不動産トピックス

【12/16号・今週の最終面特集】快適な住まいの環境づくり新潮流

2024.12.16 10:42

コロナ禍を経て重視される住宅の心地よさ
コスト高で自家発電への需要高まる サステナブルな空間の構築にも貢献
 リモートワークの普及に伴って、自宅で過ごす時間が増えたという人は多い。それだけに、住環境はこれまで以上に重視される傾向にある。また電気・ガスといったエネルギーコストの上昇によって、より省エネ性能や環境性能に特化した設備への需要も高まっている。現下の住まいに対するトレンドを追った。

電気機器の使用状況を見える化 再エネ活用率76%を実現
 パナソニック エレクトリックワークス社(東京都港区)は、HEMSの中核機器となる「AiSEG3(アイセグ・スリー)」を2025年3月より発売する。
 HEMSとは、ホーム・エネルギー・マネジメント・システムの略称で、家庭内で使用している電気機器の使用量や稼働状況をモニター画面などで見える化するもの。電気の使用状況を消費者が把握することで、家庭内の消費エネルギーを自発的に管理することができる。政府は2030年までにすべての住宅にHEMSの設置を完了することを目標としており、新築を中心に徐々に導入が広がっている。また直近では電気・ガスといったエネルギーコストの高騰が続いており、住宅分野ではHEMSだけでなく太陽光発電システムで発電した電気を家庭内で使用する自家発電型システムなどへの関心も高まっている。パナソニック エレクトリックワークス社では、エネルギーマネジメントと快適・安心な暮らしのサポートを目指し、HEMS機器として2012年に「AiSEG」を発売。それ以降、蓄積した住宅の生活データを活用してきた。今回販売を開始する「AiSEG3」は、その後継機にあたる。
 「AiSEG3」は、家庭内の電力需要と翌日の発電量を予想するなどAIを活用し、太陽光発電を効率よく利用する機能を強化。家庭内の電気の再エネ活用率76%を実現し、電気代の削減に貢献する。商品の開発に携わった同社エネルギー・IoTソリューションセンタービジネス推進室の野村仁志室長は「AIが車の自動運転という形で影響力を持っていますが、住宅においてもエネルギーの自動コントロールという形で影響力を発揮していきたいです。パナソニックでは、AIが住む人の生活パターンを学習して、生活する人に合わせて快適なエネルギーコントロールを実現する『知能を手に入れた家』を提案しています。これらを実現するのが『AiSEG3』です。『AiSEG3』では、現在76%まで太陽光発電の活用効率を高めることができています。また、EV車から電力供給もでき、日本においては災害対策の面でも有効です」と話す。
 また同製品の開発に関わった芝浦工業大学の建築学部長・秋元孝之教授は「太陽光発電の電気をうまく活用していくことが必要ですが、個人で電気の使い方をその場面ごとに判断していくのは非常に難しいのが実態です。これらを自動的にフォローしていく住宅が今後求められています。『AiSEG3』は、これまでの24万件の蓄積データを活用し、再生可能エネルギーの活用を促す、頼もしい製品。停電時も、生活に不便が出ないようにする点は大変素晴らしいと感じました」と期待を寄せている。同製品は今後、電力需要がひっ迫した際に、家庭で電力使用量をコントロールして電気の供給量と使用量のバランスをとるデマンドレスポンスにも対応していく予定だという。

新キッチン・バスルーム発表 消費者のニーズ変化に着目
 パナソニック ハウジングソリューションズ(大阪府門真市)は、水廻りシステム事業部の主力商材であるシステムキッチンおよびシステムバスルームのデザインを刷新し、2025年2月より受注を開始する。  同社は30代から60代の男女を対象に、暮らしの価値観に関するインターネット調査を実施。調査によれば、「コロナ禍を通じて、自宅での暮らしに対する関心が高まった」との回答が約75%に達した。水廻りシステム事業部統括担当の窪井健司氏は「『自宅での暮らしを見直す中で、どのような変化があったか』という問いに対しては、回答者の約半数が『自分に必要なものとそうでないものを見直した』、『どうすれば心地よく暮らせるか考えるようになった』の項目を選択しました」と述べる。また、昨今のサステナブル意識の高まりなどを背景に、消費者は機能的でありながらシンプルな製品を求める傾向にあると分析。コロナ禍を経て住宅購入層の暮らしに対する価値観が洗練され、近年の物価高騰の影響も加わり、住戸の中での「メリハリ消費」の傾向が高まっているとした。  同社は1962年よりシステムキッチン、翌63年よりシステムバスの事業を開始。時代ごとに必要とされる機能や価値を備えた商品を販売してきた。今回のシステムキッチン・システムバスルームのデザイン刷新について、前述のような消費者意識の変化に関する分析結果から、同社は住宅設備に求められる普遍的かつ必要不可欠な要素に着目。作業や動線を妨げず、購入時の美しい状態を無理なく保つことのできる機能とデザインを追求した。  システムキッチンは、プランニング自由度が高く特注対応も可能な「Lクラス」に加え、デザイン性が高級価格帯と同等でありながらも普及価格帯を実現した「Sクラス」をラインアップした。パナソニックが創業製品の「電気プラグ」から長年にわたり培ってきた樹脂成型材料・成型技術を基盤とする独自の樹脂材料をシンクの表面に加工し、掃除の手間を大幅に軽減。キッチンを使用している時は直感的な使いやすさで高い機能性を持ち、使用していない時は視覚的な心地よさを与えるデザイン性に富んだ商品となっている。  システムバスルームもシステムキッチンと同様に、オン・オフどちらの場面でもストレスを意識することのない機能性とデザイン性を有する。内装はブラックを基調とした色合いで、天井中央に埋め込まれたフラットラインのLED照明による空間演出が特徴となっている。

夫婦円満と住まいの快適 約7割が「関連あり」と回答
 中古住宅やリノベーション住宅の流通プラットフォーム「リノベ不動産」を運営するWAKUWAKU(東京都目黒区)は、全国の30~60代の既婚男女1000人を対象に、家探し・住宅購入と夫婦関係に関するインターネット調査を実施した。この調査は、住まいにおけるパートナー間の意識の違いや、理想の住まいに対する考え方、リノベーションの認知度・検討度合いを明らかにすることを目的としている。
 「円満な夫婦関係に住まいの快適さが影響していると思いますか?」という問いに対して、「思う」と回答した人は70・6%にのぼり、全体の7割以上の人が住宅の快適さが夫婦関係の良好さに関わる要素であると考えていることが分かった。また、「家探し・住宅購入をした際に、夫婦間で意見が分かれたことはありますか?」という問いには、「よくあった」や「時々あった」と回答した人が約4割、「あまりない」や「ほとんどない」と回答した人が約6割と、夫婦間での意見が分かれなかった人がやや多い結果となった。
 家探し・住宅購入の過程で夫婦間の意見が分かれた経験をした人を対象に「具体的にどのようなことで意見が分かれましたか?」という問いを行ったところ、半数以上の人が「間取り」と回答。そのほかにも「立地条件」や「内装・デザイン」、「予算・住宅ローン」という理由で意見が分かれた人も一定数存在することが分かった。
 住宅購入の場面では、リビングやキッチン、寝室など、スペースによっては譲れないポイントなども存在する場合がある。そのためパートナー間でコミュニケーションをとり、お互いのこだわりを言語化してすり合わせをしながら理想の住まいを形にすることが望ましいといえるだろう。




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