不動産トピックス

【2/24号・今週の最終面特集】今年竣工のオフィスビル 北陸・金沢編

2025.02.24 10:57

「金沢」駅西口のけやき通り沿い 7月末に竣工予定
オフィスビル「Hirooka Terrace」
 地方都市で新築オフィスビルが竣工・供給されると、マーケットは大きく変化する。今年は石川県金沢市で北國フィナンシャルホールディングスが「Hirooka Terrace」を開発。北陸地域注目の多機能ビルが誕生する。

企業同士が自然に交流 新たなイノベーション拠点
 北國フィナンシャルホールディングス(石川県金沢市)は、JR「金沢」駅西口から徒歩4分のけやき通り沿い、「北國銀行本店ビル」の隣でオフィスビル「Hirooka Terrace」の開発を進めている。今年7月末に竣工予定だ。
 北國フィナンシャルホールディングスは、北陸三県を営業基盤とする北國銀行を中心に11のグループ会社で構成される持株会社。グループ一体となり質の高いサービスを地域の顧客に提供している。こうした取り組みのもと、「Hirooka Terrace」は、自社機能の集約移転、連携強化だけでなく、同社のビジョンに共感した取引先、各種事業の共創パートナーとともに、一層のリレーションシップ強化を図りコラボレーションとイノベーションを生み出す場として位置付けている。人と人、企業と企業同士が自然に交流できる新たなイノベーション拠点の創出や発展・賑わいづくりを目指している。
 「Hirooka Terrace」は、S造(一部CFT造)の地上13階建て。延床面積2万1446・68㎡。敷地面積7937・42㎡。1~3階が84台分の自走式駐車場を整備し、敷地内に駐輪場・バイク置場も完備。4階にオープンワークラウンジ、5階に貸会議室を設け、共用スペースの充実を図る。入居テナントは共用スペースの活用により、専有部内の会議室・ミーティングスペースを必要最低限に抑えることが可能。貸区画としては4階に約30~64㎡の小規模オフィスを8区画、6~12階を基準階オフィスフロアとする。基準階貸室面積は788・21㎡(238・43坪)と大きく、6区画まで分割できる。
 4階には入居者同士の交流空間「オープンワークラウンジ」を設ける。ソロワークやリフレッシュ、グループミーティング等に利用できるほか、入居者および北國フィナンシャルホールディングスの顧客との打ち合わせ空間としても活用する。ラウンジの中央には4階と5階をつなぐ内階段をつくるなど、人が自然と集まる空間づくりを意識しているという。

特徴は「共用部の充実」 ラウンジやテラス採用
 ファシリティグループの西村夏海氏はビルの特徴について「共用部の充実」を挙げる。各フロアには、けやき通りに沿う形で半屋外空間の開放的なテラスを配置。テラスとオフィスの行き来も自由にでき、席を設けてワークスペースとしても活用できる。同社は、共用部も交流空間と位置付け、テラスの機能性・快適性を高めることで、「まちの止まり木」のような交流空間を演出したい考えだ。そのために採光が取れる開放的で心地よい空間や多様な働き方・使い方だけでなく、親しみを持ってもらえるようにネーミングにもこだわり、5~12階は“モクテラス”、オープンワークラウンジとつながる4階は“ケヤキテラス”と命名した。
 「4階のオープンワークラウンジとは別に、各フロアのテラス、共用ラウンジ、2階と3階をつなぐ階段も交流空間となります。また、屋上にはスカイラウンジもつくります。多様な働き方に対応でき、業務内容や気分に応じて働く場所を自由に選択できる『ABW(Activity Based Working)』を意識しました。入居者様には、『Hirooka Terrace』に入居いただくことで、心地よく働ける環境をご準備しています。健康的に働けることが分かりやすくお伝えできるように、認証の取得も進めています。健康・安全性に焦点を当てた『WELL認証』の中で、『WELL Health―Safety Rating』認証を取得予定です。ここに集う全ての人が身体的・精神的・社会的にWell―Beingな状態で過ごせる環境を大切にしたいと考えています」(西村氏)

2万㎡以上のビルで初取得「Nearly ZEB」
 環境に配慮したサスティナブルな建物であることも特徴。例えばテラスの構築は、オフィス専有部への日射遮蔽の役割となっており、高性能外装等との組み合わせで、空調への依存度を低減する。また、地中熱利用や自然換気の促進、クール/ウォームピット等により環境負荷も低減する。全館LED照明のオフィスには、昼光利用や各種センサーによる照明の最適制御を導入。太陽光パネルを設置し、創エネルギーの最大化も行う。建築物省エネ法に基づく第三者認証制度「BELS」では、最高評価5つ星を取得。一般的に規模が大型化するほどZEB化は困難と言われている中で、年間の一次エネルギー消費量75%以下まで削減できる建物として「Nearly ZEB」も取得。2万㎡以上の高層テナントオフィスビルでは、全国初の「Nearly ZEB」取得事例となった。
 竣工時にはLEED認証のGOLDレベルも取得予定。LEEDは米国発祥の環境性能評価制度で、世界で最も広く使用されている。コストや資源の削減を進めながら再生可能エネルギーの促進も行い、人々の健康にも良い影響を与えることを主眼においた認証制度。「Hirooka Terrace」はエネルギー消費の抑制、水の使用量削減、よりよい建築資源の選択など、環境配慮への革新的な取り組みが評価された。
 同ビル外観には金沢の伝統芸能を採用した。山中塗、能登上布、加賀友禅などで、「金沢特有の風土」の調和を表現する。3階交流空間の床材には石川県産の石材「滝ヶ原石」を採用。至る所に県産材の木材なども採用し、木が持つやすらぎや快適性とともに、地域の魅力発信にも寄与していく。
 西村氏は「BCP対応にも力を入れています。高圧2回線受電方式を採用しており、メイン系統にトラブルが発生してもサブ系統から受電できます。また、非常用発電機も設置していますので、万一電力の供給が完全にストップしても共用部および一部専有部に72時間の給電が可能となります。BCP対応と環境負荷低減への取り組み、ABW、人・企業が自然と交わる交流空間・拠点の構築などの機能から、北陸エリアでは唯一無二のハイスペックオフィスビルとなります。竣工後は、多くの交流が生まれることで当地の魅力形成にもつなげていきたい」と語った。
 「Hirooka Terrace」の賃貸区画は最大で50区画。これは1フロアを6区画に分割した場合となる。現在ビルはリーシング中で、ビルの機能性だけでなく、同社の理念に共感し、地域発展も視野に入れた企業の入居が予想される。


<物件概要>
●名称:Hirooka Terrace
●所在地:石川県金沢市広岡2-12-6
●竣工年:2025年7月末予定
●事業者:北國銀行
●延床面積:2万1446.68㎡
●敷地面積:7937.42㎡
●規模:地上13階




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