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気仙沼の歴史的建造物の復旧プロジェクト ユネスコ「プロジェクト未来遺産2018」に登録
2019.01.21 13:44
宮城県気仙沼市内湾地区で、東日本大震災の被害にあった国登録有形文化財群の復旧などをめざす気仙沼風待ち復興検討会(宮城県気仙沼市)が取り組んでいる、被災した6棟の店舗・住居を再生させる「気仙沼港と風待ちの風景~歴史的建造物の復興プロジェクト~」が、地域の文化・自然遺産を未来へと守り伝える「プロジェクト未来遺産2018」への登録が決定した。
クラウドファンディングを実施 有文建造物の普及目指す
今年で10回目となる「プロジェクト未来遺産」。100年後の子どもたちに、地域の有形・無形の文化や自然を残し伝えていくための「未来遺産運動」として、日本ユネスコ協会連盟がおこなっている活動。今回は4プロジェクトが選定され、その1つが「気仙沼風待ち復興検討会」が取り組んでいる、東日本大震災で大破した気仙沼の国登録有形文化財の建造物を復旧する活動。気仙沼風待ち復興検討会では、老舗酒蔵「男山本店店舗」、「千田家住宅」を2020年春(予定)までに再建するクラウドファンディングも実施している。
「プロジェクト未来遺産」とは、日本ユネスコ協会連盟(東京都渋谷区)が「未来へ伝承すべき遺産」として、100年後の子どもたちに地域の有形・無形の文化や自然を残し、伝えていくことを目的に、「未来遺産運動」としておこなっているプロジェクト。10周年を迎えた2018年は、15のプロジェクトが応募され、その中から4つが登録された。その1つが、「気仙沼港と風待ちの風景~歴史的建造物の復興プロジェクト~」である。
「風待ち(かざまち)」とは、東日本大震災の津波により被災した気仙沼市の港町で、船出に向いた風を待ったことに由来する。繁栄を謳歌した昭和初期には和風洋風の多くのモダンな建物が建てられ、その歴史的価値が高く評価されていたが、東日本大震災の際に起きた津波により多くが壊滅的な被害を受けた。
これらの歴史的建造物の保存に向けた活動が震災以前からおこなわれていたことを背景に、気仙沼風待ち復興検討会では、被災した6棟の店舗・住居(国登録有形文化財)を再生させる取り組みを始めた。地域一帯をミュージアムに見立てた「まちなか美術館」の実施や、所有者等が案内をおこなう「ヘリテージウォーク」等、再生された文化財群を活用した復興まちづくりが認められ、今回の登録に至った。
登録伝達式を開催 活動の認知拡大図る
気仙沼風待ち復興検討会では、国内外の支援を受け、風待ち地区にある国登録有形文化財群について修復・復元を進めてきた。震災で被災した文化財の復興プロジェクトというものは、被災3県ではめずらしい取り組み。
「プロジェクト未来遺産」への登録は、同プロジェクトの活動のさらなる推進につながるものだ。今までよりも一層、文化財を活用したさまざまなイベント等の取り組みを活発化し、復興まちづくりや観光客の増加など、地域のさらなる活性化につなげる。
年度内には、「プロジェクト未来遺産2018」の登録証伝達式が現地にておこなわれ、地元・気仙沼の人達にも広く披露する。伝達式では、式典のみにとどまらず、風待ち地区の文化財や建物をめぐるイベントを実施するなど、参加者が楽しみながら気仙沼風待ち復興検討会の取り組みについて知る企画も検討している。
気仙沼風待ち復興検討会では、2018年12月20日から、資金を募るためのクラウドファンディングも開始した。復旧に取り組んできた国登録有形文化財の店舗・住居6棟のうち、基金や募金で4棟までは再建できたが、風待ちのシンボルである老舗酒蔵の「男山本店店舗(おとこやまほんてんてんぽ)」と「千田家住宅(ちだけじゅうたく)」の2棟はまだ再建が実現できていない。今回のクラウドファンディングでの支援を通じて、2019年の春着工、2020年3月の完成を目指すとしている。