不動産トピックス
【2/3号・今週の最終面特集】不動産の価値を引き出す改修の要点
2025.02.03 10:54
建築・改修の企画から運営まで一気通貫 ユーザー目線のプランニングで収益最大化
建物は建てた瞬間から劣化が始まり、賃貸用の不動産であればその商品価値が徐々に低下していく。一方で、適切な修繕や効果的な改修を実行することで、商品価値を従来以上に高めることも不可能ではない。
あらゆる困難な条件でも最適な建築・改修プランを提案
環境建築設計(東京都渋谷区)では、土地の特性に応じた有効活用を提案。特に、斜面地や変形地、傾斜地といった建築が困難な土地においては、豊富な実績やノウハウを生かし土地の性格を見極めた最適な建築計画を施主に対して提案する。また、建築後の入居者募集や管理、建物メンテナンスといった業務はグループ企業の六耀(東京都渋谷区)が担当し、建物の企画・設計から運営管理まで、ワンストップでサービスを提供する点に強みがある。
過去の事例では、間口が狭く奥行きがある「うなぎの寝床」のような敷地でのマンション計画で、一般的には地上8階建て・1000㎡までしか建築することのできない条件であったところ、建物をできる限り後背地に寄せて計画することで、道路斜線制限が適用されず1・3倍の容積を確保。地上13階建て・1300㎡の建物を建築した。
また、都内の寄宿舎を高等学校へリノベーションした事例では、現行の建築基準法への適法化を目的に、一部フロアの床スラブを撤去。減築によって荷重を減らすことに成功した。このほか、高等学校へリノベーションするには、既存の屋内階段では幅員や蹴上げ(階段一段分の高さ)が建築基準法を満たしていないことから、既存の屋内階段を撤去した上で別の場所に新たに屋内避難階段を設置。既存の階段を撤去した箇所には、バリアフリー対応エレベーターを設置した。
自宅内で余剰のスペース オーナー負担0で賃貸用に
環境建築設計では、戸建て住宅のリノベーションによる賃貸経営の提案も積極的に行っている。生活スタイルの変化や子供の自立など、環境に変化に伴って自宅の中で使用しない部屋が生まれるケースがある。これを賃貸用にリフォーム・リノベーションし、収益化するのが同社の提案する「ゼロ円de賃貸」である。
「ゼロ円de賃貸」は、自宅の余剰となった部屋のリフォーム・リノベーションを環境建築設計が企画し、六耀が費用を負担して工事を実施。工事後は六耀が借り上げて入居者募集や管理を行う。オーナー側の収入は、運用開始から6年以内は賃料の10%となっており、この間に工事費用を回収。6年経過後はオーナーと六耀で賃料を折半するという仕組みだ。環境建築設計の宮坂正寛社長は「2階建ての戸建て住宅の2階部分をリノベーションした事例では、外階段を新たに設置して1階で暮らすオーナーとの動線を分離し、3LDKの間取りを1LDKの2戸に分割しました。自宅で不必要となった部分を賃貸することで老後の生活資金に充てることができます」と話す。初期費用0円で自宅をリフォームできるというのも大きなメリットとなる。
名鉄がまちづくり会社 沿線の古民家を再生へ
名古屋鉄道(名古屋市中村区)はまちづくり会社を設立し、名古屋市緑区の「有松町並み保存地区」内の古民家再生に取り組む。
有松地区は古くからの伝統的な町並みが残り、国の重要伝統的建造物群保存地区と日本遺産に登録されている。地区内には名古屋鉄道「有松」駅もあり、名古屋鉄道にとっては沿線活性化という意義も持つ。同社は名古屋市策定の「有松地区における古民家を活用したまちづくりの考え方」をもとにまちづくり会社「有松未来創造株式会社(通称アリミラ)」を地域の事業者などと共に設立。古民家利活用を推進する。
事業では町並み保存地区内の複数の古民家を利活用することで、地区の魅力向上を図る。アリミラは地区内に点在する古民家や蔵を、宿泊施設やレストラン、カフェなどに改修。地域の人々や国内外からの来訪者が有松の歴史ある雰囲気を感じられる仕掛けを町全体に散りばめていく構想。
有松地区は江戸時代から明治期に建てられた町並みや伝統的工芸品の有松・鳴海絞り、豪華な山車など歴史ある文化が多く残る。これらの歴史・文化を生かしながら古民家を利活用して新たな地域産業を創出。既存産業との相乗効果も促し、地区の魅力向上を図りながら、国内外から選ばれる観光地づくりを目指すとしている。
新会社・有松未来創造は2月14日に設立を予定。代表には「有松まちづくりの会」の会長が就任する。
安全性高い無足場工法で外壁の修繕・診断行う
ビルやマンションの外壁診断や塗装、修繕工事などを行う際には、足場を組んで作業するのが一般的である。一方で隣接する建物との距離がわずかな場合など足場を組むことが難しい場面は多くある。また足場の組み立て・撤去時に騒音が発生したり、足場が外部からの侵入経路となるケースもあり、シチュエーションによっては外壁の修繕工事を実施するにあたって足場を組むことが適切ではないことも考えられる。その場合に有効となるのが屋上で固定したロープを用いた無足場工法である。MAS(東京都武蔵野市)では無足場工法による外壁の修繕工事を得意としている。
代表取締役の佐野純平氏は「無足場工法のメリットは、ワンポイントの雨漏り対応など、小回りの利いた修繕工事に対応している点です。足場を組む作業に数日を要するところ、無足場工法はその作業が不要で、工事内容によっては1日で終了することも可能です。足場の組み立てや撤去の際に発生する騒音がなく、コストも大幅に抑えることができるほか、足場を組めないような狭小地でも対応します」と話す。また同社では現場作業を行うスタッフならびに周囲の安全確保にも注力しており、作業スタッフは消防隊やレスキュー隊が持つ資格を取得し、安全性の高い作業に努めている。
対応する作業品目は修繕工事から診断調査まで幅広く、防水技能士の資格を持つ作業スタッフもおりシーリング・塗装といった防水工事にも対応する。佐野氏によれば「近年は自然災害が頻発していることから、外壁の診断調査の依頼を受ける機会が増えてきました。また、鳥害対策として防鳥ネットの設置依頼もマンションを中心に増えつつあります」と話す。昨今は資材価格や人件費の高騰により足場の設営や撤去にかかる費用が上昇している。コストを抑えて効果的な外壁修繕を実現する無足場工法は、不動産オーナーにとっての心強い味方といえるだろう。