不動産トピックス

クローズアップ 宿泊施設編

2019.01.21 11:41

 2018年の訪日観光客数が3000万人を突破し、宿泊施設ビジネスに注目が集まる。一方、市場の成熟化は進み競争も激化。今後は「勝ち組」、「負け組」が明確になってくると予想されるなかで、差別化に向けた新たな取り組みが出てきた。

ビーロット 「(仮称)京都恵美須町旅館計画」動き出す
既存京町家と新築融合の宿泊施設に 立地・オペレーター選びが雌雄決す
 注目を受ける京町家ホテル。立地や文化、物件自体の歴史性からインバウンドにとっても期待の高いものとなっている。そのなかで新しい動きが出てきた。
 ビーロット(東京都港区)は先月27日、「(仮称)京都恵美須屋町旅館計画」事業をスタートさせた。エリア内での同社のホテル開発事業は3棟目。京町家にかかわる取り組みは初。同社ではこの京町家物件を2018年に取得していた。
 本事業へ挑戦した理由はどういうものか。不動産投資開発本部投資開発2部主任の甲斐徹也氏は次のように話す。
 「歴史的建造物である京町家はマンションやホテルへの建替え事例も数多くあり、年々減少傾向にあり、2017年には京都市が京町家の保全・継承を推進する『京町家条例』を制定しています。当社もこの理念に賛同するとともに、従来の新築ホテルとも京町家旅館とも異なる新しい形の宿泊施設が差別化に繋がると考え、今回のプロジェクトが走り出しました」
 同社にとって初となる京町家旅館事業。甲斐氏の言う既存のものと異なる「新しい形」とは何か。そのひとつは既存棟(木造瓦葺2階建て)に鉄骨造5階建ての新築棟を増築することだ。今回、同社が掲げるテーマ「新旧ジャパンクオリティの融合」である。
 「京町家を一部解体しリノベーションをする。そして解体した敷地部分に新築棟を建てます。新築棟と既存棟の行き来が自由にできる通路を建物内につくり、両棟をあわせて1つの宿泊施設とする計画です。既存棟内にコモンスペース、新築棟と既存棟の間には中庭を設けるなど、従来の京町家らしさを活かした造りにします。伝統と現代建築を融合した魅力の高い物件を提供していきます」
 新旧を融合した宿泊施設として、京都の新しい魅力になっていきそうだ。
市場は成熟化 優劣が顕著に
 昨年訪日観光客数が3000万人を超えたが、ホテル市場は決して「ぬるま湯」ではない。
 京都といえども開業すれば安定的に稼働する状況にはない。新築のホテル開発は進む一方、京町家旅館にも内外の事業者が参入する。
 甲斐氏はホテル市場について「数年前に比べて大分成熟化してきている」という認識を持つ。国内外の投資家はホテルに対して期待感を持って見ているが、「運営戦略でも出口戦略でも優劣がつきはじめている」と指摘する。そのため「これまでも立地やオペレーションは慎重に検討してきたが、今後はこれまで以上に厳しい目線で検討していく必要がある」と話す。
 今回、オペレーターとなるエイジェーインターブリッジ(京都市下京区)は京都や金沢を中心に町屋宿泊施設やホテル運営などを行う。町家施設のオペレーション数は約80棟、ホテルなども加えるとオペレーション数は約100棟。町家のオペレーターとしては最大級の規模を誇っている。有力オペレーターとタッグを組めたことも今回のプロジェクトのアドバンテージとなりそうだ。
 ビーロットでは今後もホテル・宿泊施設の案件を手掛けていく構え。訪日観光客の観光ルートが分散するなかで魅力的なエリアは増えてきている。各地の観光資源を事業機会と捉え、グループ間でのシナジーも高めながら、歩を進めていくようだ。
 「(仮称)京都恵美須屋町旅館計画」の竣工は2019年12月、運営開始は2020年2月頃を予定する。

ホステル暮らし、多拠点シェアハウスをサポート
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 新サービスはシェアハウスに住みながら提携ホステルに泊まり放題となる「多拠点シェアハウス」と、家を手放し1カ月からのホステル暮らしを実現できる「ホステル暮らしパス」。昨年より月額1・5万円からで全国の登録ホステルに泊まり放題となる「多拠点パス」を展開していたが、サービスを充実させた形だ。

ジーテック 「MIRANOVA民泊許可事前診断」提供開始
 煩雑な民泊許可申請をシンプルに実現する「MIRANOVA」(ミラノバ)を運営するジーテック(東京都港区)が所有する物件の情報、民泊(民泊新法・特区民泊・旅館業)を申請可否を詳細かつ簡単に知ることができる民泊支援サービス「ミラノバ民泊許可事前診断」をリリースした。物件の民泊申請可否や設備の診断から許可申請のスケジュールまでを割り出す。専用フォームに入力すると7営業日以内にPDFデータで送付される。




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