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日産自動車 本社ビル新館を森ビルに売却 資産リストラの一環、売却後はテナントとして入居 購入額146億円・森ビルグループ2社で共有

1998.09.21 11:36

 日産自動車(東京都中央区・塙義一社長)は9月24日、財務体質強化の一環として銀座6丁目の本社ビル新館を森ビル開発(東京都港区・森章社長)と森ビル産業(同)に売却したと発表した。
 同ビルは本社本館の隣に位置し、低層階を新橋演舞場が区分所有している。日産自動車は4階から上に本社間接部門や役員室等をおき、現在約700人の社員が働いている。
 今回の売却部分は日産使用分の土地及び建物で土地面積は3200平方メートル、建物面積は2万3600平方メートル。売却金額は146億5300万円で、売却益71億8500万円を98年9月中間期に特別利益として計上する。
 売却後は森ビル開発と森ビル産業で50%ずつの共有となるが、森ビル産業分を森ビル開発が賃借し、森ビル開発分と併せて日産自動車へ賃貸する形式をとり、日産自動車は今後も引き続きテナント企業として入居をするという。
 日産自動車は目下2000年度を目処にしたリストラ策を実施しており、現在2兆5000億円の連結有利子負担を1兆円軽減することを目標にしている。今回の売却劇は、不動産や有価証券の売却でリストラを推進したい日産自動車側と、これまで港区虎ノ門や新橋界隈でビル賃貸事業を進めてきた森ビル開発側の新たな事業展開地区を開拓しようとする思惑の一致が背景にあるものと思われる。
 特に森ビル側にとっては今年2月の東京駅八重洲北口の旧国鉄用地の落札に続く中央区への大規模進出となり、同社の地区進出の意気込みの強さを物語っている。まして今回は日本を代表する大手企業である日産自動車のテナント入居が確定しており、今後も引き続き安定した運用が期待できるといったメリットがある。
 しかし、例え一部とはいえ、自動車大手企業が本社ビルを売却するのは異例のこと。本社ビル本館の売却予定は現在のところないとのことだが、今回の売却劇は北米市場での苦戦が伝えられ、また国内市場でもシェア3位の本田技研工業に猛追されている日産自動車の苦境を象徴する様な一件といえよう。 




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