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噂のスクランブル 夜逃げに備えて代表職を辞任 何とも手回しの良いテナント倒産劇
1998.08.01 14:35
テナントが夜逃げした場合、最終的に直面するのが明け渡しの問題だ。例えば、倒産した会社の代表者だけが姿をくらまし、従業員は残っているという場合はどうするか。
ある弁護士が経験したケースでは、テナントの旅行会社が倒産し、その代表者の社長が顧客から集めた旅行代金を持って失踪。
オーナーから連絡を受けた弁護士はすぐにそのビルに駆け付けたが、社員は皆、顧客との連絡などに追われててんやわんやの状態。
それでも貸室の明け渡しを求めるには賃貸借契約の解除をテナントのそれも代表者に通知しなくてはならない。テナントの夜逃げによって賃貸借契約は当然に終了することにはならず、借家権が残ったままの状態で勝手に処理してしまうことは、借家権の侵害になり危険だからである。
何とか契約解除および原状回復の協議が法的にできる者を確定しようと聞き込んだところ、逃げた社長の父親が代表取締役会長の職にあることが判明。
「代表権があれば解除通知が出せる」と喜んだが、それもつかの間、当の会長は「私は会長だが、代表ではない」との返答。実際、会社の謄本を取って調べてみたら、何とつい2週間前に父親は会長を辞任していた。
何とも手回し良く、会社の危機を知っていた経営者親子が、こうした事態を想定して、すでに手を打っていたのだ。
「飛ぶ鳥あとを濁さず」と言うが、これぞまさに「飛(と)んだ経営者」・・・。