルとしての機能を長らく果たして来た。
 平成2年9月には都の「歴史的建造物の景観意匠保存事業」の適用第一号を受け、第二次世界大戦に供出した鎧戸の復元も行われていた。今回の重要文化財指定については「現存する最古のアメリカンタイプのビル」である点が評価され、文化庁の指定基準のうち
・意匠的に優秀なもの
・歴史的に価値の高いもの
の二項目が適用されたという。




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