不動産トピックス

【2/10号・今週の最終面特集】竣工目前 注目のテナントビル

2025.02.10 11:25

さいたま市で脱炭素可能な事業物件 サーキュラーエコノミー型ビル 屋上に太陽光パネル設置
「郡山」駅西口前で建設中「(仮称)Maggy郡山駅前」
 今年は都市部のオフィス街だけでなく、郊外の駅前好立地で複数のテナントビル建設工事が行われている。各地域ならではの需要を見据えながら造り、立地場所のポテンシャルも生かしている。

ブランシェ中仙道ビル 2月下旬に竣工予定
 埼玉県さいたま市を中心に賃貸・売買等の不動産事業を展開している白井商事(さいたま市南区)は、JR「北浦和」駅から徒歩8分の旧中山道沿いでサーキュラーエコノミー型ビル「ブランシェ中仙道ビル」を建設している。竣工は2月下旬の予定だ。
 「ブランシェ中仙道ビル」は地上6階建て、オフィス・店舗の複合ビル。1階は天井高3・5mの店舗フロアで、貸室面積は49・88㎡(15・08坪)。スケルトン仕様。2~6階はオフィスフロアで、基準階貸室面積68・66㎡(20・76坪)。エレベーターからダイレクトインの造りとなっており、専有部内にミニキッチンや電気温水器、男女別トイレ、換気扇、照明設備、ネット配線用配管などを有している。室内の角にはバルコニーがあり、そこから見渡せる眺望も特徴のひとつ。近隣に低層物件が多いことから、上層階のリーシングにも好影響が想定される。今回、白井商事が同地を取得後、テナントビルの建設を計画した背景には、行政も「商業地域(用途)」である同エリアを重要地域と捉え、今後も継続して整備等を行っていくことが予想されたから。同地のランドマークや今後の指針にもなることを想定して建築を進めた。
 ビル最大の特徴は、入居するだけでCO2削減に貢献する脱炭素可能な事業物件であること。屋上に太陽光パネルを設置し、エレベーターホールやその他共用部に発電した電力を供給する。また、ビルの使用電力に再生可能エネルギーを採用。CO2フリーの電気で、かつ貸室内のミニキッチンもIHコンロであることから(1階のみガスの利用も可能)、ビル内で使用する全電力が環境配慮となっている。

就業者の快適性も意識 well-being
 積極的に木材の使用や木目調を採用していることも同ビルの強み。外壁および内装に木材を採用しており、外観デザインから木の持つ温かみや木の良さを実感できる。中山道沿いには木目調のルーバーを採用。ビル正面からオフィスエントランスへと来館者を誘導する側道に、中山道の地図をあしらった木目のルーバーを採用したことで木質デザインの良さを存分に発揮している。貸室内にも木材をあしらっており、木質のOAフロアやヘリンボーン柄の内壁などが特徴となっている。1階正面の壁面には緑化も採用。木目調と合わさり、ビルの個性や魅力につながった。
 白井慶太社長は「構造はRC造ですが、壁面や内装等に木材・緑化をできる限り採用することで、建築時におけるCO2排出量の削減やサーキュラーエコノミー(循環型経済)に対応することができました。太陽光パネルや再生可能エネルギーの採用は、竣工後も継続して脱炭素に取り組む姿勢をアピールできます。これら取り組みに賛同する企業や『脱炭素可能事業物件』を評価する企業の誘致を意識しており、SDGsやESGを重視する大手企業の営業所・支店需要に好ましいと思います」と語った。
 木材・緑化等の採用はビル就業者の快適性も意識している。近年注目を集めているオフィス就業者のWell―being(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)の視点から双方を採用しており、長時間オフィスに居ても快適かつストレスの感じにくい環境を施した。

駅直結のペデストリアンデッキ 3階貸室にキーテナント誘致
 橋本地所(福島県郡山市)はJR「郡山」駅西口前の駅前2丁目で、「(仮称)Maggy郡山駅前」を建設している。竣工は3月13日の予定だ。
 「(仮称)Maggy郡山駅前」は駅西口から徒歩2分、日の出通り沿いで建設している地上5階建ての商業ビル。1997年(平成9年)から2023年まではタワー式駐車場が立っていた。名称はMaggy(マギー)。橋本地所が郡山市内や仙台市内でも同じ名前の駐車場を展開しており、地元の人や不動産事業者に認知されていた。郡山市の区画整備事業区域に含まれていたことから、土地活用も視野に商業ビルの開発を計画。PR効果を期待し、ビル名に従前のMaggyを採用。昨年4月から着工し、およそ1年掛けて竣工を迎える。
 同ビルは延床面積2507・06㎡。敷地面積は625・19㎡。1フロア約500㎡で、現在は1フロアを数区画に分割しリーシング中。賃貸はビル全部で17区画。1~3階は飲食、4階は学習塾・オフィス、5階は診療所を想定したフロアとなっている。最大の特徴は駅直結のペデストリアンデッキを利用してアクセスできること。ビル3階とデッキがつながっており、多くの来館者が見込まれる。メインエントランスは3階に設ける。賃貸区画で最大級の186㎡の貸室も3階につくり、駅の乗降客などをターゲットにしたキーテナントの誘致を図る。
 取締役社長の橋本眞悟氏は「現在複数社から問い合わせが寄せられていますが、当社としては『地元企業による駅前初出店』や『県内初出店』の企業誘致を目指しています。居酒屋からの問い合わせもありますが、『夜だけでなく昼にランチも提供できること』を条件に提案したこともあります。昨今駅周辺ではランチを提供している店舗やファミリー向けの飲食店が減少傾向にあり、当社としては単にビルを建設するのではなく、地域貢献や賑わい創出も視野に検討してきました。幅広い年齢層の方が平日だけでなく、土日祝日も足を運ぶことのできる店舗を誘致したく、現在も積極的にリーシング活動を行っています」と語る。ちなみに専任仲介会社は大和ハウス工業(大阪市北区)。
 そうした思いはビルの設備や環境にも表れている。エレベーター2基が車椅子対応となっており、エレベーターを利用して容易に駅へアクセスできる。ビルの利便性をアピールしつつ、自然と駅利用者を館内へ誘導する仕組みにもなっている。また共用廊下には空調と換気設備を完備。夏涼しく冬は暖かく、空調を稼働させることで快適性を提供する。橋本氏は「駅前の好立地に新築商業ビルが建つとあって、注目度は高いでしょう。来客数を見込んでの入居や問い合わせはこれから増えていくと思います。当ビルとペデストリアンデッキがつながるのは竣工後で、今年夏ごろの予定です。それまでに満室稼働を目指します」と言い及んだ。


<物件概要>
●ブランシェ中仙道ビル
●所在地:埼玉県さいたま市浦和区常盤3-1-9-4
●延床面積:463.95㎡
●敷地面積:118.81㎡
●基準階貸室面積:68.66㎡
●規模:地上6階
●竣工:2025年2月下旬予定
●用途:オフィス、店舗


<物件概要>
●(仮称)Maggy郡山駅前
●所在地:福島県郡山市駅前2-5
●延床面積:2507.06㎡
●敷地面積:625.19㎡
●基準階貸室面積:324.37㎡
●規模:地上5階
●竣工:2025年3月13日予定(オープンは今年夏の予定)
●用途:店舗(飲食店舗、学習塾・オフィス、診療所)




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