不動産トピックス
【11/18号・今週の最終面特集】オフィスのあり方 最新トレンドに迫る!
2024.11.18 15:41
社員のエンゲージメント高め企業の成長加速させる空間構築
従来のオフィスは効率性を重視した商品開発が行われるとともに、オフィスのレイアウトにもその流れを踏襲した設計が広く採用されてきた。しかし現代では社員一人ひとりの働き方の多様化に対応し、オフィス空間にもバリエーションをもたせることが重要となっている。メーカーが提案する新しいソリューションから、最新のワークプレイスのトレンドを分析する。
4~6名まで対応 大型ワークブース
オフィス家具メーカー大手のオカムラ(横浜市西区)は、新商品などを紹介する展示イベント「オカムラグランドフェア2025」を、千代田区紀尾井町の「オカムラ ガーデンコートショールーム」にて今月12日より開催している。
ライフスタイルの変化やコロナ禍といった事象を経て、ワークスタイルの多様化が急速に進んでいる。一方、リモートワークを一部継続しつつもオフィスへの出社をベースとしたワークスタイルが浸透。これまで以上に社員間のエンゲージメント向上に寄与する環境が求められるようになった。オカムラの研究機関・ワークデザイン研究所の調査・研究によれば、仕事がスムーズに進められるようになると自分の成長を実感できると8割以上のワーカーが回答。仕事のスムーズな進行が成長の実感に大きな影響を与えていることがわかった。仕事をスムーズに行うためにオフィス環境の整備が役立つかどうかを聞いたところ、回答者の5割が役立つと答えた。また、優秀なワーカーほど空間に余裕があり、開放的で整理整頓がなされているオフィス空間を好む傾向があるとしている。
オカムラでは今回の展示イベントのテーマとして「集うだけがオフィスの価値か。」を設定。企業によって経営課題はさまざまであるが、「組織を強くしたい」という思いはどの企業にも共通している点、オフィスに集まる行為に意味があるのではなく、「集まるからこそ生み出される価値」に意味がある点に着目。「躍動(CHALLENGE)」、「戦略(STRATEGY)」、「補給(RECHARGE)」という3つのキーワードから、単に社員が集まる場としてのオフィスではなく社員同士のコミュニケーションの質を高め強い組織づくりをサポートするオフィス環境を提案する。
新商品としては、社内外の人とのオープンな交流の場として機能するラウンジスペースに適したラウンジテーブル「Symphonia(シンフォニア)」、ソファシリーズ「CLARK(クラーク)」を発表。「Symphonia」は、局面を取り入れた脚が存在感を放つラウンジテーブルで、リーフ形の天板は自然と互い違いに座るようにデザインされており、関係が浅い人ともテーブルを共有しやすく気軽な交流を誘発する。テーブルの端は曲線形状の天板がオーバーハングしているため近くを通る人が自然と立ち寄りやすい設計となっている。
「CLARK」は、ラウンジスペースの象徴となるような多様なレイアウトに対応するソファシリーズである。ゆったりとリラックスできる柔らかい座り心地のソファのほか、ライブラリーとして機能するシェルフやプランターボックスを商品群にラインアップ。それぞれのアイテムを組み合わせることでオリジナルのレイアウトを構築することができ、自然と人が集まり交流のきっかけが生まれる場を創出する。
オカムラでは、多様な仕事を最適に行うためにオフィスにはワーカーが選択できる多様な空間が必要であると考え、その1つとしてデザイン性が高く複数人で社内外の人とオープンに交流するラウンジスペースを提案している。内装や設えにこだわったデザイン性の高い空間やコミュニケーションによる新たな関係性の構築により、仕事へのモチベーション向上や業務の円滑な進行による生産性向上、イノベーション創出に期待できるとしている。
このほか、展示スペースではオカムラとブイキューブ(東京都港区)、テレキューブ(東京都千代田区)の3社が共同開発したワークブース「TELECUBE by OKAMURA」シリーズの新しいサイズとして、4~6名で使用できる多人数用が紹介された。今回発表された多人数用は、幅2400mm×奥行2400mmのワイドサイズで、ソファやキャスター付きのチェアを使用したレイアウトによるミーティングのほか、任意の家具を使用したレイアウトで立ち会議やプレゼンテーション、マネージャー室などの個室、休憩スペースなどさまざまな用途で使用が可能である。
ICT技術を活用し働き方・オフィス運用を効率化
内田洋行(東京都中央区)は新商品発表会「UCHIDA FAIR 2025」を、中央区新川の同社本社オフィスならびに隣接する新川第二オフィスにて開催した。
この発表会は「人が主人公となるハイブリッド・ワークプレイス」をテーマに、リアルとオンラインをよりシームレスにつなげることで、人と人が集う最適な瞬間を演出。集中やコミュニケーションを高める快適な空間や、働く人の心地よさを呼び覚ます木の素材、協創を支えるICTなど、人にフォーカスした多彩な展示で来場者を迎えた。
同社が得意とするのは、機能やデザインに優れた商品を軸としたリアルなオフィスの空間構築に加えて、ICT技術を活用した次世代のオフィス空間の構築である。こうしたハイブリッドなワークプレイスのデジタル基盤を担う「SmartOfficeNavigator」は、オフィス内の社員の位置情報やフロア内の在席状況、会議室の利用状況を可視化。空調や照明といったビル設備と連動させれば、設備機器の運用状況の実態把握にも貢献する。社員は手元のスマートフォンやタブレット上でオフィスフロア内の混雑状況を確認することができる。社員の位置情報はフロア内で細分化された各エリアにWi-Fiのアクセスポイントを設置し、通信端末を持った社員がアクセスポイントに接続することで、どのフロアのどのエリアにいるかをリアルタイムで可視化する。各社員のデータを統合することでフロア内の社員の在席状況を一括表示することができ、人を探しやすい環境とコミュニケーションのきっかけづくりを提供する。同社エンタープライズエンジニアリング事業部の大矢訓寛氏は「フロアごとの利用状況に関するデータを蓄積し、定量的に分析することで、より効率的なオフィスレイアウトの検討に生かせるほか、ビル設備と連動させて室温やCO2濃度などの計測することで、より快適なオフィス環境の構築や設備の運用改善に役立てることができます」と話す。
光学機器メーカー大手のオリンパスは今年4月、グローバル本社オフィスを東京・新宿から八王子市へ移転した。新本社は出社とリモートワークのハイブリッドな働き方で、全面的なフリーアドレスを採用した。自由でオープンなオフィスで社員同士の対面コミュニケーションを活性化させ、組織をまたいだ交流の促進につなげることを目的に、内田洋行の「SmartOfficeNavigator」が採用された。新本社ではオフィス空間での人の居場所や多様な設備・機器の検索・予約を統合管理。会議室予約管理システムや各種ブース・トイレなどの空き状況をセンサーで情報収集するシステムとも連携し、多様なオフィス設備を社員が自律的に検索・予約することができる。
また、「SmartOfficeNavigator」に収集されたデータを統合しサイネージに提供する「空き状況可視化マップ」を開発。各フロア、人の往来が多い動線上にマップを設置し、すべてのフロアのオフィススペースの空き状況を、大型タッチディスプレイを用いて社員がマップを直感的に操作することで迅速に見つけられるようになっている。
このほか、同社と業務提携している米国のオフィス家具メーカー・Steelcase社の商品も多数展示された。高機能チェアとして人気が高い「Karman(カーマン)」をはじめ、状況や働き方に応じて仕切り板やラック、可動式のハイカウンターといったパーツを自由に組み合わせて使用するワークデスクなどが紹介された。