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耐震仕様の炭素シート 薄い繊維でも強度は鉄の10倍以上 銅板補強に比べ平米1~4万円割安
1997.06.01 11:08
建物の耐震補強工法は様々だ、しかし、既存ビルの場合、躯体を補強するには、工期やコストが大きなものとなりがち。そこで、最近、注目を浴びているのが、炭素繊維シートを柱に巻く方法で、ビルを利用しながら施工できると言うもの。その工法について報告する。
炭素繊維シートは、90年頃から市場に出始めたもので、構造体の補強に使用されている。特に阪神大震災以後、躯体の補強に関心が高まり、建物の柱部分に対する補強工法として注目を浴びることとなった。
同シートは、間組などゼネコン各社の他、東燃、日本紡績、東レなどで開発・施工されており、従来から一般的に採用されていた鉄筋や銅板を貼り付ける工法よりもメリットが大きいとされている。炭素繊維を一方向に並べて布状にしたもので、強度は鉄の10倍以上あるが、厚さは1ミリ以下と大変薄く、比重は鉄の4分の1から5分の1と軽い。同じ補強効果を得るのに、銅材の50分の1から40分の1の重量で済む。そのため、補強後も建物重量は変化せず、基礎への影響もなく、また施工後の柱の寸法も変わらない。
施工は柱の仕上げを撤去した後にシートを巻きつけ、樹脂で接着する方法。普通の鋏などで裁断でき、銅板巻付け工法のような特殊技術は必要ないため、作業者による施工品質のばらつきは生じにくい。また、柱1本あたり1日から2日で貼り付け施工が可能。
また、什器や火器を使用する銅板に比べて作業は安全で、建物を使用しながらの補強工事が可能だ。コストは補強工事だけでは、他工法と同等かそれ以下だが、作業用、安全対策用の仮設費などを含めると、銅板に比べて平米当たり1万円から4万円低コストになる。
経年化ビルでなくとも、耐震に対する関心は高く、コンピューター関連企業のようなテナントにとっては、ビルを選択する際の基準になっているケースもある。