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LIFULL 2025年の住宅トレンドを発表

2025.01.06 12:11

 不動産情報サービス「LIFULL HOME‘S」を展開するLIFULL(東京都千代田区)は、先月18日に「LIFULL HOME‘S 2025年トレンド発表会」を開催。住宅不動産における2025年の注目トレンドを独自の視点から発表・解説した。
 今年のトレンドワードとして挙げたのは、「デコ活」、「ローカル億ション」、「ずらし駅」、「住まいの防犯投資」、「家じまい元年」の5つだ。
 1つ目の「デコ活」とは、脱炭素を意味するDecarbonizationと、二酸化炭素を表すCO2を掛け合わせた造語。環境省が提唱しているもので、フードロス対策や働き方の環境負荷低減なども含めた3分野13種類の具体的なデコ活アクションが紹介されている。
 2024年4月には「建築物省エネ性能表示制度」が開始。「LIFULL HOME‘S」における新築賃貸の省エネ性能ラベル物件の11月の通算掲載数が1万4055件程度であったのに対し、12月は1万7682件と大幅に増加。新築マンションの引っ越し先を探す際に省エネ性能を「意識する」、「やや意識する」と回答した人が約9割に上り、顕著にその傾向は高まっている。昨今はエコ給湯器の導入で10~13万円の補助金の付帯、窓リノベを行う際に改修費用の2分の1程度の定額補助が受けられるなど、国の補助制度を活用した改修は進んでいくとみられている。
 2つ目の「ローカル億ション」は、1億円以上の分譲マンションの地方拡散状態を表すもの。現在は33都道府県で1億円以上の分譲実績がみられ、タワーマンションをはじめとした高級住宅の引き合いが全国に及び始めている。その背景にあるのはパワーカップルや富裕層の居住、インバウンド需要の地方への拡散。今後も政令指定都市や県庁所在地を中心に、タワー型億ションの開発は顕在化すると予測される。
 3つ目の「ずらし駅」は、ターミナル駅からあえて外れた駅近くに居住をすることで、安い賃料で暮らすという考え方だ。昨今はファミリー向けの新築物件の価格上昇に伴い、中古物件の価格も向上。さらに、実質賃金があまり上がっていない一方で消費者物価指数は上昇の一途。住宅にかけるコストを増やすことができないという事情が背景にあると考えられる。
 「LIFULL HOME‘S」の発表によると、「下北沢」駅への問い合わせ前年比が91・6%と減少しているのに対し、近隣の「東北沢」駅、「池ノ上」駅はそれぞれ前年比114・9%、109・5%と上昇。他の路線のターミナル駅でも同様の傾向がみられているようだ。
 4つ目は「住まいの防犯投資」。昨今は住宅地を狙った闇バイトが横行し、世間をにぎわせた。同社の調査によれば、住宅購入意向者の約3割が「一戸建てを希望していたが集合住宅も検討をするようになった」と回答。直近1年間での防犯意識の変化についての質問には「非常に高まった」、「やや高まった」が全体の約7割を占めている。
 特に重要視されているのは、侵入口となる「玄関ドア」と「窓」。玄関ドアにはセキュリティサムターンの設置をはじめ、窓には2ロック式や安全合わせガラス、防犯フィルム等、各メーカーでも防犯リフォーム設備への問い合わせが増加している状況だ。葛飾区や足立区をはじめ防犯対策への助成金を開設する自治体も見られ始め、今後ますます防犯投資への意識は強まっていくことが見込まれる。
 5つ目は「家じまい元年」。団塊世代が後期高齢者になる2025年問題が迫り、相続を理由とした売却査定依頼の割合は年々増加傾向にある。オープンハウスと同社の共同調査によると、2019年における売却査定依頼の理由としての相続が15・9%であるのに対し、2024年時点では23・6%。5年間で7・7%の増加と、データにも顕著に現れている。
 一方で、家じまいの検討をはじめたものの「家族の意見が決まらない」、「家の片づけが終わらない」等の理由で問題を先送りにするケースも少なくない。利用が予定されていない空き家の数は2030年には約470万戸まで増加することが見込まれており、今後も社会全体の問題として位置づけられるだろう。
 LIFULL HOME‘S総研 副所長兼チーフアナリストの中山登志朗氏は「実家売却時の親の年齢の平均は父親・母親ともに80歳。そのため、家じまいのターゲットはその息子さんや娘さん世代である40~50代の方々。こういった方々に届く施策や広報が必要になってくるのではないかと感じております」と見解を述べた。




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