不動産トピックス

【1/27号・今週の最終面特集】事業用対象 不動産のマッチングサービス

2025.01.27 10:31

物件の公開可否や更新等が不要 非公開物件のオファー可能
テナントマッチング「テナリード」開始
 不動産業界でもマッチングサービスの需要は高い。しかし、その様なサービスは少なく、特に事業用不動産に関しては限定される。今回は新たにテナントと不動産事業者(オーナー)のマッチングサービスが始まった。不動産事業者からオファーを行い、自社物件の空室を埋めることができる。

不動産業者は成果課金制 物件が成約するまで無料
 U―NEXT HOLDINGS(東京都品川区)のグループ会社で、事業用家賃債務保証サービスを提供するUSEN TRUST(東京都品川区)は昨年12月24日、店舗やオフィスの入居先(物件)を探す出店希望者とテナントを募集する不動産業者をつなぐテナントマッチングサービス「テナリード」の提供を開始した。
 「テナリード」は、全国の不動産業者から出店希望者に対しておすすめのテナント物件情報のオファーが届く「物件オファー型」のマッチングサービス。テナント物件を探す出店希望者が、専用ページにプロフィール情報や物件希望条件などを記載・登録する。
 出店希望者が登録した希望条件と不動産業者の物件情報が合致した場合、「テナリード」から不動産業者にレコメンド情報を送信。同情報を元に不動産業者から出店希望者へ、物件情報を含めた直接のオファーが始まる。同時にチャットルームも開設され、必要に応じて物件の内見なども調整できる。
 出店希望者のメリットは、効率的な物件探しができること。自ら物件を検索する必要がなく、これまで物件探しにかかっていた時間や作業負担を大幅に軽減できる。また双方チャットルームでやり取りを行うため、非公開物件などの秘匿性の高い物件の紹介も受け取れる。現在営業中の物件、数カ月後には退去予定の物件といった優良な非公開物件等のオファーも受け取れる。
 従来の物件情報サイトとは異なり、限定された人にのみ物件情報や物件写真を公開するシステムだからこそできる。加えて利用料は無料。成約すると最大20万円の出店お祝い金(会員登録が必要。出店希望者へのお祝い金進呈の条件などは、出店希望者向けサービスサイトで会員登録後、マイページより確認)も進呈する。
 一方不動産業者にとっては、テナント誘致における面倒なメンテナンスが不要になる。出店希望者へのオファー時のみに物件情報が公開されるため、掲載物件の公開可否や更新などのメンテナンス作業が不要となる。また1物件につき1業者担当制を採用。同一物件を複数の不動産業者が取り扱うことはなく、円滑にリーシングを進めることができる。
 また、不動産業者に対しては成果課金制(成約時に不動産業者は「テナリード」に成約手数料を支払う)。物件が成約するまで無料で利用できる。成約物件が同社提供のテナント家賃保証を利用していた場合、家賃保証の取次手数料を10%増額する特典も用意した。これまで「待ち」の姿勢であったテナント誘致を、確度の高い人・企業へ、かつ提案型という「攻め」の姿勢でできる。
 代表取締役社長の富田晃氏は「『テナリード』の事業開発は昨年1月頃から始めました。従前から出店希望者における業種・規模・立地条件に合った最適な物件探しでの課題に着目しており、一方不動産業者の物件情報サイトにおける管理・更新の手間も問題と認識していました。双方の課題解決に応えるため『テナリード』を企画。昨年6月から先行して不動産業者の加盟店登録を募っており、年末時点で既に3000社を超える不動産業者が登録しています。一方出店希望者も続々と登録を始めており、大手有名チェーン店などの登録も見られます。もちろん店舗だけでなくオフィスのリーシングとしても活用できます。オーナーのPRや熱意次第で良質なテナントの誘致にも繋がるでしょう」と語った。

全国規模での地方展開 戦略的サポートに貢献
 マッチングサービスの構築が上手く進んだ理由に、同社展開の事業用家賃保証サービス「テナント家賃保証」が関係してくる。2020年4月から開始したテナント家賃保証。現在では多くの不動産業者とアライアンスを結ぶ状態にまで普及・拡大している。今回のようにマッチングのプラットフォームを構築する場合、双方でのマーケティングコストが発生する。しかし、不動産業者を募るためのマーケティングはテナント家賃保証で構築済み。その分の開拓コストも出店希望者側に振り分けることができた。またマッチングサービスの開始によって、不動産業者とのアライアンスも更に良質な内容へとつなげていくことができる。
 富田社長は「全国規模でチェーン展開している飲食・物販店舗を運営している企業からも注目を集めています。これらの企業は年中、出店候補地となる物件や情報を集めています。都市部であれば物件情報は早く集まりやすいですが、地方出店であると情報がうまく集まらないようです。『テナリード』は日本全国の網羅性が特長でもあるため、地方の地域密着不動産業者とチェーン店企業の双方をつなげる手助けとなり、また企業の地方展開における戦略的サポートの促進にもなると見ています」と語った。
 今後同社はインターネットサイトでの告知に加えて、SNSを活用した「テナリード」のPR活動にも注力していく。単なるテナントリーシングではない、新たなマッチングサービスに期待する声も多い。

飲食や来店型のサービス店舗 オーナーのPR機会増加に
 ここ数年で出店希望者とオーナーのマッチングができるプラットフォームの需要が伸びている。例えば、2019年6月から東京・神奈川の限定版としてリリースし、順調に登録物件数を増やしているテナンタ(東京都新宿区)が運営する「テナンタ」。出店希望者は同社のサイトに登録し、後は待つだけ。500名を超える店舗専門のエージェントが登録した情報を閲覧し、出店希望者に対して様々な提案や有力なアドバイスを行う。店舗ノウハウを持つエージェントが関わるため、出店希望者には安心できる仕組みだ。
 また賃貸仲介事業・アプリ運営事業などを展開しているプレニーズコミュニティ(東京都港区)は、店舗賃貸マッチングアプリ「しゅってんぽ」を運営している。こちらも店舗特化の登録制のマッチングアプリ。オーナーは不動産仲介業者へ依頼せずとも自身でテナントのリーシングができる。一方テナントは条件を入力すれば、その条件に合った物件のみが表示。自身の希望に合致した魅力的な物件情報のみを知ることができる。現テナントも利用でき、居抜きで店舗を譲渡したい人や閉店予定の企業などが引き継いで借りてくれる人を探すことができる。
 その他にも自社およびグループの管理物件を対象としたマッチングサービスや店舗の買取・譲渡に加えて造作の売却もプランに入っているサービスがある。出店希望者の中には店舗経営に不安を感じている人もいることから、経営コンサルまで含めたサービスも普及・浸透してきた。彼らが従前の店舗探しで感じていた手間・負担は軽減。より手軽に開業できる支援サービスの需要が伸びている。
 対して今後ビルオーナーや賃貸区画を抱える不動産オーナーは、リーシング時にテナントや出店希望者へ自社物件のPRを行う機会が増えていくと予想される。飲食や来店型のサービス店舗向けの区画であると、その傾向は一層強まると思われ、オーナーもそれに備えた資料づくりや事前準備が必要だ。もちろん、店舗仲介のプロに依頼することも重要。仲介業者に仲介を依頼しつつ、自身はマッチングサービスを使用する双方併用が今後は主流になると思われる。都市部以上に親和性が高いのは、郊外や地方都市。開発用地の仕入れにも使用できるケースがあるからだ。都市部の企業が郊外や地方への出店に活用し、一方地方のオーナーはその様な企業を誘致できる。双方にとってメリットが高い。




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